感染豚の死骸も売買…中国全土に蔓延する豚コレラの本当の憂鬱

政府は被害軽微を強調するが
北村 豊 プロフィール

さすがに「両会」前に発表

2019年の「両会(中国人民政治協商会議と全国人民代表大会)」は前者が3月3日から、後者は3月5日からそれぞれ開催されているが、これに先立つ3月1日の午後に中国政府「農村農業部」はアフリカ豚コレラに関する記者会見を開催した。

会見の中で農村農業部が招聘した専門家である中国工程院院士の陳煥春、国家食品安全リスク評価センター実験室主任の李鳳琴、中国農業大学教授の楊漢春の3人は記者の質問に答えて次のように述べた。

1) アフリカ豚コレラは豚だけに感染し、人やその他の動物には感染しない。
アフリカ豚コレラが発見されてから100年以上が経過し、その間に世界62カ国で流行が報じられたが、今に至るも人が豚肉を食べてアフリカ豚コレラに感染したという報道はない。
すでにアフリカ豚コレラの流行が報じられた62カ国中で、流行を根絶して消滅させた国は13カ国に過ぎず、その中でキューバ、ベルギー、フランスの3国は消滅後に再発生した。
それほどにアフリカ豚コレラが一度流行すると、短期間に根除するのは困難であるだけでなく、消滅後も油断できない。
2)人には感染しなくとも、アフリカ豚コレラは豚や野生猪にとっては致命的な病気でアフリカ豚コレラのウイルスに感染して発病した豚は100%死亡する。
中国は養豚大国で、養豚数は世界全体の53%を占めている。中国における豚肉の消費は肉類全体の消費中の62%を占め、項目別では最大の農産物で、その金額は1.6兆元(約26.4兆円)に上り、その他の関連産業を加えると3兆元(約50兆円)以上に達する。
したがって、アフリカ豚コレラはたとえ人に感染しなくとも、それが養豚業、国民経済、国民生活に対して及ぼす影響は非常に大きく、国務院、農業農村部および各レベルの地方政府はアフリカ豚コレラの流行を高度に重視し警戒している。
3)今年1月以来の状況は去年の同時期に比べると、豚の飼育数だけでなく母豚の飼育数も過去10年間で最大の下降率を示している。
豚の出産数が減少するのは速いので、下半期に出荷される豚の頭数は減少が予想されるが、これは豚肉市場に極端な供給不足をもたらす可能性がある。第3四半期以降、とりわけ第4四半期になると、豚の価格は比較的大きく上昇するものと思われる。
豚価格の上昇は、アフリカ豚コレラ流行の影響を受けて、養豚業者の飼育数抑制や、一部養豚業者の廃業が養豚コストの上昇がもたらすことに起因する。
昨年8月にアフリカ豚コレラが流行を始めて以来、中国の豚肉価格は低下を続けており、中小規模の養豚業者は次々と市場からの撤退を余儀なくされ、豚の生産量は縮小を続けている。

拡大続ける被害

なお、農業農村部が2月21日に発表した『2019年1月期・監視測定県400カ所の豚飼育数情報』によれば、2019年1月末時点における豚の飼育数は前年同期に比べて12.6%減少し、繁殖可能な母豚の飼育数は前年同期に比べて14.8%減少した。

 

アフリカ豚コレラの流行は一向に沈静化せず拡大していることから、この数字は1ヵ月後の2月末時点ではさらに減少幅が拡大しているものと思われる。

2018年11月23日に農業農村部が発表した「8月初旬のアフリカ豚コレラの感染が発見されてから11月20日までの疫病情報」には、20の一級行政区内の47の市(区、盟)で73件の飼育豚の感染、1件の野生猪の感染が確認され、累計60万頭の豚が殺処分されたとある。

それから2ヵ月後の19年1月16日に農村農業部は「アフリカ豚コレラの中国豚肉市場に対する影響は限定的だ」として、19年1月14日までに24の一級行政区で発生した飼育豚および野生猪の感染に関連して累計91.6万頭の豚が殺処分されたと発表した。

さらに1ヵ月半が経過した2月末時点では殺処分の総数は100万頭を超えていることは間違いない。

2月28日に国家統計局から発表された『2018年国民経済・社会発展統計公報』によれば、2018年通年の豚・牛・羊・家禽(鳥)肉の生産量は8517万トンで、前年比0.3%の減少であった。

その中、豚肉生産量は5404万トンで前年比0.9%減、牛肉生産量は644万トンで1.5%増、羊肉生産量は475万トンで0.8%増、家禽肉生産量は1994万トンで0.6%増であった。また、2018年末における豚の飼育数は4兆2817万頭で、前年比3.0%減、豚の出荷数は6兆9382万頭で1.2%減であった。

この数字を上記の1月末時点の飼育数と比べると、わずか1ヵ月で減少幅が拡大していることが分かる。

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