「もう性交渉しない」と書かせる医師も…日本のアフターピル問題

市販薬化やオンライン処方を阻むもの
染矢 明日香 プロフィール

日本は途上国よりも遅れている

「ピル後進国」と言われる日本ですが、海外の状況を見ると、日本は先進国のみならず、発展途上国からも遅れをとっていることが浮き彫りになります。

多くの国では、アフターピルはすでに処方箋なしに薬局で買えるようになっており、19カ国でOTC(Over the Counter=カウンター越しに売買される薬)、76カ国で薬剤師を介して買えるBPC/BTC(Behind the pharmacy Counter=薬局のカウンターの後ろにあり、薬剤師のコンサルティングのもと売買される薬)となっています(ICEC/緊急避妊についての国際コンソーシアムHPより)。

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ピル先進国でもあるアメリカに至っては、なんと自動販売機でも入手することもできます。

価格帯も、千円台、高くても5千円未満のところが多く、若者には医療機関において無料で提供する国も少なくありません。フランスでは、高校生に養護教諭が無料で配布できるようにしています。日本のアフターピルの販売価格は世界のそれと比べて、桁違いなのです。

そもそも、アフターピルの承認薬が発売されたのも欧米から10年ほど遅れた2011年から。当時、世界でアフターピルの承認薬が発売されていなかったのは、イラン、アフガニスタン、北朝鮮など、ごく少数の国だけです。日本の医療全体としては国際的に先進的な水準にあるにもかかわらず、こと避妊に関しては遅れているのです。

 

「リテラシー問題」で進まないアクセス改善

そんな日本のアフターピルを取り巻く状況おいて、2017年に動きがありました。市民によるアフターピル市販化の要望を受け、厚労省が検討委員会を組織し、ノルレボのOTC化について議論が行われたのです。

パブリックコメントを募ったところ、全348件中、賛成が320件、反対はわずか28件という圧倒的な世論の支持を受けましたが、それにもかかわらず、検討委員会では医師・薬剤師を中心とする委員より、「薬局で薬剤師が説明するのが困難」「安易な使用が広がる」などの懸念からOTC化は否決されました

たしかに、アフターピルが手に入りやすくなれば、「あとで薬を飲めばいいからコンドームなしでしよう」と女性に持ちかける男性が増えるかもしれません。そうなれば、性感染症のリスクは増大します。

しかし、プリンストン大学人口研究所の所長を務めるジェイムズ・トラッセル博士らが緊急避妊薬に関する先行研究をまとめたレビュー論文では、必ずしもそうではない、ということが示されています。