プーチン大統領の巧妙で恐ろしい「愛国主義政策」ここまで進んでいた

教科書やテレビへの介入は当たり前
西山 美久 プロフィール

2005年には、国民の更なる愛国心向上を目的に「ズヴェズダー」なるテレビ局が新設された。このテレビ局はロシア国防省が管理運営しており、番組内容は軍事関連に集中しているが、一般の政治経済ニュースやソ連時代の愛国映画等も放映している。一部の社会団体は「ズヴェズダー」の開局を「軍国主義の第一歩に他ならない」と厳しく批判している。

さて、政権がメディアを事実上支配しているため、番組内容も概ね政権の意向に沿う形で編制されている。そのため、5月9日の戦勝記念日が近付くと、各テレビ局は退役軍人のインタビューや歴史番組等を連日にわたって放送し、愛国キャンペーンを展開している。また、国営のニュース専門チャンネル「ロシア24」等では、ニュースキャスターもゲオルギー・リボンを付けるという徹底ぶりである。

戦勝記念日には、朝からプーチン大統領の演説や軍事パレードの他、多数の有名歌手が出演する祝賀コンサートが全国に生中継される。この日はロシア全土が祝賀ムードに包まれ、各地の様子が国営テレビによって朝から晩まで繰り返し伝えられている。

独立系世論調査機関「レヴァダ・センター」が2018年8月に実施した調査によれば、73%の国民がテレビから様々な情報を得ていると答えている。テレビは政権の意向を幅広く浸透させるために有効に活用されているのである。

 

少年少女を組織した愛国団体「ユナルミヤ」

2016年6月、ロシア国防省は愛国団体「ユナルミヤ」を立ち上げた。メンバーは8歳から18歳の少年少女であり、団体によると2019年2月時点で31万6000人が加入している。支部はロシア全国にあり、代表は宇宙飛行士のロマン・ロマネンコが務めている。

「ユナルミヤ」は愛国心育成を目的に掲げており、ロシア史や軍事史について教育を行っている他、軍への入隊も奨励している。活動内容から「ユナルミヤ」は少年少女を軍事化しているとの批判もあるが、ショイグ国防相はインターファクス通信のインタビューでそれを否定している。

2017年の戦勝記念パレードには「ユナルミヤ」が初参加し、ゲオルギー・リボンを付けて勇ましく行進するメンバーの様子が国営テレビによって全国に生中継された。ショイグ国防相は設立1周年記念式典で、「メンバーは10万人以上になり、祖国を愛する多くの少年少女が加入している」と述べ、組織が拡大傾向にあることを明かした。

国防省傘下の「ズヴェズダー」では、「ユナルミヤ」の日々の活動がニュースで取り上げられており、国が積極的に広報することで新規メンバーの獲得が進められている。国防省としては、強固な愛国心を持つ若者で軍を固めたいのかもしれない。

以上見てきたように、大祖国戦争での勝利を礎とする愛国主義は、諸民族統合を促し、ロシアのアイデンティティを構築する基本理念として用いられている。

冒頭で触れた北方領土の問題も、愛国主義という文脈に照らすと理解しやすくなる面がある。また、アメリカ、中国との関係も愛国主義というレンズを通して見ることで把握しやすくなる点が少なくない。その意味で、愛国主義はロシアの現状や今後を理解する上で重要であり、絶えず変化し続けるロシアの基層になると思われるのである。