プロが口を揃える最強の医療保険は「アレ」!

サヨナラ保険②
永田 宏, 後田 亨 プロフィール

入院給付金がもらえない大問題

民間医療保険は、言葉は悪いですが、しょせんは健康保険に寄生した商売に過ぎません。しかも、契約時点での医療の中身を基準に作られているため、健康保険の制度が変わるようなことがあると、その効力を失うことにもなりかねません。

とくに危ないのが「入院給付金」です。入院すると1日当たり5000円や1万円をもらえるといったもので、医療保険の“大黒柱”に相当しますが、今世紀に入ってから、ほとんどすべての病気で入院日数が減り続けていることをご存じでしょうか。

たとえば、心臓病、がん、脳卒中を含む普通の病気やケガでは「一般病床」に入院します。一般病床の平均入院日数は、1999年には30.8日でした。入院給付金が日額5000円の保険に入っていたとすると、1999年の時点では、平均15万~16万円の給付が期待できました。ところが2016年の一般病床の平均入院日数は、16.2日に減ってしまいました。これでは、入院給付金は8万円くらいしかもらえません。ほとんど半減というわけです。

入院日数は、今後さらに減ることが確実です。増え続ける医療費を何とか抑え込むために、政府は入院日数をもっと減らそうとさまざまな手を打っています。簡単に言えば、入院日数を短くして患者の回転率を上げないと、病院の収入が減ってしまうように制度を作り直したのです。

また比較的軽症の患者は、できるだけ入院させず、外来や在宅医療で治療を継続するように誘導しています。手術が必要な患者についても、術前検査などはできるだけ外来で済ませるようになってきています。入院できなければ、医療保険から入院給付金をもらえないことは言うまでもありません。

photo by iStock

手術給付金でも進む「有名無実化」

さらに、手術給付金は医療保険の第2の柱です。これもかなり怪しくなってきました。手術自体が変わりつつあるからです。

医療保険の手術給付金は、1日当たりの入院給付金の10~40倍というのが一般的です。入院給付金が5000円/日とすれば、手術の種類に応じて5万円から20万円が給付されます。当然、20万円をもらえるのは、開腹・開胸・開頭などを伴う大手術(保険会社が言うところの「重大手術」)に限られます。

 

消化器の病気では、昨今、内視鏡手術が広まっています。胃や十二指腸、大腸などのポリープは、内視鏡で簡単に切除することが可能になりました。しかも大半が日帰りです。胃潰瘍・十二指腸潰瘍などは、手術ではなく薬で治せるようになりました。潰瘍による出血なども、内視鏡で処置できます。胃潰瘍で開腹手術を受けるのは、今ではむしろ珍しいケースです。

心臓や脳は、血管カテーテル治療が主流になりつつあります。足の付け根や手首の静脈からカテーテルと呼ばれる細いワイヤ状の装置を挿入し、医師がX線テレビを観ながら血管の中を通して患部まで差し込んでいきます。そして薬剤を投与したり、先端から微小な器具を出したりして、治療を進めていくのです。

手術時間は30分から長くても1時間。身体を切り開いて行う本格的な手術と比べて格段に安全ですし、大きな傷が残らないため回復も早く、いいことずくめです。入院も短くて済みます。

腹腔鏡・胸腔鏡手術も増えています。お腹や胸に、長さ2~3センチの切れ目を数ヵ所作り、そこから金属製のチューブ(腹腔鏡)を数本差し込みます。その先端には、テレビカメラや小型のメス・ピンセット・ハサミなどの手術器具がついており、医師はテレビモニターを観ながら手術を進めていきます。やはり手術の傷が小さいため、回復が早く、早期退院できます。