旅好きセレクターによる、旅へと誘う本をご紹介! 今回は、CLASKAGallery & Shop “DO”(ドー)ディレクターの大熊健郎さんに選書してもらいました。

あてのない旅ができる日まで

長く買い付けの仕事をしてきたこともあり、旅といえばその大半がモノを探す旅だった。そのせいか旅に出るとつい「何かないか」とあちこち探し回り、どんな小さな獲物ひとつでも仕留めないと落ち着かない性分になってしまった。でも本当はあてのない旅に出れる人になりたい。スナフキンのように。
 

MADE IN JAPAN 素のものたち
内田鋼一著/アノニマスタジオ(2011年)
壺、皿、農具など、「MADE IN JAPAN」の骨董を集めた図録。世界を舞台に活躍する陶芸家、内田鋼一の目が捉えた日本とは。

現代日本を代表する陶芸家の内田鋼一さんは古物収集家としても知られ、その目利きぶりは骨董のプロからも一目置かれるほど。その内田さんが旅先で見つけた古物の逸品、珍品を紹介したのが「MADE IN JAPAN 素のものたち」である。既存の価値観にとらわれることなく見出されたコレクションを眺める度に沸々と湧き上がる物欲が旅へと誘う。 
 

京都の中華
姜尚美著/幻冬社文庫(2016年)
割烹式中華から、ボリューム満点中華までを収録した一冊。京都の歴史や風習に合わせて変化してきた味のルーツを探してみよう。

旅先の楽しみのひとつはやはり食事。京都と中華が好きな人間にとって見過ごせないタイトルはずばり「京都の中華」。名店紹介に終わることなく、京都でこそ育まれた中華の歴史的、文化的背景を丁寧な取材で掘り下げた名著。京都に行く楽しみがまた増えてしまった一冊。
 

旅をする木
星野道夫著/文春文庫(1999年)
正確に季節がめぐるアラスカの大地と海。そこに住むエスキモーや白人の単純で陰翳深い生と死を、味わい深い文章で描くエッセイ。

一方、買い物や食べ歩きといった通俗的な旅とおよそ対極にある旅、世界がある。アラスカの自然と動物、そこに暮らす人々の姿を綴った「旅をする木」。極北の自然の美しさと脅威、その自然に向き合い暮らす人々に対する共感と敬意に満ちた筆者の言葉に心揺さぶられずにはいられない。読む度に心地よい風に吹かれたような気分にさせてくれる。

PROFILE

大熊健郎
CLASKAGallery & Shop “DO”(ドー)ディレクター。目黒CLASKA(クラスカ)のリニューアルに携わり、CLASKA Gallery&shop“DO”(ドー)をプロデュース。

●情報は、2019年1月現在のものです。
Photo:Toru Oshima