三島由紀夫原作、東出昌大さん主演の舞台『豊饒の海』で、初共演する首藤康之さんと宮沢氷魚さん。バレエダンサーとして、世界的振付家の作品に数多く出演し、国際ダンスフェスティバルなど、海外公演にも多数出演する首藤さんと、大学2年間をカリフォルニアで過ごした宮沢さんは、いざ “旅” の話になると、相手の冒険心を刺激し合うことに……。

 
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長く東京に住んで、
公演で世界中を回っても、
一番落ち着く場所は故郷(首藤)

――10代の頃から、バレエの公演で全世界を回っている首藤さんですが、お仕事以外で旅に出ることはありますか?

首藤:ごく稀に、ですね。1年に1回か、2年に1回ぐらい。行き先はニューヨークが多いです。休みが取れたとして、せいぜい1週間か10日だし、僕の場合は、レッスンをする場所がないとダメなのでなかなか長期間の旅には出られません。でも、仕事でヨーロッパはあちこち回っていました。

 
――仕事でヨーロッパを回る時の楽しみは? 

首藤:ヨーロッパ、特にイタリア、スペイン、フランスなら、どんなに小さい街でも、必ず劇場があって、街に住んでいる人たちは、その劇場が世界一だと思っている。

イタリアで、劇場までの行き方がわからなくて、バールなんかに入ると、もうお客さんから店の人から全員で集まって、あっちだこっちだって教えてくれるんですよ。街と劇場がつながっているところが、ヨーロッパは素敵だなと思う。観にくる観にこないは別にして、その劇場で今日何をやっているか、街の人が全員知っていたりしますからね。

公演が終わった後も、あちらでは20時~21時開演が普通なので、終演も22時~23時と遅いんですが、レストランに行っても、公演を観にきていたお客さんからイタリア語でバーッてまくしたてられたりします。たぶん感想を伝えてくれてると思うんですが、何を言っているかはわからない(笑)。

 
――表現者ならではの体験ですね。

首藤:プライベートで行くのは、どうしてもダンスレッスンが毎日できるニューヨークになってしまいますね。友達もいるので。オープンクラスでレッスンをして、劇場でバレエや舞台を観たり。とにかく劇場が好きなんです。
 

――宮沢さんがアメリカにいたのは、何年ですか?

宮沢:2年です。

 
――その間に旅行は?

宮沢:ボロボロの、安い中古車を買って、2週間ぐらいロードトリップをしたことが、とてもいい思い出です。カリフォルニアは広いので、2週間でネバダ、アリゾナを回ったら、やることといえばほぼ運転でした(笑)。友達と交代しながら、1日8時間ぐらい運転して。

ロードトリップのために買った車とはいえ、その2週間の旅で車がダメになりました(笑)。それくらい、過酷な旅だったんです。デスバレーの砂漠の道を走っているときに、最高で気温が55度になったこともあります。

首藤:で、夜になると急に寒くなるんだよね(笑)。

宮沢:そうなんです! 見たこともない虫にも遭遇しました。デスバレーって蝉くらいの大きさのハエがいるんです。最初、蜂かなとおもったんですが、現地の人にきいたらハエで。そういう、未知との遭遇が多かったです(笑)。ほかには、グランドキャニオン、セドナ、ヨセミテを回って。

首藤:国立公園ばっかりだね(笑)。

宮沢:僕は、人もいない、アミューズメントも何もない、ただ自然しかない、みたいな場所が結構好きなんです。ただ、山を眺めているだけで、すごく身体の中にエネルギーが湧いたり、余計なものが排出されてリセットされたり、癒やされたり、無になれたりするんです。

カリフォルニアの旅でも、一緒にいた友達と山に登って、太陽が移動して、日の感じで景色が変わっていくだけの大自然の中で、何時間も過ごしていました。もちろん、その前後では面白い虫や動物と出会ったり、現地の人と話をしたりはしたんですが。

自然が好きですね。大学の卒業論文も、東京都内の川の環境変化について書いたくらい(笑)。明治から平成にかけて、東京の川がどう変わっていったかを研究して、まとめました。

 
――そういう勉強はどういう学科で?

宮沢:分類するとしたら環境学ですね。

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――セドナはパワースポットと言われています。

宮沢:(パッと顔を輝かせて)まさにパワースポットでした。具体的に説明は出来ないんですけど、セドナには、何かあると行きたくなる。身体がセドナを欲している感じがあるので。

……ということは間違いなくセドナで何かを得たか、何かを吸収したんだろうな、と。もちろん、あそこをパワースポットと思うかどうかは、人によると思うんですが。

 
――今も行きたくなるんですか?

宮沢:はい。でも、なかなか機会がなくて……。この間夏休みを頂いて、久しぶりにアメリカに行ったんですが、セドナに行くには1週間はみないとダメなんですよ。日本からだと片道3日はかかるので、諦めました。

パワーダウンしているなって思うときは、ロードトリップをしたときに撮った写真を見て、セドナを思います(笑)。

首藤:シュールだね(笑)。

宮沢:ふふ。いつか子供ができたら、絶対に連れて行きたいです。

首藤:そんなに目をキラキラさせながら話されると、行ってみたくなりますね。僕は東海岸ばかりだけど、西海岸のそういう話を聞くと、同じ国なのに印象が全然違う。アメリカってそういう大きさがありますね。

宮沢:ずっと東京にいると、人がいないところに行きたくなるんです。人の目を気にせず、自分のことだけを考えられる時間が欲しくなる。“自分の時間を持つ” って、人によってアプローチは違うと思うんですけど。僕は、大自然に触れたい派です。

 
――氷魚さんは、お母様が、アメリカと日本のハーフなんですよね?

宮沢:はい。でも祖母はアイルランド人です。それもあって、今一番行きたいのはアイルランドです。まだ行ったことがないので、今度お休みが取れたら思い切って行こうかなって。

首藤:アイルランドのフェスティバルに出演するために、訪れたことはありますよ。自然も豊かですが、劇場もあります。世界的な詩人や劇作家、ミュージシャンなんかも多数輩出しているし、若者がすごく元気で。ダブリンなんか、すごく素敵な街ですよ。美味しいお酒もいっぱいあるし(笑)。

 
――では氷魚さんは、次は自分のルーツを辿る旅がしてみたいんですね。ところで、お父様の宮沢和史さんは、海のない山梨の出身なのに、沖縄の島唄に触発されて、オリジナルの「島唄」を作って、それが南米の国でカバーされたりもしています。少し強引なこじつけかもしれないですが、そうやって、異文化への憧憬を自分の表現に昇華してくことは、今回の『豊饒の海』の演出家であるマックスさんが、英国人でありながら、日本文学の金字塔的な作品に挑む行為と通じるものがあると思います。

首藤:「島唄」がカバーされて大ヒットしたのは、アルゼンチンですね。あそこも、南米の中ではヨーロッパ的な雰囲気の漂っている国です。ブエノスアイレスには、テアトロ・コロンという世界三大劇場の一つとされる劇場もあります。日本から行くとなると、すごく遠いですけど。

 
――首藤さんは、氷魚さんにとってのセドナのような、折に触れて行きたくなるような場所はありますか?

首藤:故郷の大分かな。今は両親も住んでいないので、里帰り、という感覚ではないんですが。帰ると落ち着きます。海も山もあって、自然が豊かなんです。

PROFILE

首藤康之 Yasuyuki Shuto
1971年生まれ。大分県出身。15歳で東京バレエ団に入団。19歳で主役デビュー。数々の古典作品から、モーリス・ベジャール、イリ・キリアン、ジョン・ノイマイヤー、マシュー・ボーンなど、世界的振付家の作品に数多く出演。2004年の東京バレエ団退団後も、シディ・ラルビ・シェルカウイ、中村恩恵、串田和美、白井晃、長塚圭史など、国内外の振付家・演出家の作品に多数出演。自らプロデュース公演も手がける。ピナ・バウシュが芸術監督を務めるNRW国際ダンスフェスティバルなど、海外公演にも多数出演。近年は映画、テレビドラマにも積極的に出演し、表現の幅を広げている。2012年、第62回芸術選奨文部科学 大臣賞受賞。2019年 1月、白井晃演出の舞台「出口なし」に出演。http://www.sayatei.com

宮沢氷魚 Hio Miyazawa
1994年生まれ。米カリフォルニア出身。幼稚園から高校までをインターナショナルスクールに通い、2015年、第30回MEN’S NON-NO専属モデルオーディションで、グランプリを獲得。同年10月よりMEN’S NON-NOの専属モデルを務める。日本では、国際基督教大学に編入し、2017年 3月卒業。俳優としては、2017年ドラマ「コウノドリ」で俳優デビューし、ドラマ「トドメの接吻」「R134/湘南の約束」などに出演。2018年 7月、東京芸術劇場で上演された舞台『BOAT』(演出は劇団「マームとジプシー」主宰の藤田貴大)で初舞台にして初主演を務める。

INFORMATION

舞台『豊饒の海』

「又、会ふぜ。きつと会ふ。」という言葉を残し、20歳で生命を落とした男、松枝清顕。彼を生涯追い求める男、本多繁邦。そして本多の前に清顕の生まれ変わりとして登場する人々。三島由紀夫が約6年の歳月を費やした “世界解釈の小説” が初の舞台化。

脚本:長田育恵
演出:マックス・ウェブスター
出演:東出昌大、宮沢氷魚、上杉柊平、大鶴佐助、神野三鈴、初音映莉子、大西多摩恵、篠塚勝、首藤康之、笈田ヨシほか
2018年 11月3日(土・柷)〜12月2日(日)、紀伊国屋サザンシアターTAKASHIMAYAにて上演。☎03-3477-5858(パルコステージ)

 
Photo:Jihyun Shin Inteview&Text:Yoko Kikuchi

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