2030 年には、平和や差別、エネルギーなど、さまざまな問題の何がどんなふうに叶えられているだろうか。“こうなって欲しい未来” を精神科医でミュージシャンの星野概念さんに話してもらいました。

世でいう少数派ならずとも
解放される居場所が増える。

いま精神的な問題を抱えている人や、社会生活にコミットできない人、知的障害のある人が駆け込める場所は、病院や施設などにさまざまなかたちであります。日本の精神医療はまだまだ不十分ですが、イタリアなどのように病院をなくして、医者も地域の福祉に携わる一員となることで、精神医療を彼らがその地で永続的に暮らすための取り組みに変えていく流れもあります。

従来の仕組みでは、病院に来ない人には何もできない、そんな問題を回避していくために、往診などの訪問診療を可能にすることにも重点が置かれ始めている。将来的な可能性を福祉が担っていくことで、まだまだ精神医療の分野は広がっていくでしょう。

だから僕が注目したいのは、それとは少し違うところです。精神疾患や身体障害を抱えている方々の他にも、ジェンダー、人種など、医療とはまた別のところで少数派である人たちも多くいます。さらにいえば、ものすごくマニアックだったり考え方が偏った人も、ある意味で少数派であるのかもしれません。

そういうふうに分かりやすく少数派である人たちって、たとえ社会の隅っこであるとしても、それぞれに独自の居場所があるような気がしているんですよね。僕が最近考えるのは、そうではない人たちの居場所のことです。目立った悩みや問題を一見抱えていない、あの人は心配ないよね、って言われるような人の居場所は大丈夫なのかなって。

ママ友はいるけどサークルで居心地の良さを感じられない人、会社で出世はしているけれど家族間の会話がない人、いろんな孤独を感じている人がいると思います。物理的な居場所はあってもそれが心の拠り所にならないこともあるし、逆に、物理的な居場所はなくても心の拠り所になり得る何かを持っている人もいる。そうして感じた孤独が、例えば会社の部下など、身近な人へのハラスメントにつながっていく場合もあると思います。

2030年、そういう人たちも気の抜ける、間口の広い、曖昧な寄り合い所のような場所がたくさんできていたらいいなと思います。自分の孤独にすら気づいていない人たちが、囲碁センターのように、ふらっと話しに行けるような場所。今日はあの人がいるからちょっと話を聞いてもらおうかなって、精神科医としても人の話を聞けるような。そこにはいろんな年齢や職業や性別や個性の人がいて、みんなが急ぎすぎない、雑に省略しない、手が届く小さなことを大事に生活している。どんな置いてけぼりも切り捨てない世界が、平和だなと思うんです。

PROFILE

星野概念 Gainen Hoshino
精神科医、ミュージシャン。1978年東京生まれ。総合病院に勤務。著書に、いとうせいこうとの共著『ラブという薬』がある。ウェブ『Yahoo! ライフマガジン』、雑誌『BRUTUS』『エル・グルメ』『Hanako』で連載中。□□□のサポートギターなど、音楽活動も。

ああああああああ

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Illustration:Katsuki Tanaka Text:Toyofumi Makino Text&edit:Asuka Ochi