知ってましたか?中国がいま、世界屈指の「現代アート大国」に変貌中

当局の後押しと規制の中で
佐々木 玄太郎 プロフィール

習近平政権下で強まる「当局の干渉」

ただし、その追い風は無条件なものではない。中国社会の中で一定の役割を期待されるようになり政府からもバックアップを受ける現代美術だが、一方で中国には表現規制が今も厳然として存在しており、作品発表への規制と干渉は習近平体制の中でむしろ厳しさを増しているといわれる。

中国では、展覧会を行う際には当局への事前の展示計画の提出が義務付けられており、そこでNGが出たものは展示の中止もしくは変更が必要となる。

規制対象となる具体的要素としては、直接的な体制批判はもちろんのこと、政治的に敏感なテーマ、性的表現、暴力的表現、宗教問題などが挙げられるが、そのほかにも当局が不適切と判断する表現があれば、詳しい説明もなしに「展示不可」とされる場合もある。

 

当然ながら大型の国際芸術祭もそのような検閲の対象であり、先に挙げた2018年の上海ビエンナーレでも、当局の検閲によって展示の計画変更を余儀なくされた作品が少なくないという。

同展のチーフ・キュレーターは、60のプロジェクトのうちの約20件について計画の再提出が求められたと述べている。また同展の出展作家の完全なリストは、なんと開会式の前日になってようやく発表された。通常の国際芸術祭では考えられない直前のタイミングだが、これも当局による承認を待った結果とのことである。

なお、展示可否の基準や検閲の厳しさの程度は必ずしも一定ではなく、展示の開催時期によっても変化しうる。

今回の上海ビエンナーレの開幕のタイミングは、習近平も出席した国家的イベントである中国国際輸入博覧会の開催時期と前後しており、ビエンナーレへの審査の厳しさはその影響も被ったものと見られる。

第12回上海ビエンナーレ(2018年)

ここまで、中国における現代美術の歴史と現在の状況を大まかに見てきた。では実際のところ、現在の中国ではいったいどのようなアーティストがどのような作品を制作しているのだろうか?

これも手短に紹介したいところだが、今や中国各地で無数のアーティストたちが、テーマもスタイルも規模も様々な活動を繰り広げており、それらを一括りにして説明するのは極めて難しい。

中国出身のアーティストで国際的に最も名前が知られているのは、おそらくアイ・ウェイウェイ(艾未未)だろう。

アイは立体、写真、インスタレーション、建築、映像といった幅広いメディアで作品制作を行うアーティストであるとともに、社会問題に取り組むアクティヴィストでもある。2008年の四川汶川大地震の発生後には犠牲者の調査プロジェクトを立ち上げ、手抜き工事で建てられた校舎によって多数の小中学生が犠牲になったことに対する当局の責任追及を行なった。

また近年では難民問題をテーマとした作品を多数手がけ、彼が製作したドキュメンタリー映画『ヒューマン・フロー 大地漂流』は日本でも公開されている。

アイは公開声明やSNS上で、中国政府に対する批判的立場を繰り返し表明しており、当局からたびたび暴力的な弾圧を受けている。アイが発信手段としていたブログ等の閉鎖、国内のスタジオの強制的取り壊し、警察からの暴力、そして2011年には約80日間に渡り監禁され、釈放後も監視を受け続けた。

その後、2015年からアイはベルリンに拠点を移して活動を継続している。

アイ・ウェイウェイ(Photo by gettyimages)