「育った環境が特殊すぎるんです(笑)」村上虹郎が大事にしている“縁”

プロデューサーの奥山和由さんは、この映画について、「やっと自分の分身と言える映画をプロデュースできました」と語った。20年以上前、奥山さんは故・深作欣二監督の『いつかギラギラする日』や、石井隆監督の『GONIN』などのプロデュースを手掛け、日本のアクション映画にどこか渇いた、スタイリッシュな風を吹き込んだ。

奥山さんが、“100年に一人の天才” と語る村上虹郎さんが主演を演じた映画『銃』。原作は、芥川賞作家・中村文則さんのデビュー作である。安藤サクラさんが主演した『百円の恋』で、日本アカデミー賞をはじめ数々の映画賞を受賞した武正晴監督がメガホンを取り、虚無・退廃などを描くフィルム・ノワールの雰囲気を踏襲しながらも、若者の純粋な “青春の揺らめき” を描くことに成功。静かで、切実で、哀しく、でも余韻として希望の光が残るような、懐かしくも新しいアクション映画が誕生した。

僕は、俳優というより、
ミュージシャン気質かもしれない

――ジャンルとしては、アクション映画に分類されると思うのですが、肉体で表現するアクションというより、一人の若者の精神のアクションというか、日常の中に潜む葛藤が丁寧に描かれています。モノクロームの映像に、行間というか余白があって、とても文学的だなと思いました。かなりの意欲作というか、チャレンジングな作品です。最初は、どんな形で村上さんにオファーがいったんですか?

村上:プロデューサーの奥山さんから、直接お話をいただいたんです。奥山さんとは、3年前に東京国際映画祭のときにお会いしました。ちょうどその年末に、「書を捨てよ町へ出よう」という作品で初舞台を踏んだ時に、共演者の方から、「この本に出てくるトオルって、虹郎っぽいんだよね」と言われて渡されたのが、『銃』。読んではいなかったんですが(笑)、奥山さんから、「『銃』のトオルをやってほしい」と言われて、「あ、これは運命だな」って思ったんです。

 
――すごい偶然ですね。

村上:そうなんです。僕は普段から、縁というか巡り会わせみたいなものは、できるだけ大事にしたいと思っていて……。全く別の人が、一つの小説を読んで、僕をイメージしてくれたんだから、断る理由は何もなかった。

映画って、たくさんの人が関わるものだし、大勢の人が心を一つにするためには、求心力のある大人の情熱って必要不可欠なものだと思うんです。奥山さんのように信頼できる人が情熱を持って、「この役を是非」って言ってくださったのは、素直に嬉しかったです。

 
――武監督からは、お芝居について何かアドバイスはありましたか?

村上:それが、全くなかったんです。あとで奥山さんに聞いたところ、僕とリリー(・フランキー)さんに関しては「野放しにしろ!」って指示を出していたらしい(笑)。事前にかなりの鬼監督だと伺っていたので、さぞ怖いんだろうと思っていたら、演出を付けられることがほとんどなくて、拍子抜けしました。

でも、リハーサルは入念だったかな。それも有り難かったですね。僕自身、リハーサルを重ねることであらたに役を掴める瞬間って必ずあるので。

 
――そうやって掴んだトオルとは、どんなキャラクターだったんでしょう?

村上:今回は、とくに奇をてらうこともなく、自分の中では真っすぐ演じたつもりです。『銃』に関して、攻めている部分があるとすれば、観てくださる人に対して、一切サービスをしなかったことですね。

 
――サービスをしなかった?

村上:もしこれが、エンタテインメントを重視するドラマだとしたら、もっと、“こういうふうに顔を動かしたら、こう見えるだろうな” とか、自分の芝居がもたらす作用みたいなものを考えてしまったと思うんです。

テレビって、日常の中にポンって置かれている機械に過ぎないし、いつチャンネルを変えるかもわからない。凝視されない分、表情のインパクトっていうのが大事になってくる。でも、今回は、ただぼんやりと生きている “トオル” という役の生態を僕が覗いているような、そんな感じでした。ただ、“俺はここにいる” “俺はこうやって生活している” っていう、一人の男の普通を提示しただけのような。

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――なるほど。河瀨直美監督の『2つ目の窓』でデビューしたのが4年前ですが、常に、村上さんにしか演じられない役と出会っている印象です。

村上:プロデューサーではないですし、自分でそういう作品を見つけにいってるわけじゃないんですけど(笑)。作品に関しては、出会いだから。人との縁も含め、全ては、出会いの積み重ねなんじゃないかな。自分でも本当に、作品には恵まれてるなと思います。

 
――それにしても、取材をするたびに、村上さんのコミュニケーション能力の高さに驚かされます。プロデューサー、監督、共演者、スタッフの方から愛されるキャラクターだからこそ、いい縁を引き寄せるんだろうな、と。

村上:マンツーマンのコミュニケーションは得意な方かもしれないですが、相手がマスになった時は、伝えることの難しさを痛感します。僕、たぶん育った環境が特殊すぎるんです(笑)。基本、ミュージシャンの母親に育てられたので、僕も俳優というよりミュージシャン気質なんだと思います。

コミュニケーションの取り方も、普段はものすごくフィーリング重視というか。ラフで、陽気で、外国人気質。両親からは、「お前は言葉足らずだ」と言われるのですが、その一方で、仕事で出会った人からは、「おしゃべりだね」と言われて……。“なんでだろ?” と考えると、身内なら一言で伝わるニュアンスが、実は、正確に理解してもらうためには、いろんな言葉を引用する必要があるんだってことに気づいたんです。

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PROFILE

村上虹郎 Nijiro Murakami
1997年生まれ。東京都出身。カンヌ国際映画祭コンペティション部門出品『2つ目の窓』(14年/河瀨直美監督)で主演を務め、俳優デビュー。主な出演作に、映画『ディストラクション・ベイビーズ』(16年/真利子哲也監督)、『武曲MUKOKU』(17年/熊切和嘉監督)、『ハナレイ・ベイ』(18年/松永大司監督)、ドラマ「あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない」(15年/フジテレビ)、「仰げば尊し」(16年/TBS)、「この世界の片隅に」(18年/TBS)、舞台「シブヤから遠く離れて」(16年)など。19年の公開待機作に『チワワちゃん』(二宮健監督)。19年 5月には、Bunkamuraシアターコクーンでの舞台「ハムレット」にフォーティーンプラス役での出演が決定している。

INFORMATION

映画『銃』

©吉本興業

雨が降りしきる河原で、思いがけず拳銃を拾った大学生のトオル。友人たちと青春を謳歌しながら、内では次第に銃に魅了され始め、ついに大切に保管していた銃を持ち歩いてみることに。同じ大学に通うヨシカワユウコに興味はあるものの、銃は彼の中で圧倒的な存在感を占めるようになる。そこへ、突然の刑事の訪問。精神を追い詰められていくトオルは、あることを決意するが――。ヨシカワを演じるのは広瀬アリス。刑事にリリー・フランキー。

監督:武正晴(『百円の恋』)
脚本:武正晴・宍戸英紀
原作:中村文則「銃」(河出書房新社)
出演:村上虹郎 広瀬アリス リリー・フランキー
企画・制作:奥山和由
配給:KATSU-do 太秦
©吉本興業
 
2018年 11月17日(土)、テアトル新宿ほか全国ロードショー
http://thegunmovie.official-movie.com/

 
Photo:Jihyun Shin Styling:Tsuyoshi Nimura(littlefriends) Hair&Make-up:TAKAI Interview&Text:Yoko Kikuchi

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