2019.03.17

パイロットには出来高払い、機体は最大限稼働…LCCが直面する課題

未来の空旅はどう変わるか・その3
戸崎 肇 プロフィール

規制緩和によるLCCの台頭

さて、こうしたLCCが表舞台に現れてくるのは、1990年代の後半からである。1993年のEU統合を機に、ヨーロッパでは航空事業に関する大胆な規制緩和が行われた(詳細は拙著『航空の規制緩和』勁草書房を参照されたい)。

実質的な自由化が施行されたのは1997年からで、その中で低運賃を売りに急成長を遂げたのがアイルランドのライアン・エアーとイギリスのイージージェットである。国際線の年間輸送実績において、両社は世界1位、2位を占めている。

国際線というと、日本人の感覚からすると長距離線をイメージし、LCCのビジネスモデルと合わないように思われるかもしれない。

しかし、ヨーロッパでは各国の面積はそれほど広くないうえにお互いに隣接しているので、国際線といえども国内線のような感覚なのだ。

国際線の年間輸送実績1位のライアン・エアー (photo by iStock)

そのため、国際線と国内線を合わせた輸送実績となるとアメリカのFSCであるデルタ航空が首位となる(ただし、ほぼ同規模の2位はサウスウェストであり、やはりLCCの強さがわかる。アメリカの航空会社が上位に来るのは、その国土が広いからである)。

その後、ヨーロッパ各地でLCCが続々と誕生していく。なお、ユニークなサービスで知られるヴァージン・アトランティック航空もLCCだと思う方もおられるかもしれないが、ヴァージンは長距離国際線をメインに運航しており、サービスの良さでも知られており、LCCとは一線を画している。

とはいえ、近年はグループ会社としてヴァージン・アメリカやヴァージン・オーストラリアを設立、各地でLCCとしての存在感を高めている。

さらにヴァージン・グループを率いる天才リチャード・ブランソンは、後に述べるエアアジアの総帥トニー・フェルナンデスと仲が良く、お互いユニークな行動で話題をさらっている(たとえば、負けたほうが相手の航空会社で客室乗務員としてサービスを行うという賭けをし、負けたブランソンがエアアジア機内で、女装してサービスをしたことが大きな話題となった)。

AFP:ヴァージン会長の「女装罰ゲーム」実行、エアアジアの客室乗務員に

効率性と安全性のバランス

アメリカでもサウスウェストに続き、ジェット・ブルーなどがLCCとして台頭してくる。ジェット・ブルーのようなLCCでは、パイロットに対し実際に飛んだだけ給与を支払うという制度を導入しているところがある。

これは一般の人々からすれば、当たり前のように思われるかもしれない。しかし、従来は実際に乗務していなくてもある一定時間、しかも近年まではかなり長い時間乗務したことにして給与として保証する制度が一般的に行われてきていた。

コストの見直しが行われていくなかで、さすがにこうした制度も改革されて実乗務時間に近づいてきているが、いわゆる「出来高払い」はLCCに特徴的であろう。

ただ、「出来高払い」では、悪天候でも何とか飛ばさないとお金がもらえないことになる。そこで、天候の回復を可能な限り待つようになったため、場合によっては乗客が長時間機内に閉じ込められるような事態が発生し、問題化した。

そこで、乗客の保護のために「パッセンジャー・ライト(乗客の権利)」を守ろうということになってきた。

そして、このように無理にでも飛ばそうという姿勢は、当然ながら交通機関としての最大の使命である「安全性」に支障を及ぼしかねない。事故が起こってしまってからでは遅いのだ。

そんなわけで、効率性と安全性をどのようにバランスさせるかという難しい課題に直面することになるのだ。残念ながら、LCCに関する事故はこれまで少なからず起こってきている。

次回はアジア、日本におけるLCCの台頭と、それに対して大手航空会社はどのような対抗策を講じてきているかを見ていきたい。

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