育児中に描いたエッセイ漫画『ママはテンパリスト』が大ヒット。それ以降も、常に数本の連載を抱え、凄まじい熱量を仕事に注ぎながら、『かくかくしかじか』『海月姫(くらげひめ)』『東京タラレバ娘』等、数多くの話題作を世に送り出してきた人気漫画家・東村アキコさん。

そして、育児の苦悩、実母との確執、夫以外の男性との恋……“良い母親になれない苦悩” を赤裸々に綴ったエッセイ『かなわない』が大きな反響を呼んでいる写真家の植本一子さん。

共に家庭と仕事に向き合い、迷い、悩み、怒濤の毎日を過ごしてきた二人が語る “働く母親のリアル” そして “それぞれの幸せのカタチ”。

FRaU 2016年10月号掲載、漫画家・東村アキコさん × 写真家・植本一子さん 対談<前編>公開。

仕事のキャリアか出産か
二人が下した20代の決断

植本 東村さんの『ママはテンパリスト』は、世の中の育児中の母親達にたくさんの笑いと勇気を届けましたよね。実は私も勇気をもらった母親の一人なんです。

東村 わあ、それは嬉しい‼

植本 ちなみに『ママテン』で数々の爆笑エピソードを披露してくれた、ごっちゃんはいくつになったんですか?

東村 ごっちゃんの好きなお菓子を買って帰ったら「こんなの食べないよ。オレ、もう小4だよ?」と鼻で笑われるという、衝撃の事件が起きたのが去年の出来事……今年で小学5年生になりました。

つい最近も、スマホを見ながらクスクス笑っているから、何を見ているのかと思ったら、YouTubeで赤ちゃんの面白動画を見ながら「かっわい〜♡」って。「こないだまでおまえが赤ちゃんだったのに!?」ですよ。子供の成長は早いですよねぇ。今日なんか一人で留守番してますからね。同級生とオンラインゲームしてますよ、インカム着けて(笑)。

植本 うちは小2の娘と保育園年長さんの娘がいるんですが、小学校に上がると、だいぶ子育ても楽になりますよね。

東村 一番大変なのが2歳前後。母乳の免疫が切れて、やたら熱を出したり、病気をする時期なんだよね。結果、三日と開けずに病院へ。「私、いつも小児科にいる‼」「気づけば、いつもこの待合室‼」みたいな。病室でネームやったり、原稿書いたり……あの頃は大変だった。

植本 わかります。私も当時の記憶がほとんどありませんから(笑)。

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――24歳で25歳年上であるラッパーのECDさんと結婚し出産した植本さん、そして、28歳で結婚・出産した東村さん。ともに20代で母になった二人。20代といえば仕事のキャリアを積む上で重要な時期。「キャリアを積んでから産むのが良いのか」それとも「早く産んで仕事復帰したほうがいいのか」悩む女性はとても多い。それだけに、お二人も “出産のタイミング” について考えることはあったのか、たずねると、こんな答えが。

植本 私、騙されたんですよ……。

東村 え、騙された⁉ 誰に⁉

植本 旦那に騙されたんです(笑)。結婚する前に、旦那に勧められて『オニババ化する女たち〜女性の身体性を取り戻す〜』という新書を読んだんです。その本には “早く子供を産んで、30代で仕事に復帰するほうが、結果的に良い” という内容が書かれていて。その内容にまんまと私は影響されてしまったんです。

親から「25歳も年上の男性との結婚なんて認めない」と反対されていた状況も手伝い「これだ!」と。今振り返ると、その本に書いてあることが全て正しいとは思わないんですけど、そのままの勢いでぶっちぎってしまったという。

東村 ははははは!! 私の場合は、子供が漠然と好きだったし、普通に「いつか子供が欲しいな」とホワンと夢見ている感じだったんですけど。20代の頃って、やっぱり仕事を頑張りたい時期でもあるから。「今は結婚も出産もせず漫画に集中しなきゃ」と思っている自分もいて。

そんなとき、漫画家さんが集まるパーティーでお会いしたのが藤末さくら先生だったんです。当時、藤末先生は若くして二人のお子さんを出産、育児をしながら人気連載も抱えていて。「結婚もしたいし、子供も欲しいけど、全ては仕事がひと段落してから」、そう考えていた私に「ひと段落なんて一生しないよ」という一言を投げ掛けてくれたんですよ。

「ひと段落するどころか、キャリアを積めば積むほど仕事は忙しくなる。子育ては体力勝負。相手がいるのであれば、体力があるうちに一日でも早く産んだほうがいい」と。その言葉に触発されて、私は意識的に子供を作り出産したんです。