「相手がある仕事」の難しさ

しかし、同じ中小企業といっても、製造・小売のパンセとペリカンと、製造業の企業とでは仕事の方法が異なる。

ペリカンとパンセはいわゆるB to Cだが、製造業の場合は中小企業と大企業では取引先の数が異なるし、B to Bにせよ、B to Cにせよ、取引先(顧客)の要望(取引条件)が多面的であり、完成品のメーカーに限らず、中間財(素材や部品)のメーカーにしても、取引方法は一律にはいかない。対応方法は多岐にわたる。自分が一方的に「時間を決定」することはできない。

「我が社は朝の9時から夕方の5時までの営業です」といったことを定められる業種は限られているのだ。

ほかの業界でも、同じく簡単に労働時間を減らすことは難しい。たとえば、トラックの運転手の職場を見ていると、地方の運輸業の場合、「混載」が一般的だ。金属製品から農産物まで様々な物を集荷して遠くに運ぶ。「到着必要時間」はあらかじめ決まっている。しかし道路の渋滞などは計算出来ないのはもちろんだが、集荷そのものが時間厳守というわけにはいかない。

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工場の荷物はほとんどが時間を守る。しかし農産物、加工食料などは平気で荷物を納入する時間が30分、40分はズレる。渋滞を含め、調整はトラック野郎の「裁量」だ。自分の休憩・休息で調整する以外にない。時間を守らないことは他人の時間を奪っていることである、という単純な事実を理解しない人間は多いものだ。

「自然」という不確定な要因を相手にする場合、その働き方の「不確実さ」「不安的さ」はさらに増す。たとえば漁業に従事している場合、沖に出てから急速に天候が悪化すると、小舟の場合、操業は容易ではない。

漁師にとって仕事とは「天国」と「地獄」の往復である。こうした業界でも「改革」をしたいという思いはあるが、なによりも就労希望者がいないので、外国人労働者の採用が一般的だ。むろん漁業の延長線でもある魚介類の食品加工の現場も同様だ。みな中小企業である。広島県にある牡蠣の加工の職場等をみていると、手加工の領域が広く、その大変さがよくわかる。こうした職場はパンセやペリカンのようなわけにはいかない。

時間の管理の自己決定が難しい。「物流」や「サービス」は、顧客の都合という「制約」があり、「受注価格」の変更すら難しく、「トラック野郎」のハンドルさばきや、トラックのスピード調整など、工場労働とはまったく異なる。スキーバスの大事故などはそれゆえ生じる。

こうした多様な職場のあり方を目の当たりにすると、日本の政府が旗を振る「働き方改革」などは、議員も役所もそのスタッフも現場を知らないのではないかと思えてくる。

「働き方のブーム」に踊らされてはいけない

しかも、「働き方」は10年単位で変わっていく。短期的な「働き方のブーム」に左右されず、その動向をきちんと踏まえることも重要だ。

筆者は日本から進出した工場の調査のためASEANによくでかける。板金プレス、切削加工、冷間鍛造、メッキ、熱処理、鋳造、あるいはゴム製品、樹脂加工、そしてさまざまな部品加工の現場である。調査対象はみな中小企業である。