「モヤっとした感じ」の乗り越え方

誰でもそうかもしれませんが、この「モヤッとした感じ」がわたしはとても苦手です。かすかにでもモヤッと感じたら、なんとかそれを解消してスッキリしたいと思うし、それを解消するにはどうすればいいかと考え、よさそうだと思うことは何でも取り入れてみようと工夫するクセがあります。

夫の看病では、毎日何十本も使って洗濯しなければいけない包帯を、縮んで使いづらくならないよう干し方を工夫してみたり、それによって昨日より早く上手に包帯が巻けたら、それだけでうれしかったり。そんな「ささやかなうれしいこと」の積み重ねでどうにか乗り切れた日々だった気がします。

それでも事故が起きた当時は息子が6歳、娘は2歳。父親の大事故と大怪我という衝撃の事実を受け止められずにいる幼い姿を見るのが辛く、30歳を過ぎたばかりだったわたし自身も出口が見えないほど精神的に追い込まれて、心療内科を受診したこともありました。

薬には抵抗がない性質なので、そのとき処方していただいた薬をどうしても辛いときは飲むようにしていたのですが、それがお守りがわりになってずいぶん助けられた気がします。

こうでなくてはならない、といった固定観念にとらわれないで、まだ試したことがなくて状況を少しでもよくしてくれそうなものには気負わずトライしてみる、という姿勢は介護でも旅行でも同じです。内容がアップデートされれば新鮮な気分になり、モヤッとしていた空気もいつのまにかうまくガス抜きできていた、ということも多いようです。

フランス・プロヴァンの旅のホテルの部屋。別の旅の際、部屋に母が一人で休んでいるときにハウスキーパーの係の人が入って来て、母が驚くようなこともありました。そういうことを経て、より快適な旅のやり方を身につけていきました 写真提供/太田篤子

旅こそ「仕事脳」が必要

好き嫌いがはっきりしていて、感情を全部口に出す子どもっぽい性格の母は、幼いころからわたしにとって複雑な存在でもありました。感情の起伏が激しい母の性格に対して、わたしは細かいことを気にしがちなところがあるので、世間でイメージされるような仲良し母娘の関係というわけではなかったのです。

それが今、毎年いっしょに海外旅行に出かける仲になるなんて。読者の方に関連性を指摘されたように、わたしが夫の看病を通じていつのまにか身につけた力があり、それが自分の大好きな海外旅行で発揮されたのがこの母娘旅だとしたら、それはそれで感慨深いことだなぁと思えます。

最近さらに考えるのは、高齢の親との旅には意外と「仕事脳」が必要だということ。わたし自身、母を甲斐甲斐しくケアする心優しい娘としてより、むしろマネジメントやリスク回避という仕事人の意識で旅のプランを立てているところがあります。人生経験による精神的な成長だけではなく、大きなプロジェクトを遂行して成功させるスキルも、母娘旅の成功にはきっと役立ちます。

だからこそ20代からがんばって働いてきて、最近少し時間に余裕ができた方、それでいて幸いにも親の体がまだ元気、という方にはぜひ親子で旅することを勧めたいのです。「もう若いときのような旅はできない」のではなく、「年齢を重ねたからこその旅ができるようになった」と、その尊さにきっと気づけるはずですから。

構成/小川奈緒

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