村上虹郎「自分の中にも一種の “闇” はあります。でも、根はハッピーな人間」

名プロデューサーの奥山和由さんが、「自分という精神の生存競争を表現できた、そんな奇跡を感じたのは、『ソナチネ』以来だ」とコメントしたほどの会心作『銃』。

物語の主人公トオルは、雨が降りしきる河原で、思いがけず銃を拾う。やがて銃はトオルの中で、圧倒的な存在感を占めていく――。銃の魅力に捉われ、支配され、徐々にその内面に狂気が満ちていくという難役を、魅力たっぷりに演じた村上さんは、表現の中に滲ませる “影” とは裏腹に、根は陽気な外国人気質。芝居だけでなく、その旅の味わい方も個性的でアーティスティックなのだった。

 
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日本をもっと好きになるために、
海外に行くと言っても過言ではない

――映画『銃』の魅力は、現代の東京に生きる若者の心情をリアルに描きながら、とても古典的で、普遍的で、根源的なテーマを、映像がきっちり掴んでいることです。ほとんどのシーンを敢えてモノクロームにした手法も効いています。

村上:先日、原作者の中村文則さんともお話させてもらったのですが、この作品を書いている時、カミュの「異邦人」や、サルトルの「嘔吐」、あとはドストエフスキーの「罪と罰」を意識していたそうなんです。

銃を手にするという状況は特殊だけれど、“自分は無力ではない” と “自分は無力だ” という感情の間で揺れることは、若い時は誰にでもあることですし、“この閉塞的な世界をどうにか生き抜きたい” と願う、生への無意識の執着を描くことって、いつの時代も普遍的なテーマですよね。

この映画も、誰もがトオルに共感できるわけじゃなくても、“もし自分だったら” と想像するきっかけには、なるんじゃないかと思います。

――村上さんは、たくさんのクリエイターから、今この時代の若者の持つ鬱憤や空洞感、満たされない部分の表現を、託されているような気がします。

村上:ふふふ、満たされていないように見えるんですかね。でも、ここ1年は、ドラマの「この世界の片隅に」の水兵さんみたいに、未来への希望を託される役が増えた気がします。

実は、今回の映画『銃』だって、絶望の中に希望を描いている。トオルは、死の象徴みたいな役ですが、広瀬さんが演じるヨシカワユウコは、原作にない台詞を中村さんが書き下ろしてくださって。彼女が、希望を感じさせてくれる存在になっています。

 
――それに、素顔の村上さんは、ご自分でもおっしゃっていましたが、外国人気質の、陽気なキャラクターですよね。そのギャップにも救われます。

村上:もちろん、自分の中にも一種の “闇” はあります。でも、根はハッピーな人間(笑)。

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――では、旅のお話も伺わせてください。プライベートで旅は行かれますか?

村上:今年は台湾とイギリス、去年はベトナムとカンボジアに行きました。イギリスは仕事でしたが。

 
――旅行先はどうやって決めるんですか?

村上:その国ならではのカルチャーがある、アジアの国が好きですね。日本って、本来すごくユニークな独自のカルチャーを持っているのに、街並みにしてもファッションにしても、西洋化するだけで、すごく単調に感じてしまう(苦笑)! フォトジェニックじゃない! でも、アジアには、自国の文化を大切にしている国がまだたくさんあると思うんです。

 
――写真を撮る人の観点ですね(笑)。

村上:グローバル化はいいと思いますが、西洋の真似をする必要なんてないのにな、って。

 
――じゃあ、日本国内では、神社仏閣を訪れたりするのは好きなんですか?

村上:メチャクチャ好きです。特に、日本の歴史や神社の由来に詳しいわけじゃないですが……。でも、こんなこと言ってますが、僕、海外から帰るたびに、「日本っていいよな〜」って思うんです。

日本の没個性化を嘆くのは、日本が好きすぎるから。食べ物は特にそう。海外に行くといつも、和食に勝るものは絶対ないな〜と思う。和食以外でも、日本で食べるものって、イタリアンだろうが中華だろうがフレンチだろうが、全部おいしいじゃないですか。

 
――カナダの高校に留学経験もある村上さんが言うと、説得力があります。プライベートでの台湾旅行はいかがでしたか?

村上:男二人だったので、台湾に行く日本人のほとんどが女子だってことを知って愕然としました(笑)。台湾でいいなと思ったのは、お茶の文化を大切にしていること。台湾には台湾茶を楽しめるお店がいっぱいあるのに、なんで、日本の喫茶店は日本茶を楽しめないんだろう?って、新たな疑問が湧きましたけどね。

だって玉露って、コーヒーや紅茶よりもカフェインが高いんですよ! コーヒーをがぶ飲みしながら、眠い目をこすって仕事するぐらいなら、玉露を飲めばいいのに。僕は、コーヒーも紅茶も好きだけど、日本茶のメニューが充実している喫茶店がもっと出てきてほしいって思いました。

 
――アツいですね(笑)。

村上:海外に行くと、そんなことばっかり考えてしまいます。外国の文化に刺激されて、もっともっとディープな日本の良さを掘り起こしたくなる。だから僕の場合、日本をもっと好きになるために海外旅行に行くと言っても過言ではないです(笑)。

PROFILE

村上虹郎 Nijiro Murakami
1997年生まれ。東京都出身。カンヌ国際映画祭コンペティション部門出品『2つ目の窓』(14年/河瀨直美監督)で主演を務め、俳優デビュー。主な出演作に、映画『ディストラクション・ベイビーズ』(16年/真利子哲也監督)、『武曲MUKOKU』(17年/熊切和嘉監督)、『ハナレイ・ベイ』(18年/松永大司監督)、ドラマ「あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない」(15年/フジテレビ)、「仰げば尊し」(16年/TBS)、「この世界の片隅に」(18年/TBS)、舞台「シブヤから遠く離れて」(16年)など。19年の公開待機作に『チワワちゃん』(二宮健監督)。19年5月には、Bunkamuraシアターコクーンでの舞台「ハムレット」にフォーティーンプラス役での出演が決定している。

INFORMATION

映画『銃』

©吉本興業

雨が降りしきる河原で、思いがけず拳銃を拾った大学生のトオル。友人たちと青春を謳歌しながら、内では次第に銃に魅了され始め、ついに大切に保管していた銃を持ち歩いてみることに。同じ大学に通うヨシカワユウコに興味はあるものの、銃は彼の中で圧倒的な存在感を占めるようになる。そこへ、突然の刑事の訪問。精神を追い詰められていくトオルは、あることを決意するが――。ヨシカワを演じるのは広瀬アリス。刑事にリリー・フランキー。

監督:武正晴(『百円の恋』)
脚本:武正晴・宍戸英紀
原作:中村文則「銃」(河出書房新社)
出演:村上虹郎 広瀬アリス リリー・フランキー
企画・制作:奥山和由
配給:KATSU-do 太秦
©吉本興業
 
2018年11月17日(土)、テアトル新宿他全国ロードショー
http://thegunmovie.official-movie.com/

 
Photo:Jihyun Shin Styling:Tsuyoshi Nimura(littlefriends) Hair&Make-up:TAKAI Interview&Text:Yoko Kikuchi

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