自分へのご褒美旅に、おいしいメニューを食べてそのまま眠りにつきたい。そんな旅のすみかにぴったりの珠玉の宿をセレクト。身も心もゆったりとあたためてくれる宿で、冬の味覚の旅を楽しもう。今回は、地元産にこだわった食材を、新しい感覚で味わえる「松本ホテル花月」をご紹介。
長野・松本の食材に導かれて
生まれる、新しい味
松本ホテル花月
ア・ラ・モード。脂がのった戻りカツオをマリネして低温調理。長野県産の黒ニンニクをアクセントにした、現代風カツオのたたき。
「ながのテロワール」をテーマに、松本と長野全域の食材を味わうための新しい料理を提供するのは、創業から130年を数える「松本ホテル花月」のレストラン「I;caza [ikaza]」(イカザ)。ここでは、アラン・デュカスに愛される気鋭の料理人・上野宗士シェフが監修を務め、須崎武シェフが現場で腕をふるう。 デザートにもリンゴを使用。 花月塩どら焼き。そば粉のパンケーキに、ウサギのリエット、小豆を炊いたものをサンド。そば粉、ウサギ、 小豆も長野県産。
そば粉、リンゴ、ブドウ、キノコ、などの農作物にとどまらず、ジビエやワインも、地元産にこだわって徹底セレクトしている。 おやきをイメージして信州茸とフランス茸を合わせ、コンソメスープに。 ワタルガニと名付けられた一皿。タラバカニ、毛ガニのメレンゲとシードルのジュレが美味。
信州の食材に導かれるように新作を生み出す須崎シェフの料理は、遊び心も愛情もたっぷり。ソムリエがすすめる長野県産ワインとの相性は、もちろん抜群だ。
客室はシングル、スイート、和室まで89部屋。
「八十六温館」はホテルの外からも常連が通う喫茶室。
明治時代から続くこのホテルが大きく生まれ変わったのは、2016年の春のこと。ホテル外装の建築デザインに永山祐子氏、インテリアデザインに濱川秀樹氏を迎え、増改築を重ねてきた建物を時代ごとにリ・デザインした。モノトーンで3色に塗り分けられた外観は、レトロな可愛らしささえたたえて、歴史的建造物の多い街の景色にしっくりと馴染む。ホテルの中は、漆喰の壁やステンドグラスが調和して、明治〜大正のロマンを感じさせてくれる空間になった。ロビーラウンジ、レストラン、喫茶室、客室まで、いたるところに置かれ、使われている松本民芸家具は、年を経て飴色に艶めく美しき主役だ。
ロビーの大きなソファに身を委ねて、この土地ゆかりの本のページをめくったり、古い写真や看板が展示されたギャラリースペースで、ホテルの歴史に思いを馳せたり。素朴さと実用の美に裏打ちされた空間で「民藝フィロソフィ」を体感する、心地よいひとときを。
松本ホテル花月
長野県松本市大手4-8-9
☎0263-32-0114
本館ツイン1泊2食付(1名)¥19980~(2名1室利用時)
●情報は、FRaU2018年1月号発売時点のものです。
Photo:Koichi Tanoue Text:Hikari Torisawa Composition:Tomoko Ogawa