2019.03.21

プロが口を揃える最強の医療保険は「アレ」!

サヨナラ保険②
永田 宏, 後田 亨 プロフィール

「手術の進化」で減る、保険金支払い対象事案

腹腔鏡手術は、今世紀に入るまでは、胆石の摘出術など比較的簡単な手術に限られていました。その後、装置や手術手技の技術革新が続いた結果、今では相当複雑な手術でも、腹腔鏡や胸腔鏡で行えるようになっています。しかも手術全体に占める割合が、毎年のように伸び続けているのです。

しかしそのことが、逆に医療保険からの手術給付金をもらいにくくしています。たとえば、A社がインターネット上に公開している「医療保険・医療特約の手術給付金について」という文書には、腹腔鏡下手術や胸腔鏡手術は「重大手術の対象とならない」と明記されています。

昔ながらのお腹や胸をざっくりと切り開くような大手術は、重大手術と認定され、20万円の給付金をもらえる可能性があります。ところが、より進歩した腹腔鏡・胸腔鏡手術のほうが、給付金が安いのです。だからといって、「せっかくの医療保険がもったいないから大きく切ってくれ」と医者に頼み込む人はいないでしょう。

5年後、10年後には、手術の大半が腹腔鏡・胸腔鏡に移行しているはずです。つまり今売られている医療保険では、最高額の手術給付金をもらえる見込みがほとんどない、ということになるのです。

「医療技術の進歩」に追いつかない医療保険

結局、今の医療保険は、現在進行中の医療政策や医療技術の進歩に追いついていないということなのです。

最近の医療は、加速度的に進歩しています。たとえば腹腔鏡・胸腔鏡手術の次にやってくるのが「ロボット手術」です。ロボットといっても、実際には医師が操作するマニピュレーターです。

 

普通の腹腔鏡・胸腔鏡手術は、身体に差し込む金属チューブの向きや、チューブ先端から出す手術器具などを、テレビカメラで映し出される映像を観ながら生身の外科医が操作します。これに対し、ロボット手術では、金属チューブや手術器具のすべてを、操縦席に座った外科医が3次元映像を観ながら遠隔操作します。

外科医の手の震えなどを装置が自動的に感知し、補正を行うため、手術器具の先端に伝わることはありません。また、操縦者の手の動きを5分の1まで縮小してマニピュレーターを操作することができます。外科医が指先を5ミリ動かせば、マニピュレーターの先端に取り付けられた小さなメスが1ミリ動く、といった仕掛けです。それだけより細かい手術を、精度よく行うことができるわけです。

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ロボット手術は、健康保険では「内視鏡手術用支援機器」と呼ばれ、続々と適用手術が増えてきています。また、内視鏡手術用支援機器を使った手術の医療費は、当然ながら普通の腹腔鏡・胸腔鏡手術よりも高く設定されています。民間医療保険の手術給付金も、普通の腹腔鏡・胸腔鏡手術より高く設定されてしかるべきです。

ところが、たとえば既存の保険の約款を見ると、まだまだロボット手術に関してはまったく何も書かれていないものが大半です。「公的医療保険制度における医科診療報酬点数表に、手術料の算定対象として列挙されている診療行為」を対象としている、などと記載のある保険は存在していて、手術を受けたタイミングによっても取り扱いが変わるようですし、会社ごとの違いも当然あるでしょう。いずれにしても、ロボット手術がどこまで認めてもらえるか分からないのが実情です。

長期の保険契約がかえってリスクに……

ロボット手術以外にも、新しい治療法が次々と世に出てくるはずです。しかし、過去に契約済みの保険の約款は、どんなに時が流れても変わることはありません。介護医療院やロボット手術についてまったく言及していないのと同様に、これから出てくる新しい治療については、あなたがお持ちの約款にはいっさい記載されていません。

現在のような変化の激しい時代には、長期の保険契約は逆にリスクを背負い込むことになりかねません。安心を買ったつもりが、いざという時に「保障の対象外です」と言われてしまったら、どれほど落ち込むことでしょうか。

それでもどうしても医療保険に入りたいなら、短期(1年ないし数年定期)の掛け捨てのものを選ぶほうが、リスクを低く抑えられるはずです。そして満期になったら、最新のものに乗り換えるか、いっそ医療保険なんてやめてしまえばいいのです(これがもっとも賢明な選択です)。

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