〔PHOTO〕室岡小百合

いま最注目の才能「loundraw」をご存じか——24歳の哲学

「キミスイ」装画から小説執筆まで

「loundraw」とは何者か?

2017年夏のある日、ひとつのツイートが回ってきた。それは長さにして1分45秒ほどのアニメーション動画だった。

「世界平和なんて簡単だ。たった一人、大切な人の命を捧げるだけで済むんだから」——主人公らしき男性の声で始まる。

世界と共に生きる少女と就活を間近に控える男性の物語。ふたりのセリフと重なるように、「消えない勇気を受け取ったよ 臆病なあなたから 確かに」とBUMP OF CHICKEN・藤原基央の優しい歌声が聴こえてくる。

BUMP OF CHICKENが好きな筆者はまず歌で引き込まれ、1分45秒を繰り返し視聴した。次第にキャラクターデザインや一度見たら忘れられない光の描き方、壮大で普遍性のある物語の設定が頭に残るようになっていった。

「夢が覚めるまで」と題されたこの動画は現在、8.9万リツイート、17.4万いいねを記録している。

「卒業制作でアニメを初めて作りました」——そう言葉を添えているのは、作者のloundrawだ。ラウンドローと読む。現在24歳のイラストレーターである。

 

この動画を目にしたことがない人もいるかもしれない。

では、時計の針を2015年に戻そう。

この年、のちの大ベストセラーになる『君の膵臓をたべたい』(住野よる著、累計280万部)、その表紙イラストを描いたのが、loundrawであった。

同作はタイトルのインパクトはもちろんのこと、「ジャケ買い」した人が続出するほど、イラストにも注目が集まった。

場所のモデルは、彼の出身地である福井県の足羽川に架かる幸橋(さいわいばし)。そこから見える風景をイラストに落とし込んだ。

このイラストでloundrawは出版界——特に文芸の世界——において、最注目のイラストレーターとなった。そしていまやイラストだけでなく、マンガ、アニメ、音楽と、活動の幅を広げている。

2月末には初となる小説『イミテーションと極彩色のグレー』(KADOKAWA)を上梓。「今、最注目の才能が言葉とイラストで紡ぐ、最強ラブストーリー誕生!」とのキャッチコピーが打たれた本作は、発売1週間で重版が決定し話題を呼んでいる。

loundrawなる存在はいかにして生まれたのか。なぜジャンルを越境するのだろうか。

(取材・文:佐藤慶一、写真:室岡小百合)

loundraw

現実逃避するようにイラストを描いていた

人生でいちばん最初に読んだ漫画は、親からもらった『ドラえもん』の総集編だったという。

小学2年生のときには『名探偵コナン』の模写をしたり、ダンボールでものをつくったりといった幼少期を過ごす。当時はうまいかどうかといった実感もなく、ただただ描いていた。

「中学2年生のとき、親からペンタブレットを買ってもらったことで、本格的にイラストを描きはじめました。描くのは好きですし、上手くなりたいという思いも芽生えました。

加えて、現実逃避のような部分もありました。ぼくは勉強が心から好きではなかった。なので、実生活から逃げるために、絵を描くことを言い訳にしていたところもあると思います」

高校生時代には、pixivでのイラスト投稿を開始。「電撃イラスト大賞」に応募するが1次選考を通過できなかった。

デジタルでイラストを描くことを極める日々。大学に進学後、18歳で商業デビューを果たし、19歳で『ILLUSTRATION 2014』にイラストが掲載、20歳のときに『君の膵臓をたべたい』の装画を担当した。

「『君の膵臓をたべたい』のお仕事はすごく大きなポイントでした。その前後であらゆることが、明確に変わりました。仕事をいただく回数もですが、これまで自分が目にしてきた作品を書く作家さんからのお声がけも。なにより、イラストを仕事にしたいという気持ちが、以前より現実味を帯びるようになりました」

大学時代に実績を重ねていったが、「イラストレーターとしてやっていくことについては、まだ踏み切ることはできませんでした」と語る。

少しだけ就活をおこなったくらいのタイミングで現在所属するTHINKRから声がかかり、大学卒業後は東京を拠点に活動することになった。