米朝首脳会談のウラで、トランプも「絶体絶命」に陥っていた

側近の証言が「ゲームチェンジャー」に
海野 素央 プロフィール

「署名入り小切手」の衝撃

2月末の公聴会でコーエン被告は、トランプ大統領が不倫をしたとされる女性に対し、自身の立て替えで大統領選の数日前に「口止め料」を支払ったと証言しました。コーエン被告は議会に、その時の支払いを補填するためにトランプ大統領が署名した小切手の複写を、証拠として提出しました。

トランプ大統領は16年の大統領選挙の際中、カネの出所を隠すため、コーエン被告に口止め料を立て替えるよう指示したのでしょう。この小切手の左上には、トランプ大統領の名前とニューヨークの5番街にあるトランプ・タワーの住所が印刷されています。

「ウォール・ストリート・ジャーナル」紙によれば、コーエン被告は、トランプ大統領と不倫関係にあったとされるポルノ女優ストーミー・ダニエルズ(本名ステファニー・クリフォード)氏に、13万ドル(約1400万円)を口止め料として支払ったといいます。トランプ大統領は返済を月払いの分割にしていました。またトランプ大統領は、コーエン被告に「マイケル、心配するな。小切手が送られてくるから」と語っていたとも報じられています。

そして小切手の一番下には、受取人のコーエン被告の名前と住所が記され、その横にトランプ大統領による地震計の波形のような署名があります。もはや、完璧な物的証拠と言わざるを得ません。

小切手の日付は2017年8月1日。トランプ大統領がコーエン被告に口止め料を返済したのは、大統領に就任した後だったということになります。

 

起訴か、弾劾か

今後トランプ大統領は、検察によって「選挙資金法違反」に問われる可能性が高まりました。さらにコーエン被告の証言通り、内部告発サイト「ウィキリークス」がクリントン陣営に打撃を与える電子メールを大量に公開することを、トランプ大統領が事前に把握していたならば、こちらは「共謀罪」に問われます。

ちなみに米国の情報機関は、大統領選に際し、ロシアのハッカー集団がクリントン陣営に不利になる電子メールを窃盗したと断定しています。

トランプ大統領は、在職中には起訴されませんが、仮に2020年の大統領選挙で敗れると、起訴の可能性が出てきます。つまりコーエン被告の証言は、次の大統領選挙の意味合いを大きく変える力を持っていたということになります。

トランプ大統領が2時間5分もの長広舌をふるった背景には、「刑事責任を逃れるには、なんとしてでも再選を果たさなければならない」という強い思いがあったからなのです。

2020年米大統領選挙に伴う上院選では、3分の1の上院議員が改選になります。ところが、以前にも説明しましたが、これらの議席は22名が共和党候補で、民主党候補はそのおよそ半分の12名。しかも、共和党の地盤で戦う民主党候補はわずか1名です。共和党候補にとっては、圧倒的に不利な戦いになることが予想されます。

昨年の米中間選挙では、下院は民主党が過半数を奪還しましたが、上院は共和党が多数派を維持しました。現在、民主党は無所属を含めて上院で47議席を占めています。大統領の弾劾を成立させるには67議席が必要になります。

民主党は、次の上院選挙で20議席上乗せするのは困難で賞が、多数派を奪回する可能性は大いにあります。上下両院で民主党が多数派になり、世論がその立場を支持し、さらに共和党議員が「トランプ大統領を擁護しても、自分の選挙のためにならない」と判断した場合、「弾劾」の2文字が見えてきます。つまり、上記の「3つの条件」がトランプ大統領の弾劾には不可欠になるということです。

米朝首脳会談の裏で行われたコーエン被告の議会証言は、ゲームの流れを大きく変えました。トランプ大統領は、これまでにない苦境に立たされています。

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