蒼井優×葉山奨之「ずっと、シンプルな“人間の物語”がやりたかった(蒼井)」

出演者はたった3人――。かつて不倫関係にあった男女が再び出会う夜。未練と罪悪感の狭間で繰り広げられる男女の会話は、やがて、登場人物の間に溝となって横たわる “社会” そのものを浮き彫りにしてゆく。新国立劇場の芸術監督の小川絵梨子さんが、就任後初めて自ら演出を手掛ける『スカイライト』。かつ、ロンドンのナショナル・シアターで、キャリー・マリガンが演じたキラ役に挑戦する蒼井優さんと、キラの不倫相手の息子・エドワードを演じる葉山奨之さんに、舞台についての話を聞いた。

人気者になるよりも、
「あれ、あいつ、まだいるの?」
みたいな存在でいいです(葉山)

――『スカイライト』にご出演が決まった経緯を聞かせてください。

蒼井:3年前、ナショナル・シアター・ライヴで初めてこの作品を観ました。その時は、シンプルに、すごく面白いなと思いました。ちょうど、今回の演出を担当される小川絵梨子さんと『スポケーンの左手』という作品をやっている最中で。共演していた中嶋しゅうさん(※2017年逝去)が、日本で上演するなら、「キラ役は、優ちゃんがいいと思う」って言っていただいて。その時、「もしそれが実現するなら、エドワード役は葉山くんがいいなぁ」と思ったんです。

しゅうさんは、(キラの不倫相手でエドワードの父親の)トムをやりたかったはずで(笑)。運良く、小川さんの演出で、『スカイライト』を上演できることになって、小川さんとも、「きっと、しゅうさんはトムをやりたかったんだろうなぁ」って話したりしています。

 
――いいお話ですね。いろんな人の、「こうなったらいい」という希望が繋がって、今回結実するという……。葉山さんは、この舞台のオファーが来た時、どう思ったんですか? 

葉山:最初にこの話を伺ったのは結構前……確か、2年くらい前だったと思います。その頃、僕、舞台は2回経験していて、どっちもすごく苦しかったんですよ(苦笑)。そこから、舞台には苦手意識があって。今回もすごく不安だったんですが、今は優さんにも、小川さんにも、浅野(雅博)さんにも、家族みたいな感じで接してもらっていて、毎日が楽しくて仕方ないです。みんなが一つの作品を作ることの楽しさを実感しているところです。

 
――最初の頃の舞台は、どうしてそんなに苦しかったんだと思いますか?

蒼井:私、それは何となくわかります。自分がまだ舞台をやるようになって2〜3作目の頃のことを思うと、右も左もわからなくて、お稽古も本番も緊張感がありすぎて、苦しいぐらい、自分にプレッシャーをかけてしまっていたから。でも舞台って、徐々に楽しさがわかってくるものだと思う。だから(葉山)奨之が、舞台に対して慣れることができずに、苦手意識の中で、「舞台もういいや」ってなる前に、小川さんと組んでほしかったんです。

 
――葉山さんに対する愛情が深いですね。そもそもお二人は、どこで知り合ったんですか?

蒼井:『アズミ・ハルコは行方不明』(※松居大悟 監督)という映画で。

葉山:撮影当時(2015年)、僕まだ19歳でした。

蒼井:そのチームが、監督もスタッフも出演者もプロデューサーも、とにかくみんな仲良くて。

葉山:その時に色々お世話になって以来、僕は、優ちゃんを完全にお母さんだと思ってます(笑)。

蒼井:あと、舞台では、奨之も私も中嶋しゅうさんと接点があって。しゅうさんがお父さんで、私たちがきょうだいみたいなところもあります。

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――ところで、最初に蒼井さんがナショナル・シアターの「スカイライト」を観たとき、特にどんな点に惹かれたんでしょう?

蒼井:まず、私がキャリー・マリガンを大好きっていうのもあるんですが、それは置いておいて(笑)。人がすれ違ったり、出会ったりする中で、ものすごく「人ってこういうものだよなぁ」と痛感させられたんです。人と人が出会うこと、人と人が、一瞬触れ合うこと。ただそれだけのことが、何て素敵なんだろうと思わせてくれた。神様が介在しない、シンプルな “人間の物語” だなあって、思わせてくれたんです。しかも、そういう “ただの人間” にフォーカスした作品を、私はここ数年やっていなかった気がしたので。このお話にはすごく興味を持ちました。ただ、今(※インタビューは11月中旬)セリフを覚えている最中で、引き受けたことを本当に後悔してますけど(笑)。

葉山:ハハハハ(爆笑)! わかります。側で見てても大変そうだもん。

蒼井:199ページ分、私、ずーーーっと出てますからね(苦笑)。普通、台本を覚える時って、最初は全部読みますけど、だんだん自分が出ていないところは飛ばして読めるようになるんですが、今回は、飛ばすページが1ページもない! 今、64ページまで覚えたけど、あと133ページ覚えなきゃならない(泣)!

葉山:セリフの量、えぐいですよね(笑)。

蒼井:でも、稽古場は楽しい。家で、一人でセリフを覚えているときは、現実逃避したくて、白眼になっちゃいますけど(笑)。稽古場は風通しもいいし、みんなで、一人一人のキャラクターも面白がることができる。今の所すごくいい空気だよね。奨之は、エドワードにピッタリすぎて。当て書きかと思うくらい(笑)。

 
――蒼井さんから見た、葉山さんの魅力は?

蒼井:なんでしょうね。……会ったことのないタイプ。友達の子供が5歳ぐらいの時、こんな感じだった。アハハ。オフの時は赤ちゃんみたい。でも、しっかりしているところはしっかりしていて、仕事にはすごく真面目ですね。

 
――野生的?

蒼井:……天使的……かな(笑)? 小川さんも、いつも奨之を見て笑ってます。多分あれは、癒されているんだと思う。

 
――じゃあ、葉山さんから見た、蒼井さんの素敵なところは?

蒼井:ご飯をご馳走するところ(笑)。

葉山:そうですね、美味しいご飯をご馳走してくれるところと、あと、年齢はすごく上なんですけど……。

蒼井:ほーんと失礼(怒)!

葉山:(笑)。こんな感じで、全然壁がないんです。会った瞬間から、絶対に仲良くなれるって思いました。とにかく優しいんです。人の話聞いてくれるし。僕が、「こんなことあって」って話すと、ちゃんと目を見て、「うんうん」って(笑)。芸能界で、僕のことを全部知っているのは、優ちゃんぐらいしかいないと思う。姉さんでもあるし、男の友達に近い部分もある。一言で言うと、“優しさの塊” かな。怒ったところ見たことがないので、マジで怒られたときは、本当にやばいんだろうなって思います。優ちゃんにだけは、絶対に怒鳴られないように。「俺、調子に乗るなよ」って思ってます(笑)。

 
――蒼井さんは30代ですが、例えばこうやって、「やってみたい」と思う役と出会えたりするようになって、お芝居を続けてきてよかったなと思うことはありますか?

蒼井:うーん。舞台を山に例えるなら、私はまだ一合目にもたどり着けていない気がします。だから、「続けてきた」という実感はないです。舞台では、お客さんを感じながら、お客さんと一緒にひと公演ずつ作っていく。そういう楽しみに関しては、少しわかってきたかもしれない。演劇は、一つの戯曲を世界各国で上演されていて、日本でも、過去に上演された戯曲に、今の私たちが渡来したり。国境や文化という横軸と、過去や未来という縦軸、両方に、一つの役が広がっているんです。でもだからこそ、自分みたいな人間が挑戦してもいいんじゃないかと思える。でも同時に、萎縮しそうになることもあります。

 
――葉山さんは、ご自身の俳優人生について、何かビジョンはありますか?

葉山:いるな、って思われればいいです(笑)。端っこの方で、「あ、そういえばあいついるな」って。幽霊みたいな存在でいい。そうやって、ずっと仕事を続けられたらいいなと思います。主演ももちろんやれたらいいですけど、それよりも、面白い役をいろんな人たちと組んでやりたい。とにかく、人が大好きなので。

 
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PROFILE

蒼井優 Yu Aoi
1985年生まれ。福岡県出身。2001年、『リリィ・シュシュのすべて』でスクリーンデビュー。映画、ドラマ、舞台、ナレーションと幅広く活躍。舞台ではこれまで、蜷川幸雄、野田秀樹、野村萬斎、栗山民也、ケラリーノ・サンドロヴィッチ、いのうえひでのりら、錚々たる舞台人が演出を手がけた作品に出演。現在テレビ東京「このマンガがすごい!」のナビゲーターを務める。

葉山奨之 Shono Hayama 
1995年生まれ。大阪府出身。2011年テレビドラマ「鈴木先生」で俳優デビュー。過去の出演舞台は、ともに2015年、長塚圭史演出『ツインズ』、熊林広高演出『狂人なおもて往生をとぐ〜昔、僕たちは愛した』。2018年ゆうばり国際ファンタスティック映画祭で、ニューウェーブアワード賞受賞。現在ドラマ「忘却のサチコ」に出演中。公開待機作に映画『ねことじいちゃん』がある。

INFORMATION

舞台『スカイライト』

 

ロンドン中心部から離れた質素なアパートに暮らすキラ(蒼井優)。ある夜、かつての不倫相手の息子であるエドワード(葉山奨之)がやってくる。妻を亡くして以来、不安定なままの父親トム(浅野雅博)を助けて欲しいと言い残し、彼は去っていった。数時間後、トムもまたキラの元へ。三年前に不倫関係が明るみになって以来の再会。いまだに消えぬお互いへの思い、解けない不信感。共有する罪の意識の間で揺れ動く二人の会話は、それぞれの価値観の違いをぶつけ合いやがて……。

作:デイヴィッド・ヘア
翻訳:浦辺千鶴
演出:小川絵梨子
12月6日(木)〜24日(日) 新国立劇場 小劇場
12月27日(木) 兵庫県立芸術文化センター
 
https://www.nntt.jac.go.jp/play/skylight/

Photo:Tomohiro Enzaki Styling:[Aoi]Kaori Kawakami Hair&Make-up:「Aoi]Taeko Kusaba、[Hayama]Megumi Ochi(ALFALAN) Inteview&Text:Yoko Kikuchi

[Aoi]ドレス、パンツ/MAISON EUREKA(ON TOKYO SHOWROOM) その他/スタイリスト私物

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