学校では「男女一緒の調理実習」だったのに

バラエティ番組では「料理下手なんて旦那さんかわいそうやわ〜」なんて言い放つ男性芸人がいるし、ドラマでも「Yシャツのボタンとれかかってますよ」「ああ、奥さんと喧嘩しちゃって」なんてシーンがある。

だからもう、そういう時代じゃないって! わたしたちは学校で男女一緒に調理実習して、男女一緒にエプロン縫って、男女一緒にキャリア教育を受けて育ってきたの! それなのに社会に出ていきなり「女の役目」なんて言われても知らないよ!

出産・育児というのは、やむを得ない事情をのぞき、「やっぱりやめます」「やりなおします」はできない。

だからこそ不安になるし、ナーバスにもなる。そしてそんな次期子育て世代のモチベーションを削ぐ主張が、出来事が、日常のいたるところに転がっている。こういったプレッシャーや押し付けのすべてが、わたしを尻込みさせるのだ。

揺さぶられっこ症候群の注意喚起を呼ぶ資料のイラストは、なぜか母親だけオロオロしていて父親と思われる男性は知らん顔…「ああ、こういう前提なのか」と思ってしまう 「American Academy Pediatrics」の資料より

子どもを授かることを楽しみにできない。不安が勝ってしまう。そう思うわたしは、母親になる前から母親失格なんだろうか……

ドイツの女子が楽観視できる理由

とまぁ日本ではこんな感じにどんどんテンションが下がっていくわけだが、ドイツだと少し事情がちがう。

意外かもしれないが、ドイツ、とくに旧西ドイツ地域は、「女が家事と育児」という価値観が強い。一方で、女も働いて当然の時代でもある。そこで現状の妥協点が、女性の時短ワークだ。

ドイツでは15歳から64歳の働く女性のうち46%が時短ワークをしており(連邦統計局)、2010年の統計では、5歳以下の子どもをもつ働く母親の約7割が時短ワークだった(MIKROZENSUS)。18歳以下の子どもがいる両親の収入形態を見ると、フルタイムの父親+時短(週15-36時間)ワークの母親という組み合わせが33%でトップ(連邦家庭・高齢者・女性・青少年省)。

企業勤めの女性なら、もちろん産休・育休はフルで取れる。嫌がらせを受けた? 上司が認めない? 即人事に通告、万事解決。ちなみに「育児休暇」という名前も、「親の時間」に変更された。

また、2007年に制度改革が行われ、現在は男性の3人に1人は2ヶ月の育休を取ると言われている。わたしのパートナーは「1ヶ月が限界かなぁ……」と要相談のようだが、彼の兄は2ヶ月の育休を取得していた。これもまた心強い。

家事(というか食事)に重きを置かない国なので、夜ご飯はパンにハム乗っければそれでOK。ベルリンでは保育園不足が指摘されているが、ドイツではベビーシッターもアリだし、わたしが住んでいる村では保育問題も大丈夫そう。

医療費や学費もほとんどかからないし、国から月200ユーロ弱(2万円くらい)もらえるし、経済にもたぶん平気。電車やバスにはベビーカーを置くスペースもあるから気兼ねしなくていい。

エレベーターのベビーカーマーク。日本もベビーカー専用ですと書かれているものがあるが、バスも電車もかなりのスペースがあって安心 Photo by iStock

社会福祉という後ろ盾もあるから、ドイツでは育児はわりと「なんとかなる」という雰囲気だ。同年代の友人も、「まぁもう少ししたら子どもを考えようかな」「制度とかいろいろあるんでしょ?」という感じで、焦りや悲壮感といったものは感じない。

実は、第一子出産時の女性平均年齢は、日本は30.7歳(厚生労働省)ドイツは31.2歳(連邦統計局)とたいして変わらないのだ。

そのわりに日本の女性の方がプレッシャーを感じているように見えるのは、伝統的な「良妻賢母」と、現代的な「バリキャリ女性」のあいだでジレンマを感じているからだろう。両方を全力でまっとうすることを期待されれば、「そりゃ無理だ」と匙も投げたくなる。