定年した僕が、突然あいみょんにハマった理由

君たちにとっての彼女は僕にとっての…

定年直前にあいみょんを知った

講談社の定年退社を1ヵ月後に控えた去年の9月、ふた回りも年下の作家と編集者と3人で食事をしたとき、2人から異口同音に「いまは、あいみょんです」と言われた。

あいみょん、なにそれ? え、23歳の女性ミュージシャン?

でも、2人のアンテナを僕はとても信用しているので、さっそくあいみょんのミュージックビデオをスマホで観てみた。

 

5枚目のシングル『マリーゴールド』。

オレンジ色の半袖シャツを着たあいみょんが、路面電車の横を雨に打たれながらスケートボードで駆け抜ける。アジアのどこかノスタルジックな街角で撮影された映像は、この曲にぴったりだと思えた。

  麦わらの帽子の君が
  揺れたマリーゴールドに似てる
  あれは空がまだ青い夏のこと
  懐かしいと笑えたあの日の恋

リフレインが胸に迫る。センチメンタルなギターの音色がたまらない。届きそうで届かない気持ち、でも前に向かっていく。すごい曲に出会った。こんな曲がいつもとなりで応援してくれるなんて、今の若者は幸せだなぁと思った。

『マリーゴールド』撮影地へ

それから、僕の毎日がちょっぴり変わり始める。

駅からの帰り道、花屋に寄ってみたら、おお、あるじゃないか。次の日、季節外れのマリーゴールドの苗を庭の片隅に植えた。人と食事をすれば2軒目はカラオケに行こうとねだり、『マリーゴールド』を熱唱した。前出の作家氏は月に1度自宅でワイン会を開いているのだが、そこであいみょんの話をすると、参加する若者たちとも盛り上がれた。

毎日のようにミュージックビデオを観ていたが、あるとき、スケボーのあいみょんが追い抜いていくバスの窓に「上海××公司」と小さく書いてあることに気づいた。

クリスマスイブの朝、僕は上海に旅立った。