生産者との出会いを求めてvol.3/齊藤輝彦が旅する福岡

福岡が元気。中でもとくに元気なのが食の世界。福岡の元気の源は、元気な生産者にありました。

東京のワインバー〈アヒルストア〉の齊藤輝彦さんが、福岡の同世代の生産者を訪ね、元気の秘密を探ります。ユニークで進取の気性に富む生産者たちは、感性豊かで、おもしろい人たちばかりでした。

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福岡の生産者の魂宿るメニュー

〈工房とったん〉のカフェで人気の、ワイルドポーク・ザ・カツサンド(¥620・税込み)。平野さんのベビーリーフがたっぷり入っていて、後口爽やか。

フードメニューにある、ワイルドポーク・ザ・カツサンド。何だ、このイケてるネーミングは。でも、ちょっと待て。この「ワイルド」はもしや、あの「ワイルド」ではないのか。齊藤さん、「あのぉ、このワイルドって、リバーワイルドの豚肉を使っているってことですか」「はい、そうです」。そりゃあ、余計食べなきゃ、と勇んで注文してみる。
 

露地の畑も入れて3000坪ほどの畑を有する〈のぎた平和園〉。ハウスの中では、10種類ほどのベビーリーフを育成中。大抵はミックスして出荷。

パンよりもはるかに大判のカツがドカンと、ベビーリーフとともに挟まっている。このベビーリーフは、〈のぎた平和園〉製。園主・平野智巳さんは、もともとは母の日など祝いごと用の蘭農家だったのだが、東日本大震災後の自粛の影響を受け、考えた。そういうものに縛られないものは?

そして思いついたのがベビーリーフだった。小さいけれどピリッと辛いワサビ菜をかじった齊藤さん、「これはいってみれば薬味ですよね」。現在は、地元の飲食店からも引き合いが増え、順調だ。「こちら、ビニールハウスではありますが、温室ではないんです。このあたり、海岸線より600メートル。常に海と陸の風が往き来している。環境としては最高です」。
 

ルッコラの赤ちゃん。ベビーリーフは、大きくなったら、園主・平野さんちのおひたしになったりするそう。

できるだけ農薬は使わず、土にこだわり、安全なベビーリーフ作りを心がける平野さん。まさに葉っぱの赤ちゃんが育つ様には、生命力があふれ、見ているだけで元気をもらえそうだ。
 

 

ロログリーンの畑。台にのせて地面から浮かせて育てている。

このカツサンドには「またいちの塩」とレモンが添えられている。カツにレモンをジュッ。塩をちょんとつけていただく。塩の威力を感じると同時に、この塩で〈リバーワイルド〉のポークカツのおいしさが引き立つ。

何と、ジューシーでおいしいことよ。ワイルドでは決してありませぬ。お人柄通り、やさしく旨み満点でありました。

生産者の力、和の力が街の活力を生む

愛情を持って豚を育てながら、地域全体の「農」の活性化を、ごく自然に根底から支えている〈リバーワイルド〉の杉勝也さん、これまでになかった形で、野菜の生産からドライな加工品の開発まで真摯に取り組む、〈いのうえファーム〉の井上和樹さんと亜矢さん夫妻。センスのいいドライベジタブルは、9月から、オンラインショップで販売を始めたばかり。人気を呼ぶこと間違いなし、である。

さらには、地元の海水を使い、丁寧な塩作りに取り組む〈工房とったん〉の平川秀一さん、そして、ベビーリーフの研究と生産に励む〈のぎた平和園〉の平野智巳さん。
 

「たった4軒訪ねただけですが、福岡のイキのいい生産者たちが、有機的につながりながら、さらには、シェフたちとも手を組んで、新しく元気な食風景を作り上げている。福岡の飲食業界に活気があるのは、こういった生産者たちがいるからなんだと、つくづく感じ入りました」

その感動をもっと深く味わいたいと、あらま、齊藤さん、夜の福岡へと消えて行くの巻なのであった。

「生産者の方たちとお話をすると、いろんなメニューが浮かんできます」と、東京に帰ってから、福岡食材で、おみやげ料理を披露してくれた。お皿の上の旅も、ぜひ、お試しあれ。

▼おみやげ料理のレシピはこちら!

リバーワイルド
福岡県うきは市吉井町橘田565
☎0943-75-5150
 
またいちの塩 製塩所 工房とったん
福岡県糸島市志摩芥屋3757
☎092-330-8732

PROFILE

齊藤輝彦 Teruhiko Saito
東京・富ヶ谷のワインバー〈アヒルストア〉店主。設計事務所、ランチ弁当の屋台運営などを経て、2008年に妹の和歌子さんと開いた店は、ワインと料理、手作りパンを気軽に楽しめる超人気店に。

 
●情報は、2018年9月現在のものです。
Photo:Norio Kidera Text:Michiko Watanabe

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