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記者も知らなかった…ゴリ押しの「ゴリ」って何だか分かりますか?

水産部長の慣用句講座

部長にして現役の「書き手」が恐れること

若者を中心に日本語の乱れが指摘されることが少なくない。流行語がいつのまにか廃れたり、新たな言葉や言い回しがテレビなどで頻繁に登場したりして、時代の変化を感じさせられることもある。

筆者は水産部に所属し、日常の業務として東京・豊洲市場(中央区)内にある出先事務所(時事通信・豊洲分室)で、水産関係者らに全国主要漁港の魚の水揚げや豊洲市場など、都市部の中央卸売市場における魚介類の入荷や相場情報を配信している。

豊洲市場豊洲市場(市場関係者提供)

そのかたわら、かつては築地市場(中央区)の移転で揺れた市場関係者の動きや、旬の魚の情報を取材し、契約社の社会面を彩る役割を果たしている。

他の編集局内の部署なら、部長となれば取材や記事を書く機会も極端に減るだろうが、同業他社にない部署で部員もそう多くないだけに、記事が上がってくるのを待つだけではない。

現役続行中の物書きの端くれとしては、話し言葉は別として活字にする際、言葉の誤用や勘違いを意識することが多い。知らなかったでは済まされないばかりか、鋭く指摘されて顔から火が出る思いをするのは嫌だからだ。

 

誤用でなくなった「なし崩し」「存亡の危機」

これまで文化庁の「国語に関する世論調査」で、本来の意味や表記と違って使われることが多い言葉や、若者が当たり前のように使うが、年配者が首をかしげたくなるような言葉が紹介されてきた。

メディアも調査結果を見ながら、多くの人が間違っているだろうと思われる例を見つけ出し、競って記事にしていて興味深い。

2018年の調査結果をみると「なし崩し」という言葉は、本来の「少しずつ返していくこと」とは違って「なかったことにする」といった意味で使う人が3分の2に達していた。

借金にたとえると「なし崩し」、つまり徐々に返済していくというのではなく、借金そのものをなかったことにしてしまうわけだから、都合がよすぎる。

ただし、なし崩しには分割返済といった意味だけでなく、物事を「少しずつ変化させていく」「次第に処理していく」という意味もあり、これが「なかったことにする」という解釈で使用されるようになったのだと推察される。

まさに時を経て言葉も変化してきたわけで、この件については文化庁も「本来の意味からの派生」として「誤りとは言えない」とみているようだ。

同様に誤用とは言えないと判断された言葉で「存亡の危機」がある。「存亡を懸けた重大な局面」を表す慣用句に「存亡の危機」を使う人が8割以上を占めた(2017年調査)。

歴代首相数人も公の場で使用しており、本来の「国家存亡の機」に比べ、耳に慣れた感もあるのではないか。