味覚を鍛える!? リバウンド知らずの “舌トレ・ダイエット” とは?

「ダイエットしなきゃ!」と決意し、少し痩せてはリバウンドして……を繰り返している人にこそ、注目してほしいのがこの “舌トレ” 。ダイエットを研究し続けてきた予防医学研究者の石川さんが辿り着いた成功者続出の “痩せ続けられる” ダイエット新理論とは!?

【目次】
1. ダイエットの4大カテゴリー
2. 舌トレのポイントは旨味!
3. 香りを味わうことも痩せるポイント
3. 旨味と香りに富むお茶を味方にする

ダイエットの4大カテゴリー

ダイエットは永遠のテーマだけれど、多くの女性は短期的に痩せることばかりに気を取られて、もっと大事なことを忘れている。それはダイエット後も痩せ続けること。

「 “痩せる” と “痩せ続ける” はまったくの別物。痩せ続ける戦略を考えないうちに “うっかり” ダイエットを始めると、リバウンドで逆に太る可能性があります。リバウンドするくらいなら、ハナからダイエットをしないほうがマシです」と言うのはダイエットに詳しい予防医学研究者の石川善樹さん。

「2〜3㎏痩せるのは自己流でも可能ですが、リバウンドのリスクがあります。10㎏以上痩せたいなら専門家のいるパーソナルジムに入る方法がありますが、10㎏以上痩せ続けるのはほぼ無理。ターゲットにするべきは、いまより2〜3㎏痩せ続けるという目標。そのためには毎日継続できる小さな習慣を身につけるしかありません」

痩せるには、運動などによる消費カロリーを増やすか、食事を抑えて摂取カロリーを減らし、エネルギー収支をマイナスにすることが必要。石川さんの計算では、2〜3㎏痩せてそれをキープし続けるには、1日80キロカロリー程度のマイナスを作り出せばいいそう。

「運動を日々継続してマイナスを作るのは大変。食事を変えるほうがずっとやりやすい。そこで習慣化しやすい方法として私が提案しているのが “舌トレ” です」

舌トレとは一体⁉ その方法をさっそく教えてもらおう。

NEXT≫「舌トレのポイントは旨味!」

舌トレのポイントは旨味!

脳の満足度には、3つのタイプがある。

舌トレの極意は旨味の活用にある。

「脳は大きな変化を嫌いますし、これまでの生活パターンを大きく変えるようなものは、習慣になりにくい。食生活を大きく変えないで、痩せ続けるために行う習慣付けのポイントが旨味。普段の食事に旨味をプラスすると、舌が勝手にダイエットに導いてくれるのです」

痩せ続けるために旨味が有効なのは、脳にLearn型の深い満足感をもたらしてくれるから。

「脳科学によると、幸せや満足感は、Like型、Want型、そしてLearn型の3タイプに分けられます。Like型は別名砂糖型。甘いお菓子を食べたときのように瞬間的な幸せ感が得られますが、“ひと夏の恋” のように持続性に乏しい。Want型は別名ファット型。脂っこい食べ物のように、中毒性があって止められない。旨味はLearn型であり、満足感が徐々に高まって、持続してくれるという特徴があります」

Like型の砂糖とWant型の脂肪はつねに不足感に悩まされるから、無意識に食べすぎてしまう。しかし、Learn型の旨味は満足感が高く摂取カロリーも食事量も抑えられるから、自然にダイエットに結びつくのだ。

旨味の種類を知っておく

そもそも旨味とは何なのか。舌トレを深く知るために、おさらいをしておきたい。

舌が感じる五味には、甘味、塩味、酸味、苦味、旨味がある。甘味は糖質のようにすぐにエネルギー源になるもの、塩味は生きるのに不可欠な塩分、酸味は腐ったもの、苦味は毒性のあるものをそれぞれ見分けるために存在すると考えられる。旨味は、体を作るアミノ酸などの栄養素を含む食べ物を見分けるためにある。

「旨味を発見したのは日本人。池田菊苗博士が1908年に昆布からグルタミン酸を抽出。それから100年ほど経った2002年、舌に旨味のセンサーがあることが発見されて世界的に旨味が注目されるきっかけになりました」

旨味というと昆布とかつお節がパッと頭に浮かぶが、他にも肉や魚介類、トマトやブロッコリーや白菜といった野菜、チーズや緑茶といった幅広い食材に含まれる。

「旨味はあらゆる食材に含まれますが、植物油と精白糖(砂糖)だけは旨味を一切含みません。食べすぎると太ると知っていても油と砂糖が多い加工食品やお菓子が止められないのは、旨味が少ないからです」

何に旨味があるかを知り、日々の食事に取り入れよう。

 
旨味が豊富な食材

旨味の元となるグルタミン酸はアミノ酸の一種、イノシン酸とグアニル酸は核酸と呼ばれる物質で、次のような食品に含まれる。旨味は複数を組み合わせると効果倍増。

アッパー系ではなく、
ダウナー系を選ぶ

石川さんによると料理の味付けは、脳が興奮していくら食べても満たされない濃い味のアッパー系と、旨味豊かで薄味でも満たされるダウナー系に分類できるという。

「アッパー系は旨味がない油と砂糖、塩という3要素からなり、舌にのせたときに一瞬でわかるような味付けの濃いもの。ハンバーガーやフライドポテトなどのファストフード、カレーやラーメン、ケーキやクッキーなどが代表格。とくにフライドポテトやクッキーのように食べた瞬間に口で溶けるように計算された口溶け感の高いものは、食べても食べても脳が食べたと認知する前に溶けるので、いくらでも食べられるのです」

濃い味だと太りやすいのは、味覚は筋トレと真逆で刺激が弱いほど、鍛えられるという性質があるため。

「濃い味だと舌が麻痺して食べすぎる恐れがある。ダウナー系の薄味で旨味を探すような食べ方をすると味覚が鋭くなり、少量でOKになります」

 
アッパー系とダウナー系の食品

 

脳が美味しいと感じる味にはアッパー系とダウナー系がある。アッパー系はファストフードや加工食品などで、ダイエットが必要な人が好んで食べる傾向が。

 
舌トレ的おすすめの食べ順

いま流行りの食べ順も大切。

「旨味があるものを最後に食べると充足感が高まり、デザート要らずで食事が終えられます。みそ汁のような汁物だとお腹も満たされるのでおすすめです」

ご飯などの主食の前に野菜や海藻類、主菜を食べると血糖値が上がりにくく、太りにくい。旨味のある汁物で締めると満足度が高まる。 

咀嚼をすると旨味が倍増する

早食いは太るというのはダイエットの常識。その理由は脳が満足する前に食べすぎるからだとされる。それも一理あるが、早食いで太る理由にも実は旨味が関わる。

「よく噛むと口のなかに唾液がたくさん出てきます。唾液には旨味の元であるグルタミン酸が含まれているので、満足感が上がります。ロクに噛まないで早食いすると唾液が出にくいので、食べすぎるのです」

唾液量が少ないドライマウスでも味覚への感受性が落ち、食べすぎる恐れがある。加齢とともに唾液の分泌は減る傾向があるから要注意。

「高齢になると鰻のような濃い味を好む人が増えます。これは味覚が衰えて何でも薄味に感じるうえに、唾液が少なくて濃い味でないと満足できなくなるのも一因」

加えて食材の旨味自体にも舌に感知されると唾液を増やす作用があるとか。旨味たっぷりで噛み応えのある食材を選び、よく噛むのがベスト。

ちなみにレモンやライムなど柑橘類のような酸っぱい食べ物も唾液を出すが、瞬間的に終わって持続しないのが難点。やはり旨味がある食べものを、しっかり噛んで食べるのが正解なのである。

NEXT≫「香りを味わうことも痩せるポイント」

香りを味わうことも痩せるポイント

旨味に加えて食事の満足度を高めてうまく痩せる方法がある。それは香りを味わう習慣付けだ。

「味は舌だけではなく鼻にある神経でも感じています。脳に伝えられる味覚情報の90%は嗅覚によるものだという説もあるくらいです」

風邪を引くと、好物でも美味しく感じられないのは、鼻がバカになっているせいなのである。

「テレビのグルメ番組の食レポで口に入れた瞬間、『美味しい!』と叫ぶのは、たぶん演出(笑)。本来なら口から鼻に抜ける香りを味わってから、初めて『美味しい!』と思えるはずです。食事はゆっくり咀嚼しながら、深呼吸をして香りを楽しむとより満足感が高くなり、腹八分目ですっと箸が置けるようになります」

外食産業や食品メーカーは香りの重要性をちゃんと理解しているからこそ、さまざまな香料を開発して食欲をそそる工夫をしている。

「旨味に乏しいインスタント食品でも美味しく感じるのは、添加された香料のマジック。人工的な香料に騙されて偽りの食欲に振り回されず、食材が持つ天然の香りを楽しむクセをつけるようにしてください」 

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旨味と香りに富むお茶を味方にする

生活に簡単に旨味を取り入れるのに役立つのが、お茶。緑茶にはグルタミン酸やアスパラギン酸といった旨味成分のアミノ酸が含まれる。さらに、玉露やかぶせ茶といったひと手間かけた上質の茶葉に多いアミノ酸であるテアニンは、ほのかな甘味を持ち、カテキンなどによる苦味や渋みを和らげてくれる。

「上質な茶葉で自分で淹れる茶は、風味が格段に違います。好みの味わいを見つけ、生活の一部として楽しんでいただきたいです。旨味がとくに豊富な産地として、佐賀県の嬉野、福岡県の八女などの茶葉がおすすめ」(嬉野茶を中心とした茶葉販売、飲み方を提案するGEN GENANの赤坂真知さん)

旨味を上手に引き出す方程式は、お湯の温度と量、茶葉の量、抽出時間という4項目の組み合わせで決まる。

「高温で長く抽出すると渋みや苦味が出てしまうので、温度は60度、抽出時間は70秒程度がおすすめ。茶葉4g(ティースプーン2杯)にお湯60㏄で、緑茶のエスプレッソのような凝縮した旨味を味わうことができます」

この他、昆布茶も旨味のかたまり。市販品は余計なものが入っている恐れがあるから、こちらも自作がベスト。出汁を取った後の昆布で手軽にハンドメイドしよう。

食後や食間に緑茶や昆布茶を楽しんでいると、それだけで過食の防止に一役買ってくれる。

 
旨味たっぷりのお茶を淹れる方法

1.何よりも大事なのは茶葉の選び方。嬉野茶や八女茶など旨味の多い茶葉をチョイスしよう。
 

2.1杯分ずつ淹れる小ぶりな急須に、きちんと計量して茶葉4gを入れる。
 

3.沸騰させたミネラルウォーター(硬度の低い国産の軟水がお薦め。ヨーロッパ産などの硬水だと茶葉の旨味が抽出されにくい)を60度まで冷ましてから注ぐ。

4.70秒程度で抽出する。それ以上長く時間をかけると渋みや苦味が出てきやすい。一煎目だけでなく、二煎目、三煎目まで十分に楽しめる。 
 

GEN GEN AN
東京都渋谷区宇田川町4-8 1F
https://en-tea.com/
 
日本の伝統工芸をプロデュースしてきた丸若裕俊さんと、茶師・松尾俊一さんが佐賀県嬉野を拠点に共同で取り組む茶葉ブランド「EN TEA」直営店。茶葉の販売からライフスタイルの提案もするユニークなお店。茶葉は「玉緑茶」(¥1200/50g)など。店内やテイクアウトでお茶を楽しむことができるほか、オンラインで茶葉の購入も可。

簡単昆布出汁で旨味を常備

 

保存ビンなどに水1ℓに昆布10~20gを入れて冷蔵庫で8時間ほど置く。保存する場合は取り出す(水に対して1~2%の昆布を入れる。多いと濃厚なグルタミン酸風味、少ないとすっきりした風味に)。

旨味が凝縮した昆布茶は最強

 

昆布は旨味成分であるグルタミン酸がとくに多い食材。細かく刻んだり、粉末状にしたりしたものにお湯を注いで飲む昆布茶にも、旨味がたっぷり含まれている。出汁を取った後の昆布でも、美味しい昆布茶が作れる。

◆材料(作りやすい分量)

出汁(上記参照)をとった後の昆布…50g(水出しでなく、普通にとった昆布出汁の出汁がらでもOK)
酢……………………………………大さじ1/2


しょうゆ………………………大さじ2
砂糖……………………………小さじ1/3
みりん…………………………小さじ1/2
梅干し…………………………1個
梅干しの塩分によっては塩…少々

 
◆作り方

1.昆布は水けを拭きとり、2㎝角に切る。

2.厚手の鍋にと酢、水100㎖ほどを入れて柔らかくなるまで15分程度弱火で煮る。(普通の出汁の取り方をした昆布の時は水を3倍にして30分程度煮る)

3.水が少なくなったらを加えて煮汁がなくなるまで弱火で煮る。

4.取り出して冷蔵庫で一晩おいてから使う。飲む時は好みの量にお湯を注いで。

もっと手軽に手作り昆布茶

 

削り昆布(おぼろ昆布、とろろ昆布)も旨味が出やすい。茶碗にひとつかみ入れたら、風味付けに刻んだ梅干しを加えて、お湯を注げばインスタント昆布茶が完成。手間いらずですぐに飲めるので重宝。

PROFILE

石川善樹 Yoshiki Ishikawa
予防医学研究者。1981年、広島県生まれ。東京大学医学部卒、ハーバード大学公衆衛生大学院修了。「人がよりよく生きるとは何か」をテーマに研究。『最後のダイエット』(マガジンハウス)、『ノーリバウンド・ダイエット』(法研)などダイエット関連の著書も多い。

 
●情報は、FRaU2018年10月号発売時点のものです。
Photo:Nobuki Kawaharazaki Cooking&styling:Kikue Oshima Text:Kenji Inoue

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