マラソンブームを牽引し、ヘルシーなライフスタイルを日本女性に示してくれた長谷川理恵さん。トレーニングにストイックに取り組んだ時期を経て今は、マイペースにカラダと向き合いながら、さらに世界を広げている。
好きなことに没頭できる
動けるカラダでいたい
『CanCam』の専属モデルとしてデビューした大学時代。当時は「ガリガリでなければモデルではない」という固定観念に縛られていた。「極度に痩せているスーパーモデル全盛の時代。食べるのが怖かった」と打ち明ける。それが20代後半、ランに出合い、カラダへの意識が激変する。
「汗をかく爽快さや食べ物の美味しさを初めて知りました。もう体内の全細胞が入れ替わった感覚! タイム更新という目標を持てたのも大きかったですね。それまでは、専属モデルとしてさほど努力もせずなんとなく敷かれたレールの上を歩いていただけ。ランに出合ってなければ、とくに生きがいも見つけられないまま、年を取ったら引退、だったでしょうね」
フルマラソン3時間15分という素晴らしい記録を出したが、出産後、ランスタイルにも変化が。
「今は、レースやタイムが目的ではなく、毎日は無理でも、自分のペースで走るのがいいかなって。『今日は90分、いい感じに動いてくれたね』ってカラダと対話しながら、鎌倉の海沿いを走っています」
実は出産後、カラダを動かす気にすらなれない時期があった。病院で調べると、甲状腺ホルモンの分泌量が低下する病気が判明。
「夜中に何度も目が覚めちゃうし、朝起きてからずっとだるくて……。走ったほうがカラダの巡りがよくなるとわかっていても、まったく走る気になれなくて。そんなときに知ったのがWabiYoga(侘びヨガ)。茶道の所作をベースにしたもので、派手な動きはないんですが、じわじわ体幹にきます。自然の中のお茶室も、気持ちを解放するのにもってこいの空間ですね」
始めたら、とことん突き詰める性格。WabiYogaはインストラクター資格を取得。息子に卵と乳製品のアレルギーが見つかったことから始めたヴィーガンスイーツ作りも、今やフランス一流パティシエとコラボするほどの腕前に。
「ランも、WabiYogaも、パティシエの仕事も、ほんとうに好きだから没頭できるんです。大好きなことを続けていくためにも、ずっと動けるカラダでいたいですね」
茶道がベースの
WabiYogaで精神統一
WabiYogaのインストラクターとして、鎌倉で年4回、生徒に教える。お稽古の終わりには、お茶もふるまう。
「生徒さんたちは働いている女性がほとんど。カラダがこわばっている人が多いので、力みを取るところから始めます。最後はふわっとお顔も明るくなるんですよ」
パティシエとしての
キャリアもスタート!
理恵さんが目指すのは、「ヴィーガンだとはわからないくらい、見た目も美しく、純粋に美味しいスイーツ」。
この春、フランスパティシエ界の巨匠アルノー・ラエール氏とコラボし、東京・広尾のお店で販売された理恵さんオリジナルレシピのスイーツも大好評だった。
PROFILE
長谷川理恵 Rie Hasegawa
1973年、神奈川県生まれ。モデル。2000年よりホノルルマラソンに8年連続出場するなど、ランブームのアイコン的存在に。野菜ソムリエなどの資格を持ち、食に関する知識も豊富。現在は、夫と6歳の息子と鎌倉に暮らしながら、ヴィーガンパティシエとしても活躍中。9月に開催されるダイナースクラブフランスレストランウィークでは、パリの「アラン・デュカス・オ・プラザ・アテネ」のシェフパティシエとのコラボデザートを、ラ・ターブル・ドゥ・ダイナースクラブ@ミーレとガラディナー(東京)にて提供予定。
●情報は、FRaU2018年10月号発売時点のものです。
Photo:Masaru Furuya Hair&make-up:Risa Yamaguchi(+nine) Text:Sakiko Koizumi