山陰地方には、昔から個性をもった小さな窯元が多く点在していて、器好きにとっては憧れの地。素朴で大らかで、普段の暮らしに映え、実用性に富んだ器たち。今回は、鳥取の窯元を紹介します。
緑濃い風光明媚な山里に、ぽつりと炎が上がる。そんな昔話の世界のような、鳥取の窯元。普段の暮らしを豊かにしてくれる、使い勝手の良い器が揃っています。
白・黒・緑の3色カラーが
チャームポイント
因州・中井窯
切立汁碗 各¥4300、ぐい呑大¥2200/SML ☎03-6809-0696(因州・中井窯)
江戸時代よりつづく牛ノ戸焼の脇窯としてはじまり、民藝運動の影響を受けて、新作民藝に取り組んだ窯元。
その後、工業デザイナーである柳宗理のディレクションにより、デザイン性に富んだ新しい器が次々と誕生しました。白・黒・緑の釉薬を掛け分けたモダンなスタイルが特徴的です。
異国情緒を感じさせる
無国籍な佇まいも魅力
岩井窯
4寸丸皿 各¥4000、角皿小¥4000、耳付き楕円鉢小¥7000、6寸耳付き土鍋¥6000/SML(岩井窯)
息を呑むような絶景がつづく浦富海岸から、ひとたび内陸へ向かうと、緑に囲まれた静かな山の中に、突然瀟洒な建物が現れます。
鳥取の民藝運動のリーダーでもあった吉田璋也や、イギリス人陶芸家・バーナード・リーチと出会ったことをきっかけに、陶芸を志した山本教行さんの窯元です。
象嵌や掻き落としなど趣向を凝らした技法で、機能性を兼ね備えつつ、どこか愛嬌を漂わせる温かいフォルムが、食の空間に楽しい彩りをもたらしてくれそうです。
父と娘が二人三脚で作る、
素直で丁寧なものづくり
延興寺窯
片口大¥4000、ぐい呑 各¥1400、帯碗¥2800、線刻皿¥5000/SML(延興寺窯)
窯元の山下清志さんは、河井寛次郎の弟子であった生田和孝のもとで兄と共に修業し、一時途絶えてしまった浦富焼を復興。その後独立。
近年、沖縄の読谷山焼北窯で修業していた娘の裕代さんも加わり、親子で作陶しています。
シンプルで洗練された雰囲気のなかに深い味わいのある器です。
落ち着いた色合いが
テーブルに映える
玄瑞窯
18㎝ボウル、15㎝ボウル、マグカップ 価格未定/玄瑞窯 ☎0857-50-1758
因幡国府焼の田中幸成に師事し、2009年より開窯した芝原信也さん。釉薬は自身でブレンドし、独自の色を作っています。
鳥取の夏の海をイメージしたという清々しく穏やかな青は、この窯元ならでは。
鳥取市内のスターバックスでは、ここでしか買えないオリジナルマグが販売されています。
ウェブサイト【ANA 鳥取多美】へ
●情報は、FRaU2018年12月号発売時点のものです。
Photo:Kaoru Miyachi Text:Kaori Ezawa