家族とは何か――。第71回カンヌ国際映画祭で最高賞のパルム・ドールを受賞した『万引き家族』、この夏放送され高視聴率を記録したドラマ「義母と娘のブルース」など、平成最後の年、一筋縄でいかない “家族の形” を描いた作品に注目が集まっている。

昨年、NHK連続テレビ小説「ひよっこ」で、昭和という時代を象徴するようなひたむきに生きる女性を演じた有村さんが、映画『かぞくいろ―RAILWAYS わたしたちの出発―』で演じたのは、夫の死をきっかけに、連れ子とともに夫の故郷・鹿児島で運転士として生きるシングルマザー・晶。人生を鉄道になぞらえて描いた『RAILWAYS』シリーズ最新作は、鹿児島を舞台にした、血縁関係のない家族の “再生の物語” だ。

辛いことを乗り越えるとき、
支えになるのは、“言葉”

――有村さん演じる晶と、亡くなった夫・修平との連れ子・駿也、夫の故郷である鹿児島で運転士として働く義父の節夫。その3人の心の移り変わりがとても丁寧に描かれていて、見終わった後に心が温かくなりました。晶を演じる上で、特に難しかったのはどんなところですか?

有村:晶という役の情報が少なかったことです。修ちゃん(修平)が亡くなる前、晶とどんな風な夫婦だったのか、出会う前の二人はどんな生活を送っていたのかとか。映画のストーリー自体は、修ちゃんが亡くなってから動いていくので、晶というキャラクターをしっかり掴むためには、私自身が晶の過去を作っていく作業が必要だなと思いました。

晶は、親に愛されずに育って、自立することに精一杯で、家族がどんなものか、よくわかっていなかった。でも、修ちゃんと出会って愛をもらったことによって、自分が豊かになっていった。見ず知らずの場所で駿也のために「運転士になる」と決めたことは、大胆な行為のように見えて、晶が修ちゃんによって “再生” させてもらった過去があったからこそ、できた決断だったと思うんです。

決して “よくある話” ではないので、晶の一つ一つの言動に説得力を持たせる必要があって、そこは難しかったです。ただ、後半は、3人が自然と家族らしく支え合っていくようになるので、演じながらグッとくるところもありました。國村(隼)さん演じる節夫さんの言葉が、晶というキャラクターを通して、私自身にもダイレクトに伝わってくるものがありました。

  
――駿也役の歸山竜成くん、節夫役の國村隼さんとの共演はいかがでしたか? 

有村:竜成君は、 “作品” を作るということの意味を理解して、すごく自分のやるべきことを一生懸命頑張っていたんです。集中力を切らさないように、無駄口は、一切しなかったですし、「寒い」「疲れた」「眠い」など、そういう弱音も吐かなかった。常に駿也として、一人の俳優としてそこにいてくれたので、頼もしかったです。それを見て、「この子のために頑張りたい」と思いました。

國村さんは以前(2013年)、「スターマン・この星の恋」というドラマで共演していたんですが、どちらも宇宙人の設定だったので、「人間としてやっと会えましたね」と(笑)。

もの凄く厚みのあるお芝居をなさる方で、「どうしたらこんなお芝居ができるんだろう?」と。國村さんが元々持っている人間の深みがもろに出ていて、対峙するたびに毎回なんか……ボコボコにされましたね(笑)。ボクシングだったら、もう何回ノックアウトされたかわかりません(笑)。自分に足りないものを痛感しました。声色とかトーンだけで感情や真意が伝わってくる気がするんです。だから、言葉の通じない海外の映画でも存在感を出せるんだろうなって、すごく納得しました。

 
――有村さんが、今回晶という役を演じて、あらためて気づかされたことがあるとすれば何ですか?

有村:物事が思い通りには進まなかったり、信頼している人と手を取り合って走り出してみたものの、躓いてしまったりすることは、誰もが長い人生、あると思うんです。でも、その都度立ち上がれるのが人間なのかなって思いました。

人は、弱いようで弱くない。誰もが、きっかけさえ掴めば、立ち上がれる強さを持っているということでしょうか。あとは、人間は柔軟だということ。どんな見ず知らずの環境に置かれても、その場所に馴染み、そこの人になっていける。逆風の中でも、強く生きていけるということです。

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――有村さんご自身は、そういう経験は?

有村:この世界に入るまで、オーディションにたくさん落ちて、女優になる夢を諦めかけたことがありました。「これが最後」という気持ちで臨んだオーディションに受かって、思いが伝わって、今ここにいることができています。

あとは、朝ドラですかね(笑)。最初は尻込みしましたし、撮影中もすごく葛藤はありました。……自分の演技に納得がいかなくて、その感情を引きずったまま家に帰って、次の日、NHKの西口玄関まではなんとか行くんですけど、そこから足が進まなかった。何度も、玄関の前で立ち尽くしていました。そういう時は、「ここで進まないとダメだ」って、足をトントン叩いて。でも、終わってみたら「できるんだな」って(笑)。気づいたら乗り越えていたので。

 
――逆風の中にいるとき、支えになっていることは何ですか?

有村:家族もそうですし、あとは、“言葉” ですね。辛いときは、今までに先輩や監督からいただいた言葉を思い出します。最近だと、私が自分に自信が持てなくて悩んでいた時に、「自信がないのは向上心があるから。自信がないのはいいことなんだよ」、と言ってもらったことも心に残っています。この仕事はチームプレーなので、周りの方からのエールがすごく大きな支えになります。台詞もそう。「かぞくいろ」も、台詞の一つ一つが、私の心に勇気や希望をくれました。

 
――晶を演じてみて、あらためて家族に大切なものは何だと思いますか?

有村:大切な人が大切にしているものを、自分も大事にすることだと思います。それは、この作品に出演する前から、私がいつも思っていることです。作品の現場も、一つの家族のようなものなので。周りにいる大切な人たちが大切にしている思いを、丁寧に演じたいといつも思っています。

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PROFILE

有村架純 Kasumi Arimura
1993年生まれ。兵庫県出身。2010年女優デビュー。NHK連続テレビ小説「あまちゃん」(13年)で注目され、「ひよっこ」(17年)では主演を務める。主な出演映画に『映画 ビリギャル』『ストロボ・エッジ』(ともに15年)、『何者』(16年)『ナラタージュ』『関ヶ原』(ともに17年)『コーヒーが冷めないうちに』(18年)など。公開待機作に『フォルトゥナの瞳』(19年)がある。

INFORMATION

映画『かぞくいろ―RAILWAYS わたしたちの出発―』

©2018「かぞくいろ」製作委員会

人生を鉄道になぞらえて描く『RAILWAYS』シリーズ最新作。晶(有村架純)は、夫・修平(青木崇高)とその連れ子・駿也(歸山竜成)と東京で幸せに暮らしていた。が、修平の突然の死によって、晶はシングルマザーとなってしまう。晶と駿也は、夫の故郷・鹿児島に向かい、義父の節夫(國村隼)とのぎこちない共同生活が始まる。晶は駿也を励ますため、節夫と同じ鉄道運転士を目指す。血の繋がらない家族の再生の物語。

監督・脚本:吉田康弘
出演:有村架純 國村隼 桜庭ななみ 歸山竜成 木下ほうか 筒井真理子 板尾創路 青木崇高
主題歌:斉藤和義「カラー」
企画:阿部秀司事務所/ROBOT
配給:松竹
©2018「かぞくいろ」製作委員会
  
2018年11月30日(金)新宿ピカデリーほか全国ロードショー
http://www.railwaysmovie.jp

 
Photo:Noriko Yamamoto  Styling:Yumiko Segawa Hair&Make-up:Izumi Omagari Interview&Text:Yoko Kikuchi

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