「日本の保育無償化は誰も幸せにならない」といえるこれだけの理由

むしろ支払いが増える家庭も
猪熊 弘子 プロフィール

今回の無償化は韓国と同じ

もちろん世界を見渡すと、日本とよく似た「保育」の無償化を行っている国もあります。お隣の韓国です。韓国では2013年から0~5歳の子どもの保育と幼児教育をすべて無償化しました。親が働いていなくても、誰でも保育を受けられる「保育」の無償化を行った結果、子どもを預けたい親が急増し、無償化に莫大な予算がかかる一方で、保育士の給与には回らず、保育の質が担保できない、といった状況になっている、という報告もあります。
https://www.asahi.com/articles/DA3S13893462.html

無償化によって、親が「預けなければ損」と思うのは当然のことでしょう。都市部の待機児童がまだ解消されていない日本で「保育」の無償化が行われれば、さらに保育需要は高まり、保育施設がますます足りなくなるのは目に見えています。今まで「教育標準時間」の4時間の保育で十分だった親も、8〜11時間預けても同じように無償なのであれば、そこまで預けたいと思うかもしれません。親にとって極めて大切な「子育ての時間」が奪われてしまう危険があります。

さらに韓国では、質の担保のための監査制度がしっかり作られており、無償化と同時に質の担保も測られています。日本のようにどんな施設でも無償化する、といった、ある意味野放図な状態での無償化ではありません。

つまり、世界的な潮流では「子どもにとって必要」と考えての「子どものための幼児教育無償化」で、質の担保も行っていますが、日本では質について問う制度もないまま「親のための保育無償化」になってしまっていることが最も大きな問題なのです。親の経済的負担は解消されるかもしれませんが、この政策で少子化が解消することはないでしょう。その一方で、保育需要が急激に高まり、保育の長時間化が進んで親子が接する時間が減り、保育の質が下がる……といった事態も予想され、「誰も幸せにならない無償化」ということになってしまう可能性があります。

決まっているのは「利用料」のみ

ちなみに、現段階で決定しているのは、対象となる施設、そして無償化の対象となる利用料についてです。下記のように表にまとめてみました。1号認定、2号認定、と書かれているのは、「支給認定」といって子どもの年齢や保育の必要性に応じて認定される「区分」のことです。

資料をもとに猪熊氏作成。ただ、無償化の条件についてもかなり細かく入り組んでいて、各自治体ごとに資料が異なっていることもある
拡大画像表示

ちなみに、無償化の対象外となるものは、

〇保護者が実費で支払っている費用(園バス代、食材料費、行事費など)は、無償化の対象外。

〇3~5歳の食材料費(主食費+副食費)については、施設が実費徴収することを基本とする。

〇生活保護世帯、ひとり親世帯等、低所得者世帯については、引き続き副食費の免除を継続。

とされています。