2019.03.17

パイロットには出来高払い、機体は最大限稼働…LCCが直面する課題

未来の空旅はどう変わるか・その3
戸崎 肇 プロフィール

機体を最大限稼働させる

しかし、低コストを追求するのはいまや従来型の航空会社(FSC:Full Service Carrier)でも変わらない。

FSCという言葉との対比から明らかなように、LCCは航空輸送という最低限のサービスだけを提供することを基調とし、機内サービスや座席指定、預入手荷物など、付加的なサービスに対しては追加料金をとるのだ。

また、機体を最大限稼働させようとするのもLCCの基本戦略である。航空機は地上にいる限り金食い虫にすぎない。駐機料などを支払わなければならないからだ。

そのため、航空機が着陸して乗客を降ろしたらできるだけ早く新たな乗客を乗せ、出発させようとする。その間に要する時間は、わずか15分から20分程度が理想とされる。FSCが40~50分かけているのとは対照的である。

LCCは機体を最大限稼働させようとする(photo by iStock)

こうした短時間での折り返しを可能とするために、機内清掃は着陸前に客室乗務員が済ませてしまう。

また、貨物の積み下ろしを行うと時間がかかるので、FSCのように貨物輸送は行わないのが基本となる。貨物輸送を行わなければ胴体部(ベリー)の空間を有効に活用することができないというハンディとなるが、時間効率のほうを優先させるのだ。

さらにスムーズな離発着ができるよう、混雑した空港への乗り入れは避けようとする。複数空港があるような大都市であれば、あまり使われていない郊外の空港へ乗り入れるのが一般的なパターンとなる。

そうした空港のほうが使用料などが安くすむし、空港側も乗り入れてくれる航空会社に対して様々な便宜を図ってくれることが期待できる。

そして、こうした空港に乗り入れることのもう一つの理由として、LCCは基本として路線の引き方について大手航空会社とは全く異なる考え方を持っていることがある。

これについては大手航空会社について述べる回で詳述するが、「ハブ・アンド・スポーク」から「ポイント・トゥ・ポイント」への発想の転換である。

自己責任原則が徹底される

一方、こうしたギリギリの運航形態は、いったんどこかで遅延が発生すると、それが後々まで影響してくる。場合によっては遅延が増幅されていき、最終便がキャンセルになるということも起こって来る。

実際日本では、成田空港のように運用時間に制限があるところがあり、日本のLCCについての考察でも触れることになるが、成田空港に拠点を置くLCCでは運用時間内に成田空港に引き返すことができず、欠航となる場合が出ている。

このため、昨今のように出張旅費の支給制限が厳しくなっているビジネスパーソンにとってLCCはコスト的には魅力的だが、旅行者と違って時間的なリスクを抱えるため、LCCの利用に二の足を踏む場合が多い。

機内に持ち込む荷物に関してはサイズなどに厳しいルールを設けており、予約時点でどの程度の荷物を持ち込むか、あるいは預けるかによって料金が変わって来る。当日それを上回ると、割高な追加料金を課されることになる。

そのため、日本人はもしもの場合に備えて実際よりも多くの荷物を持ち込めるように多めの料金を支払う傾向がある。これに対してできるだけ出費を抑えようとする旅客は、当日制限オーバーとなって社員ともめることが多い。

そうしたトラブルから搭乗手続きに時間がかかり、遅延が発生することにもなりかねない。

また、預入荷物の手続きはセルフマシーンで行うのが主となるが、こちらも機械が適正に作動しないことが多く、そうしたトラブルに対処する係員も少ないため、よほどLCCを使い慣れていないと不安が残るだろう。LCCの利用は、とかく自己責任原則が徹底されていると考えるべきである。

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