「もう性交渉しない」と書かせる医師も…日本のアフターピル問題

市販薬化やオンライン処方を阻むもの
女性にとって、意図しない妊娠を防ぐ最後の砦となるアフターピル(緊急避妊薬)。その日本初となるジェネリック薬が2019年3月に発売となる見通しだ。

これまで、アフターピルはその入手方法の改善を巡り、OTC(市販薬)化やオンライン診療による処方が検討されてきたが、一筋縄ではいかない状況が続いている。

立ちはだかる壁は何なのか。昨年9月に「アフターピルを必要とするすべての女性に届けたい」というオンライン署名キャンペーンを立ち上げたNPO法人ピルコン理事長の染矢明日香氏に解説してもらった。

アフターピルは正式には緊急避妊薬と言い、「避妊に失敗した」「レイプされた」などの妊娠が心配な性交渉の後、一定時間内に服用することで高い確率で妊娠を防ぐことができる薬です。

日本では2011年にアフターピル「ノルレボ」が初めて認可されました。性行為から72時間以内に1錠服用するもので、その妊娠阻止率は早く服用するほど高く、24時間以内の服用で95%、48時間以内で85%、72時間以内で58%です。ただ、妊娠阻止率が100%ではないうえ、コンドームのように性感染症を防ぐこともできないため、あくまで「最後の砦」としての使用が適切であるとされています(WHOより)。

アフターピルを語るうえでまず重要なのが、そのアクセス(入手)のしづらさです。

オーキッドクラブ(女性のQOL向上を目的とした産婦人科医による団体)による「避妊薬ピルに関する意識調査(2012年)」によると、20~30代女性のおよそ10人に1人(12.3%)が「アフターピルを使いたい状況」に直面した経験があるそうですが、アフターピルが必要な状況となった時、すぐには手に入りづらい要因が2つあります。

 

医師の処方箋が必要

一つは、医師の処方箋が必要なこと。望まない妊娠を避けるためには一刻も早い服用が求められる薬であるにもかかわらず、多くの医療機関は土日や夜間は休診です。もし金曜日の夜、避妊の失敗や性被害があったとしても、休日の入手は非常に困難で、夜間・休日救急外来にかけこんでも、アフターピルの処方を断られたり、長時間待たされたりするケースがあります。

特に地方であれば、そもそも病院の数が少なかったり、知人が働いていて噂が広まる懸念があり、行きづらいという声もあります。

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また、若い女性たちから、産婦人科や婦人科を受診すると「遊んでいるふしだらな子」という視線を向けられる、という話も未だに聞きます。やっとの思いで緊急避妊の受診にたどり着いた若い女性が、高圧的な態度で医師や医療スタッフから説教をされたり、ひどい事例では「もう性交渉をしない」という誓約書を書かされた、なんてことも現実に起きているのです。

土日は1錠2〜3万円になることも

アフターピルのもう一つのアクセスのハードルは、価格です。「ノルレボ」の卸価格は1万円ほどで、販売価格は医療機関によって異なりますが、1万5千円ほどのところが多く、土日の場合は、休日診療費が加算され2~3万円ほどになる場合もあります。

ノルレボではなく、中用量ピルを 2 錠、さらにその 12 時間後に 2 錠服用するという「ヤツペ法」と呼ばれる方法もあります。ノルレボ承認前から使われており、価格は5千円ほどが相場のようですが、ノルレボと比較して安価な一方で、避妊効果が劣り、副作用も出やすい方法です。

性被害にあった場合、警察に届け出を出せば、アフターピルや性感染症の検査・治療費など助成の対象になりますが、性被害を受けた人のうち、警察にアフターピルについて相談したという人は、わずか3.7%(内閣府による平成29年「男女間における暴力に関する調査」より)。せっかく制度があったとしても、使われていなければその効果は限定的でしょう。

そしてやっとの思いで警察に相談したとしても、アフターピルは警察に常備されていないため、医療機関を受診する必要があるという一つ目のハードルに再び対峙することとなります。