海外でも抗議に遭い…福島の水産物「風評被害」の現実

漁業関係者はため息をつく
松岡 久蔵 プロフィール

水産業を担当する福島県職員は「いくら検査をやっても『放射能のフクシマ』のイメージが消えてくれません。津波で被害を受けた漁業者も、すでに他の仕事についている人も多い。震災前は1200隻あった漁船が、一時期約400隻にまで減少してしまいました。

農業は1、2年は放置していても頑張れば復旧できますが、船は継続的に使用しないと使えないことも漁業の回復の遅れに影響しています。今はなんとか700隻ほどまで回復しましたが、漁獲量が回復しないことにはどうしようもありません」と頭を抱える。

 

タイへの売り込みが地元団体の反対に…

県と県漁連は、大都市圏での販路開拓に希望を託している。昨年は首都圏のイオン7店舗にカレイなどの売り込みに成功した。

先の県職員は「震災以来、『福島県産は扱わない』という卸売業者も多いですが、イオンなどの大手流通との取引を拡大できれば豊洲市場での信頼回復につながる。関西にも出荷先を増やすことも計画しており、国内全体での販路を広げていければ、信頼回復を進めることができる」と意気込む。

県漁連の関係者も「風評のせいにして売れない売れないというのは簡単だが、まず販売店のタナに福島県産を増やすべく、地道な売り込みを続けていくしかない。完全に悪いイメージがなくなることはありえないが、理解して下さる人にしっかりと届けばいいという思いでやっていくしかない」と話す。

一方、県と漁連が計画した海外への売り込みは挫折に終わった。昨年3月に、タイのバンコクで福島県内の民間業者が企画した県産ヒラメの販売促進イベントが、現地の市民団体の反対で中止に追い込まれる事態となったのだ。

別の漁協関係者が内幕をこう明かす。

「当初の計画では、ヒラメを現地の日本料理店向けに売り込むためのフェアを開くというものでした。海外販売での実績をてこに、日本国内でのイメージを回復させ、県主産品のモモの販売にもつなげる狙いでした。

しかし、フェアの開催を知った少数の現地市民が『なんで海外で初めにタイに売り込むんだ』『安全性への懸念がある』などとSNSを通じて反対キャンペーンを始め、そのせいで中止に追い込まれたのです。

こちらとしては、安全性は検査で確認済みなのに、ほんの数人の抗議で潰される形になり、残念でなりません。表だってやると猛烈に反対されるとわかりましたから、今後の海外販路の開拓は慎重にやらないといけないと思い知りました」