モヤモヤから抜け出せる人と
そうじゃない人の差

蒼井 原作を読んだとき、少し前、20代後半の自分と重なるなと思ったんです。私はそこまでヘビーではなかったけれど、なんか悶々と曇ってるなぁという気持ちが常にあったあの頃の時間と、たぶん春子が自分から動くこともせずに何かを待っている感じが、わかるなぁって。

山内 そこから抜け出せる人とできない人の違いをよく聞かれもするし、原稿を書いてても何だろうとよく考えるんだけど、やっぱり答えはわからないんですよね。同級生と会ったときに、以前と同じように話してたのに、この子と私とは全く違う人生を歩んでると思ったり、お互いの状況も全然違ったりする。なんでこんなふうになったんだろう?みたいな。

蒼井 私もわからないな。難しい。ちょっと不真面目というか、ふざけたところがどこあると抜けるんじゃないですか? 真面目な人はどんどん入っていっちゃう。ガッチガチになるともうがんじがらめになっちゃうし。

山内 自分のこと笑えるようになるかどうかとかも関係するかも。

蒼井 私の場合、29歳くらいから同世代、同い年の人たちと仕事をする機会が増えたんです。横のつながりがあるということ、それがすごく大きかった。

山内 そっか、特殊だもんね。年上の人たちとずっと同じ仕事をしてきているから。

蒼井 仕事で制服を着なくなってからはそうですね。学生を卒業したとしても制服を卒業するタイミングは役者さんそれぞれで違うんです。男性の場合は24〜25歳くらいまで平気で着れたりするので、そうすると学生モノの作品に参加するので同世代の集まりも多いんです。でも、20歳を超えた女優たちはセーラー服をずっと着ているわけにはいかないから、同世代と接する機会が少なくなる。

山内 大人の役が増えてくる。

蒼井 映画って、男の人のほうが出番というか、役が多いんですよね。男性キャストのなかに紅一点とか、それを邪魔して引っ掻き回す相手くらいの形が基本だから。となると、同世代同士で仕事するというよりは、先輩がいて、先輩と言ってくれる後輩がいて、この縦の道をてくてくとぼとぼ歩いてる感じだったんですけど、あるとき、ぶわっと横に歩いてる人がいる!と気づいたみたいな。

山内 どの辺りの作品でそう思ったんですか?

蒼井 ドラマ『若者たち』で満島ひかりちゃんと共演してからですね。『アズミ〜』の前に出演させていただいた山下敦弘監督の『オーバー・フェンス』では松田翔太くんがいて。今回は松居大悟監督も、プロデューサーの枝見洋子さんも同い歳だったんです。プロデューサーって、もうちょっと上だったりするのが当たり前だったけれど、85年生まれが揃っていて、こういう現場は初めてでした。同じ歳って、こんなに心強いんだと知りましたね。

山内 そんなに同世代が揃ってたんですね。私も似たような話だけど、そういう出会いがあったな。作家って、家のなかでパソコン叩いているだけの孤独な仕事じゃないですか。私は「女による女のためのR–18文学賞」を受賞してからデビューするまでが結構長くて、その間に同じ賞を受賞された先輩たちからすごく良くしてもらったんです。デビューもしてないし、本も出していない、何者なのかもわからない状態の私に、ほぼ初対面で声をかけてくれて。仕事のことを話したりできる、歳の近い女性のグループに入れてくれたんです。

ちょうど私は30前後で、全く仕事をしていないニート状態だったんですけど、1冊目を出版してからすんなりと作家業に移行できたのは先輩たちを見てたからかなって。

蒼井 そうだったんですね。

山内 30代前後のほうが、友達のありがたみがわかるようになってきたかもしれない。20代の群れてる感から、支えられてる感に変わってきたというか。

蒼井 何なんですかね。同世代だから喋れることってある。生きてきた年数がほぼ一緒だからかな。格好もつけようがないし、無理しなくてもいいって思えるんです。