知ってましたか?中国がいま、世界屈指の「現代アート大国」に変貌中

当局の後押しと規制の中で
佐々木 玄太郎 プロフィール

熱気に包まれる「上海アートシーン」

上海市文化観光局の統計によれば、2018年末時点での上海市内の美術館数は89館となっている。2012年時点では34館であり、ここ数年での急増ぶりが見て取れる。

それらの美術館の2018年を通した来館者数は、合計約677万人。2012年の記録233万人と比較すると3倍近い数字となっており、こちらも施設数の増加とともに大きな伸びを見せている。

上海市内の美術館数の推移(上海市文化観光局「2018年度上海市美術館運営概況」より)

なお、上海市内の89館のうち国営が22館、民営が67館であり、約75%は民営館となっている。現代美術を主に扱う美術館においても民営館の割合は高いが、民営館の繁栄の背景にも、先述したような政府によるバックアップがある。

上海には、劉益謙、王薇夫妻が設立した龍美術館や、インドネシア華人の実業家ブディ・テックが設立した余德耀美術館のような、コレクターによって運営される大型美術館が存在し、華々しい活動を展開している。かつては上海でも海外コレクターが中心だったが、近年では中国の経済発展を背景に中国人コレクターが急速に増加し、そのシーンを支える重要な一要素となっている。

 

このほか、民営美術館の運営主体の多くを占めるのが不動産系グループである。不動産企業にとっては、文化振興という大義もさることながら、美術館建設によって文化産業を推進する政府から優遇を受けつつ、美術館を訪れる人の流れを作り出すことにより、自らの扱う土地物件の価値を上昇させることができるという利点もある。

不動産系の明園グループが運営する明当代美術館
アートに力を入れるショッピングモール・K11。施設内に美術館を備えるほか、ショッピングスペースにも作品が数多く設置されている。

昨年2018年はアジアを代表する大型国際芸術祭である上海ビエンナーレの開催年で、毎年開催されている上海の二大アートフェアもその開幕に重なる日程で開かれた。それらがオープンした11月7日からの1週間には各国からアートピープル、アートファンが集まり、市内の美術館やギャラリーも含めて上海のアート界はたいへんな熱気に包まれた。

マーケットの成長により、上海には海外の有力ギャラリーの進出も近年さらに進んでいる。また、美術施設やイベントの増加はアーティストの活躍の機会の増加にもつながり、他地域からも多くのアーティストたちを引きつけている。

第12回上海ビエンナーレ(2018年11月-)には初日だけで7000人もの来場者が訪れた
上海の二大アートフェアの一つ、ウェストバンド・アート&デザイン(2018年11月)

上海に限らず中国の他の都市においても、現代美術に関する今後の発展を期待させる動きは多数見られる。上海ほどの目覚ましい成長を見せているわけではないが、もちろん北京も中国における現代美術の重要な拠点の一つであり続けている。

また、すでに一定のアートインフラを持つ成都でも2018年には新たなアートフェアがスタートし、シーンのさらなる活性化が期待されている。そのほか近年では中小都市においても、政府主導の地域振興戦略のもとで、いわゆる芸術祭が相次いで開催されるという興味深い動きもある。