『妻のトリセツ』を結婚式の引き出物に選んだ、ある新婚夫婦の物語

デジタル時代のアナログな広がり
中丸 謙一朗 プロフィール

SNS時代だからこそ

自身の著書が、晴れの日の引き出物として選ばれることとなった、脳科学専門家の黒川伊保子さんにお話を伺った。

「私はこれまで夫婦のことや男女のコミュニケーションのギャップについての著書が多いので、新郎さんにその本を送ったとか、夫婦で読みましたという声を多くいただきます。実はわたしも先日、“新郎の母”という経験をしたばかりなのですが(笑)、今回のお話はほんとうにうれしいことです。

 

結婚されたご当人たちや若いお友達だけではなく、長く夫婦生活を営まれてきた参列者の方もこの引き出物を読んで、あらためて自分たちの結婚生活の道のりに思いを馳せられたのではないかと思います。

『そうよ、あなたが悪いのよ』、『そうだったな』なんて、ちょっとした昔話でもしていただけたら、著者として少しはお役に立てたのかなと思います」

黒川先生

脳科学からアプローチする夫婦コミュニケーション論には、理系出身のご主人(著者と同じく大学の理学部物理学科卒業)もおおいに納得。ご夫婦で本書を読み合いながら、「あるある」「そういうところあるかもね」などと楽しく話し合えたという。

新婚のふたりが『妻のトリセツ』を読みあうことの意味について、黒川さんはこう付け加える。

「この本のなかで説いた、妻が感じる“日々積み重ねていく小さな絶望”と、“折々の大きな絶望”は、すべての夫婦に起こることです。新婚のころからそれを知っておくと、その累積が少なくて済みます。ひとは一度読んだだけでは忘れてしまうもの。できれば記念日のたびに読み返したり、ケンカの仲直りのきっかけにしていただけたらと思います。

昔はどこの家庭にも一冊、『家庭の医学』という本が置かれていました。それと同じように『妻のトリセツ』も、どこのご家庭にも一冊が常備されればと本気で思っているんですよ(笑)」

本は情報であると同時に、思いや希望を運ぶメディアにもなる。講談社販売部の田中光さんはこのように分析する。

「『妻のトリセツ』は引き出物として使われた以外にも、あるシンクタンクから会員に配布するために数百冊を一括購入いただいたこともありました。

書籍というのは単に書店で個人が買って楽しむ以外にも、贈り手からのメッセージや気持ちをそれに込めたり、美意識や思想を伝えるためになど様々な使われ方があるのだと再認識しました。

これからはいち読者として楽しむだけでなく、大切な人にプレゼントしたり、ネットなどで自分が読んだ本の感想や、そこから考えた思いを発信・共有してほしいですね。

デジタル社会が進む現代だからこそ、周りと繋がっていくためのコミュニケーションツールとして書籍が売れていくのではないかと期待しています」

SNS花盛りの時代。結婚式を前に父親から薦められた、“夫婦”にまつわる本に対する「いいね」という思いが、予想もせぬかたちで広がった小沢さん。

「熊本で人知れずにやっていたことが、東京で注目されたのはびっくりしました。これからなにかあったら、この本をそっと彼の側に置いておこうと思います(笑)。

これから長い結婚生活が続いていきますが、原点に立ち返る時にこの本があると心強い。ほんとうにいい思い出になったと感じています」

(協力・杉田写真館)