感染豚の死骸も売買…中国全土に蔓延する豚コレラの本当の憂鬱

政府は被害軽微を強調するが
北村 豊 プロフィール

相変わらず良心はない

各地の公安機関はアフリカ豚コレラの汚染地域の治安や交通秩序の維持を強化し、関係部門との協力の下で汚染地域の封鎖、殺処分、消毒、無害化処理などの作業の完璧を期しているし、公安交通警察の取締り所や公安検査所などは家畜用獣医などの部門と連携してアフリカ豚コレラの伝染リスクを抑制すべく努力しているという。

それにしても、病死豚の解体・販売事件などの死んだ家畜に関連する事件が500件以上に上り、それら事件の解明により逮捕された犯罪容疑者が960人にも達したというのは驚き以外の何物でもない。

逮捕された犯罪容疑者が960人ということは、同類の罪を犯している人数はその10倍以上にはなるのではなかろうか。

これは、上述した徐賁教授が提起した「重返人類(人に立ち返ること)」という言葉をしみじみ実感させるものであるが、金儲けのためなら人間としての尊厳を打ち捨てて、恥も外聞もなく利益を追究するのがこの種の人々なのだ。

彼らにとっては、殺処分されて地中に埋められた豚の死骸はカネの成る木に見える。地中に埋められたということは、捨てられたということになるが、それを掘り出して解体すれば、その出所は分からなくなり、無価値の物が有価な物となり、濡れ手に粟のカネ稼ぎになるのである。

金儲けの欲望に負けた人物が最初に手を出してカネを稼いだことを聞けば、我も我もと欲に目がくらんで人倫を忘れた人々が殺処分された豚の解体・販売に手を染めるのである。

彼らの論理は、「そうした豚肉は自分で食べる訳ではないから、何も問題ないし、カネが儲かれば良く、良心の呵責を感じることは全くない」というものである。だからこそ、「重返人類」が必要なのだが、それは容易なことではないようだ。

 

腰の引けた地方政府

2月19日に湖南省永州市で大きな養豚場を経営する桂新友が、アフリカ豚コレラウイルスの侵入によって巨額な損失が発生したことに関連して、管理不十分を理由に逮捕された。

2月28日に永州市冷水灘区防疫指揮部が永州市内の郷・鎮政府や開発区宛てに発行した『永州経済開発区横冲養豚場の伝染病状況に関する通報』がネットに流出したが、そこには下記の内容が記されていた。

「2月8日に国家農業農村部は、永州市経済開発区横冲養豚場でアフリカ豚コレラの流行が確認されたと発表した。当該養豚場で飼育されている豚は4600頭だが、その中270頭が発病し、171頭が死亡した。感染が確認された後、永州経済開発区政府は同養豚場の封鎖、殺処分、消毒などの措置を取り、病死と殺処分された全頭に無害化処理を行い、流行に対し有効な処置を取った。専門家の初歩的分析によれば、感染原因は同養豚場の職員や車両が不用意にアフリカ豚コレラウイルスを持ち込んだことによるもので、経営者の桂新友は、アフリカ豚コレラの感染防止をおろそかにしたという管理不十分の理由で逮捕された」。

ただし、地元の関係者によれば、永州市政府側はアフリカ豚コレラに対する政府自体の防疫力不足の責任を大型養豚場の経営者である桂新友に押し付けたもので、桂新友はスケープゴートにされたのだという。

養豚場がアフリカ豚コレラの感染を受けると、養豚場は大きな損失を被るが、国家は一定の補償を支給するので、経営者の損失は若干軽減できることになっている。

ところが、地方政府は補償を支給したくないのが本音であり、桂新友のように逮捕された養豚場経営者には補償を支給しない規定となっているので、養豚場経営者の多くは政府の対応に不満を感じていても文句を言えない状況にある。

昨年8月以来、中国でアフリカ豚コレラが猛威を振るい始めた後に、中国政府は豚の殺処分を命じられた養豚場に対して経済的な補償を支給すると宣言したが、感染状況が深刻さを増すにつれて補償の支給を継続することが難しくなった。

広東省が最近発表した補償基準を例に挙げると、豚1頭当たりの補償は、300元(約5000円)、500元(約8300円)、800元(約1万3200円)、1200元(約1万9800円)の4等級に分かれており、その財政負担は、中央政府が40%、残りの60%は省・市(県)などの地方政府となっている。

しかし、多くの地方政府は数ヵ月前からアフリカ豚コレラの流行状況を隠蔽したり、確認を怠るなどして支給すべき補償を無視しているのが実情であるという。

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