米朝首脳会談のウラで、トランプも「絶体絶命」に陥っていた

側近の証言が「ゲームチェンジャー」に
海野 素央 プロフィール

冒頭、大統領はコーエン被告の公聴会において、カミングス委員長に対して公聴会の開催そのものに疑義を投げかけたマーク・メドーズ下院議員(共和党・南部ノースカロライナ州第11選挙区選出)を称賛します。さらに、「コーエン被告の証言には、まったく信頼性がない」と痛烈に批判したジム・ジョーダン下院議員(共和党・中西部オハイオ州第4選挙区選出)のことも褒めちぎりました。

さらに、トランプ大統領は2016年の米大統領選挙におけるトランプ陣営とロシア政府の共謀疑惑、いわゆる「ロシアゲート」について「ロシアとの共謀は妄想だ」と強調しました。

その際、トランプ大統領は興味深いテクニックを使いました。共謀は英語で“Collusion”、一方で妄想は“Illusion”です。トランプ大統領は韻を踏むことにより、このフレーズが熱狂的な支持者の記憶に残るよう仕掛けたのです。発言の内容はともかく、トランプ大統領の言語感覚の鋭さがうかがえます。

 

そのうえで、ロシアゲートの捜査を「でたらめだ」と畳み掛け、「国民は捜査に嫌気がさしている」と語気を強めました。ロシアゲートの捜査にあたるロバート・モラー特別検察官のチームメンバーには、「13人の怒れる民主党支持者がいる」とも述べ、捜査の不公平を訴えました。

米連邦捜査局(FBI)に対する非難は続きます。「モラーはコミー(元FBI長官)の親友だ」と述べて、FBIの幹部が反トランプであると印象付けるのにも抜かりありません。この演説内容から言って、米朝首脳会談の最中に行われたコーエン被告の議会証言に、トランプ大統領がかなり神経質になっていることが如実にわかります。

「2020年大統領選」の前哨戦が始まった

モラー批判と合わせて、トランプ大統領は2020年の米大統領選挙を睨んでの発言も行いました。コーエン被告の証言を受け、支持基盤を早急に固める必要があると考えたのでしょう。それが2時間5分という長時間の演説になったのです。

トランプ大統領は演説の中で、メキシコとの「国境の壁を仕上げよう」と支持者に呼びかけました。以前の記事でも触れましたが、トランプ大統領は2016年の大統領選で「国境の壁を造ろう」呼びかけています、そこからギアを一段上げて、支持者の士気を高める作戦です。

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議会民主党に対する攻撃も忘れません。「民主党は社会主義者だ」と批判し、昨今政治情勢が不安定でハイパー・インフレーションに陥っているベネズエラを引き合いに出しつつ、「米国は決して社会主義国にはならない」と強調しました。

来年の大統領選挙でも、こうした「壁建設」と「民主党叩き」が、トランプ大統領の戦略の重要部分を占めるであろうことが予測されます。

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