日本が「都合のいい外国人」を求め続けてきた30年を振り返る

Session-22✖️現代ビジネス
荻上 チキ, 山口 元一

「日本に居着かれると困る」というホンネ

チキ 「3年かけて日本でルーツを探してください」という太っ腹な政府、にはどうも見えませんよね。では、本音はどう捉えればいいんでしょうか。

山口 当時の刊行物を読むと、ある程度本音が見えます。

例えば、法務省所管の団体である入管協会が出している「国際人流」という出版物をみると、当時の政策担当者、外務省の領事移住部の方が改正の趣旨について以下のような発言をしている。

「日本では労働力が不足している、特に中小企業の3Kと言われる分野では、労働力不足が深刻である。以前から不法就労とならない日系人労働者の需要は多かったが、これが一層強くなっている」と。

それで、ここから先がかなり強烈なのですが、「アジアの人たちは帰っていかない、居着いてしまうかもしれない。家族を呼んで子供を産んで。…(一方で日系人は)たまたま今自分の国の経済が悪いから来ていますが、ここに永住するかと言うと、金が貯まれば帰っていくかと思います」と、堂々とおっしゃっている。

こうしたことを書いておきながら、「ルーツ探しのために、あるいは親族との交流のためにくるんだと思っていました」というのは、通用しない言い分ではないかなと思います。

チキ これは当時の外務省の担当の職員がこうした寄稿文章を書いているということなんですよね?

低賃金で誰も働きたくないような職場で外国人を働かせたいが、アジアからの方だと日本に居着く可能性が高い。南米の方だと帰ってくれるから、後者から入れましょう、と。そこで着目されたのが日系人だということですね。

 

山口 そうです。日系人とその家族ということですね。

チキ 当時はその受け入れについて、国会で意見の衝突はあったんでしょうか?

山口 当時の国会の議論を見る限り、当時増大していた不法就労者に対する議論は盛んになされていますが、日系人についてはほとんど議論がなされていません。

でもそれは当然なのです。

なぜなら、そのとき入管法で定められた「定住者」という在留資格は、法務大臣が特別な事情を考慮して一定の在留期間を指定し、居住を認める者という形式になっています。その内容として日系二世の配偶者、日系三世、日系三世の配偶者と未成年で未婚の日系四世が含まれるわけですが、それは法務大臣の「告示」という形で、改正法が成立した後に示されたからです。

その後、「日系人」と言われる人たちは、多い時期にはブラジル人だけで30万人が滞在するほど日本に来ることになります。しかし当時は、それだけ多数の外国人が来るという議論がまったく行われていなかった。もっとも政府も建前上、「労働力として来てください」とは言っていませんので、議論するのも難しかったのかもしれませんが。

チキ 野党の追及も、少なくとも今の国会ほどには厳しくなかった、と。

山口 そうですね。

日本の法律での外国人の位置付け

チキ そもそも日本の法律で、外国人はどのように位置付けられているんでしょうか。

山口 最高裁判所が1978年の10月4日にマクリーン事件という有名な判決を出しています。そこで端的に言われているのは、外国人にも基本的人権は認められる、ただし外国人に対する人権の保障は「外国人在留制度の枠内で与えられているにすぎない」ということ。これは僕があえて刺激的なセリフを言っているわけではなくて、判決にそのまま書いてあることです。

チキ 判決にそう書いてあるんですか。

山口 はい。あくまで外国人在留制度の枠内で与えられているに過ぎない、と。

「外国人在留制度の枠内で与えられている」とはどういうことか。外国人は滞在している期間中に人権が保障されないとは言わない。ただし外国人の滞在をどういう条件で認めるか、あるいは滞在中のどういう行為をとがめ立てて追放するか、そういったことに関しては国が広い裁量を持っている、ということです。

つまり外国人の在留条件は、国がいかようにも決められるというのが日本の基本的な法律の考え方なんですね。

今問題になっている「特定技能1号」についても、家族の滞在については認めないとしています。

家族と同居することは、日本も批准する国際条約で認められる人権の一部とされていますが、そうした権利を外国人に認めるか、認めないかというのは、在留制度という枠を通じて日本の政府がいかようにも決めることができる――これが裁判所も認める日本の外国人の法的地位に関する考え方なんです。ずいぶん昔の判決ですが、これは今でも一貫しています。

チキ それが40年前の最高裁の判決である、と。日本の司法としてそう考えているということですよね。

山口 その通りです。