2004年3月、勝地さんがまだ17歳の少年だった時、初めてBunkamuraシアターコクーンのステージに立った。演目は、岩松了さんがシアターコクーンのために書き下ろした『シブヤから遠く離れて』。演出は蜷川幸雄さんだ。岩松さんと蜷川さんは、それが初タッグ。勝地さんは二宮和也さん演じるナオヤの友人、ケンイチを演じた。

あれから15年の歳月が流れた。勝地さんを芝居の世界に導いてくれた蜷川幸雄さんは、3年前にこの世を去った。蜷川さんが芸術監督を長く務めたシアターコクーンも、今年で30周年を迎える。昨年秋から、「Bunkamura30周年記念」と題して、チャレンジングな演劇作品が次々に上演されているが、3月9日から上演される舞台は、岩松了さん作・演出の新作書下ろし舞台『空ばかり見ていた』。

「政治や思想を経由した恋愛話を通して、単体では成立しない恋愛の面白さを描きたかった」と岩松さんが語るように、反政府軍の兵士を主役に据え、悲喜劇に溢れた恋愛の真相を探るストーリー。勝地さんにとって、岩松さんの演出を受けるのはこれが初めてになる。

森田剛さんは、
ただ立っているだけで、
儚くて、愛おしい存在

――勝地さんが初舞台を踏んだのが、シアターコクーンなんですね。演出こそ蜷川さんですが、岩松さんが脚本を手がけた作品で。

勝地:はい。考えてみると、いろいろ感慨深いものがあります。僕が初めて「舞台をやりたい」と思ったのは、シアターコクーンで『身毒丸』を観たことがきっかけでした。それから、『シブヤから遠く離れて』で、蜷川さんと出会うことで、俳優として生きて行く限り、ずっと舞台は続けていこうと思った。演出こそ蜷川さんでしたが、『シブヤから〜』で、僕が発していた言葉は、岩松さんが紡いだものです。

共演した勝村(政信)さんからは、いろんなアドバイスをいただきましたし、その助言が、後になって、「あれはこういう意味だったのか」と腑に落ちたことが何度もありました。とにかく、僕の俳優としての最初の転機になった作品の、その戯曲を書いていた岩松さんに、32歳になった今、こうして演出を受けられるのは、ご縁も感じると同時にものすごく楽しみでもあります。

主演の森田(剛)さんのお芝居も大好きで、ずっと共演したかった方でもありますし。森田さんって、一人で立っているだけで、儚くて、愛おしい存在。いるだけで、独特の存在感がある。すべてが刺激だらけです(笑)。

 
――蜷川さんの舞台は他に、『カリギュラ』や『ムサシ』にもご出演されています。昨年は、宮藤官九郎さん演出の『ロミオとジュリエット』にご出演なさったり、シリアスとコメディの振り幅が、舞台では特に大きいですね。

勝地:蜷川さんと何度かご一緒させていただいた後、2007年に劇団☆新感線の『犬神家の一族の陰謀』という舞台に出演させていただいたんですが、共演者に古田新太さんや宮藤官九郎さんがいらっしゃって。コメディの役が増えたのは、それがきっかけだったと思います。

ただ、舞台ではあまりにコメディが続きすぎたので、「あまり偏りたくないな」と思って、一昨年は、友達の笠原秀幸くんと演劇ユニットを立ち上げてみたりもしました。だから、こういうタイミングでコクーンの舞台に立つことは、自分の中で大きな意味があるように感じています。