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ある在日コリアン女性に降りかかった「親族分断」の悲劇

叔母が亡くなっても、連絡がないなんて

叔母の孤独な死

大阪市阿倍野区の霊園で、ひとりの女性が涙に暮れていた。

目の前には、亡くなって身元の分からない人々が埋葬されている無縁仏の碑が立っている。その下に長年、女性の家族が行方を探し続けてきた叔母が埋葬されているのだ。

叔母の死に直面しショックを受けた女性だったが、その心境は悲しみだけではない、もっと複雑なものだった。

ここに埋葬された叔母には、近くにきょうだいもたくさんいた。身寄りの確認がそれほど難しかったとは思えない。

しかしお骨を引き取ろうにも、ほかのいくつもの無縁仏とともに合葬されたいまは、叔母のそれを特定することは不可能になってしまっていた。

「なぜ役所は、叔母が亡くなったことを私たちに知らせてくれなかったのでしょうか。叔母が日本人だったら、こんなことにはならなかったのではないでしょうか」

女性は声を震わせると、また涙を流すのだった――。

 

改正・出入国管理法がこの4月に施行され、新たな在留資格のもとに外国人労働者の受け入れが拡大される。だが、同法が拙速に国会を通過したと批判されるように、日本の受け入れ態勢が整っているとは言い難い。

2017年に失踪した外国人技能実習生は、7000人を超える。そうした中、不幸にして亡くなった外国籍の人々の身元確認が正常に行われているのか、疑念を持っている女性がいる。彼女の叔母は、その死を親族にも一切知らされないまま、無縁仏として葬られてしまったのだ。

なぜこのようなことが起こったのか?

母に「探して欲しい」と頼まれて

現在50代の細野礼子さん(仮名)は、日本人の父と戦前生まれの在日韓国人2世の母との間に生まれた。彼女自身は生まれたときから日本国籍を持っている。

亡くなった叔母は途中、国籍を朝鮮籍から韓国籍に変えたが、在日朝鮮・韓国人として人生を終えた。

細野さんの母方の祖父は1904年生まれ。日本統治下の済州島から日本に渡ってきたのは16歳のころだったという。大阪の鶴橋の集落に居を構え、結婚して子宝にも恵まれた。一家は鶴橋一帯のコリアンタウンで商売をはじめ、そのコミュニティで生き生きと暮らしてきた。

2009年のある日、細野さんは母から「音信が途絶えていた叔母を探して欲しい」と頼まれる。ガンを患った母は、老い先を考えたのか、心残りとなっていた妹のことを思い出したのだった。

細野さんが言う。

「叔母はある日、祖母に暴言を吐き、それを母が激しく咎めました。叔母はそれ以来、実家に寄り付かなくなってしまい、やがて行方が分からなくなってしまいます。母は叔母をそんな状況に追い込んだことを悔いていたのかもしれません」(以下、断りのない「」は細野さんの発言)