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米朝首脳会談のウラで、トランプも「絶体絶命」に陥っていた

側近の証言が「ゲームチェンジャー」に

米朝会談「意外な勝者」

2回目の米朝首脳会談は「決裂」という想定外の結果になりました。トランプ大統領と金正恩・朝鮮労働党委員長の思惑と今後については日本でも多くの識者が解説していますが、筆者はトランプ大統領が米国内政でおかれている苦境について、お話ししたいと思います。

トランプ大統領は、首脳会談後の記者会見で「この重要な首脳会談の最中に、でたらめな(コーエン被告の)公聴会が開催された。2日後や来週に実施してもよかったはずだ」と、怒りをぶちまけました。

マイケル・コーエン被告はトランプ大統領の元顧問弁護士にして、親族が経営するトランプ・グループの弁護士も務めていました。しかし、大統領の過去の脱税などに関与した疑惑で捜査対象となったコーエン被告は、ロシア疑惑に関する偽証を認め、昨年12月に禁固3年の実刑判決を受けています。

そのコーエン被告の公聴会が下院監視・政府改革委員会で開かれたのは、米朝首脳会談と同日の27日でした。すでに報じられている通り、米国側が北朝鮮に高いレベルの非核化を要求した結果、会談は物別れに終わりましたが、トランプ大統領は「首脳会談と公聴会が同日でなければ、物別れの結末にはならなかった」というメッセージを発信したのです。

では、今回の首脳会談の本当の勝者は、一体誰だったのでしょうか。

 

そもそも当初、コーエン被告の議会証言は2月7日に開催される予定でした。しかしコーエン被告が、「トランプ大統領とその弁護士チームの1人であるルディ・ジュリアーニ元ニューヨーク市長から、家族が脅迫を受けている」と主張したために、公聴会は延期されました。

その頃、トランプ大統領は同月5日の一般教書演説で、「米朝首脳会談を2月27、28日に開催する」と明かしました。そして、会談の開催日を確認した議会民主党は20日、「コーエン公聴会を27日に行う」と発表しました。

つまり民主党は、米朝首脳会談と同じ日にコーエン被告の公聴会開催をぶつけたのです。

下院での公聴会開催と日程を決める権限は、過半数を押さえる民主党の各委員会の委員長にあります。コーエン被告の公聴会については、下院監視・政府改革委員会で開かれたので、イライジャ・カミングス委員長が権限を持ちます。

しかし、この日程調整の裏には、民主党のナンシー・ペロシ下院議長の影響があったとみて、まず間違いありません。ペロシ議長はこれまで、「トランプ大統領を一般教書演説に招かない」と発表するなど、議会の立場から大統領に揺さぶりをかけてきたからです。

ペロシ議長は、成果を出せず手ぶらで帰国するトランプ大統領のことを考えると、笑いが止まらなかったことでしょう。議会公聴会のプロセスを熟知しているペロシ氏の勝利、と言えます。

2時間5分の熱弁の理由

ハノイから帰国するやいなや、トランプ大統領は早速コーエン被告に対する攻撃を本格的に開始しました。3月3日(日本時間)までに、自身のツイッターに6回も、コーエン被告を非難する投稿を行なっています。被告の証言で何が飛び出すか、危機感を募らせたのでしょう。

次に、トランプ大統領はワシントン近郊で開催された、全米最大の保守派の年次総会「保守政治行動会議 CPAC(シーパックConservative Political Action Conference)」で演説を行いました。この総会には例年、トランプ大統領の熱狂的な支持者が数多く参加します。

驚いたことに、帰国したばかりの72歳のトランプ大統領は、2時間5分にわたって熱弁をふるいました。