女優・芳根京子「舞台のお話からは遠ざかっていた、頑なな私の気持ちに変化が」

生来の人見知り。「初めまして」の瞬間が、とても緊張するという。「犬か猫かで言ったら、絶対犬なんだと思います」と自己分析するその心は、「親しくなれそうなとっかかりが見つかった人には、すぐ尻尾を振ってついていくタイプだから(笑)」。だからこそ、“自分以外の人間になる” ことに、日々刺激を感じているのだそう。

そんな彼女が、2019年3月、デビュー以来二度目の舞台に立つ。『母と惑星について、および自転する女たちの記録』は、母と三人姉妹がたどる “命の旅” の物語。母の突然の死から1ヵ月が経ち、徹底的に放任され、父親を知らずに育った三姉妹は、遺骨を持ったままあてのない旅に出る――。2016年の夏に旧PARCO劇場最後の新作にと立ち上げられたこの作品で、脚本の蓬莱竜太さんは鶴屋南北戯曲賞を受賞した。

待望の再演は、4人のキャストのうち、芳根京子さんとキムラ緑子さんが新キャストに加わることに。2013年、ドラマ『ラスト♡シンデレラ』でデビューし、2016年秋には、NHK連続テレビ小説『べっぴんさん』のヒロインを半年間にわたって演じた芳根さんも、当時はまだ19歳。クランクアップした日が、ちょうど20歳の誕生日だったという。映画にドラマに、“若手実力派” として活躍する彼女だが、舞台に対してだけはずっと苦手意識があった。

この作品に今挑戦しなかったら、
もう女優としての先はないと思った

――舞台は、『幕が上がる』以来4年ぶり。その間、舞台に挑戦してこなかったのは、何か理由があるのですか?
 
芳根:『幕が上がる』という作品は、ももいろクローバーZの皆さんが主演で、映画と舞台の両方があって、どちらもすごく楽しくやらせていただいたんです。映画の延長で、演出は本広(克之)さんでしたし、私はそんなに出番もセリフも多くなかった。学園ものだったこともあって、同世代の子たちと楽しくキャッキャやっていたら、いつの間にか終わっていたという感じで……。

舞台は全部で27公演もあったので、終わった時は達成感もありました。でも正直、私にとっては、「この作品で初舞台を踏みました」と言えるほど、“舞台” というものには向き合えなかったことに、後になって気付くんです。

 
――初舞台は楽しかったけれど、それだけでは満足ができなかった?

芳根:はい……。その後も、色々な仕事をしていく中で出会う、魅力的な先輩方が口を揃えて、「舞台は面白いし、鍛えられるよ」とおっしゃっていたんですが、「あれ? 私も舞台をやったけれど、楽しかっただけで、悩んだりもがいたりしていないな」「舞台に病みつきになるとかそういうところまで全然行けていないな」みたいに思って、今度は逆に、舞台に立つことが怖くなってしまった。怯んで、舞台と自分の間に壁を作ってしまったんです。

以来、「舞台の話があるんだけど」ってマネージャーさんに相談されると、考える間もなく首を横に振ってしまっている自分がいました。そんなことが続いたせいか、しばらく舞台のお話からは遠ざかっていたのですが、今回のお話をいただいたときは、頑なな私の気持ちにも変化が生まれていました。

  
――どんな変化があったのでしょうか?

芳根:ずっと、「“怖い” というのは、舞台を断る理由にはならないよ」とマネージャーさんから言われていて、自分でも、何が怖いのか、具体的に説明できなくて、歯がゆかったし、もどかしかったんです。生来の人見知りなので、毎回顔合わせの時に、「初めまして、芳根京子です」という瞬間が一番緊張するんですが、それもあって舞台で人前に立つことに苦手意識があったのかもしれません。

その、舞台との間に壁を作ってしまっていた時期も、映像の現場で出会う先輩方から、「舞台は、早いうちにやっておいたほうがいい。お芝居に対する見方が変わるから」っていうお話を伺う中で、徐々に、「舞台の何が怖いのかも、挑戦しないとわからないな」って思うようになったんです。これから経験を積めば後輩もできるわけだし、いつか私も胸を張って、「舞台っていいよ」って言えるようになりたい。もし、今回の舞台に挑戦して、「舞台はもうできない」って思ったとしても、それならそれで、舞台をやらないちゃんとした理由が見つかるってことじゃないですか。とにかくやってみなければ前には進めないぞと思って、少しずつ、「舞台に挑戦したい」という気持ちに変わってきました。

『母と惑星〜』は、過去にとても評価された戯曲で、演出が栗山(民也)さんで、女性が4人しか出てこない。こんなチャレンジしがいのある作品に今挑戦する気持ちがもてなかったら、もう女優としての先はないと思ったので、すぐ「やってみたいです」と言いました。マネージャーさんもビックリしていました(笑)。

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――作品については、どんな印象を持ちましたか?

芳根:前回の舞台のDVDを観たんですが、すごく素晴らしくて感動しました。自分がこの世界に入るのかと思うと、プレッシャーを感じると同時に、「ここに入れるんだ!」という楽しみも湧いてきました。私が演じる三女のシオは、素の自分に近い、等身大の役だな、と。

でも、台本を読みながら、蛍光ペンで自分のセリフをチェックしていたら、一本分のインクがなくなるほど、セリフの量が多くて(笑)。自分がもしこの状況だったらどうするんだろうって想像したら、とてもシオのようには生きられないと思いました。彼女と出会って、自分の中に新しい感情が生まれることが、今はすごく楽しみです。
 
 
――役との共通点はありますか?

芳根:シオと私が似ているのは、泣き虫なところ(笑)。ふふふ。台本を読んでいたら、途中から涙が止まらなくなってしまって……。今は、最初に台本を読んだ時から時間が経っているので、客観的に役を見られていますけど、本番が始まって、ステージでシオを生きた時に、涙が出るのかはわからない(笑)。そういうことも含めて、お稽古と本番はどうなるのか。もう今から、ワクワク、ドキドキ、ハラハラ、ゾクゾク、いろんな気持ちが溢れています。
 
 
――根は人見知りなのに、お芝居では、そういう照れとか恥ずかしさを乗り越えられる。そこも、俳優という職業の面白さだと思いますか?

芳根:そうですね。役を通してしまえば、私と誰かではなく、役と役の関係性が存在するので、気持ち的にはすごくラクです。マネージャーさんからも、「いっぱいお仕事をすれば、顔や名前を知ってもらえるし、その先のコミュニケーションがゼロからじゃなくなるからラクになるよ」って言われていて、実際、「朝ドラ観てました」「あの作品が好きです」とか言っていただくと、私も自然と笑顔になれる。

何か話すきっかけを見つけられたら、不思議とぐっと距離が縮まる感じがするんです。入り込めそうな隙を見つけたら、「わー嬉しい!」ってなって、すぐ懐きたくなる(笑)。だから私、犬か猫かと言われたら、きっと犬なんだと思います。何かきっかけを掴めたら、尻尾振って、キャンキャン吠えて、あとをついていくような感じなので(笑)。

 
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PROFILE

芳根京子 Kyoko Yoshine 
1997年2月28日生まれ。東京都出身。2013年、ドラマ『ラスト♡シンデレラ』で女優デビュー。翌年、NHK連続テレビ小説『花子とアン』に、花子の親友・蓮子の娘役で出演。2015年1000人の中からオーディションで選ばれ、TBS系ドラマ『表参道高校合唱部!』で主役を演じる。2016年度後期のNHK連続テレビ小説『べっぴんさん』ではヒロインを務めた。朝ドラ終了後の初主演ドラマは、フジテレビ月9の『海月姫』。2019年3月放送の北海道テレビ製作ドラマ『チャンネルはそのまま!』では主役の雪丸花子役、5月17日公開の映画『居眠り磐音』ではヒロインの小林奈緒役。

INFOMATION

舞台 パルコ・プロデュース2019『母と惑星について、および自転する女たちの記録』

 

三姉妹の母親が死んで1ヵ月。三姉妹は異国を旅している。彼女たちは母の遺骨を抱えていた。放浪してから1週間。目的もない、帰国の予定もない、やるべきこともない、そんな旅の中、ある日異国の市場に、死んだはずの母・峰子が立っているのを三姉妹は見る。あの母親は自分にとってなんだったのか。母親の突然死はなんであったのか。女四人の悲しくも愛おしい人間ドラマ。

作:蓬莱竜太
演出:栗山民也
出演:芳根京子(三女・シオ)、鈴木杏(次女・優)、田畑智子(長女・美咲)、キムラ緑子(母・峰子)
企画・製作:株式会社パルコ
【公演スケジュール】
・東京公演
2019年3月5日〜26日 紀伊國屋ホール
・高知公演 
2019年4月2日〜3日 高知市文化プラザかるぽーと 大ホール
・北九州公演 
2019年4月6日 北九州芸術劇場 中劇場
・京都公演 
2019年4月13日〜14日 ロームシアター京都 サウスホール
・豊橋公演 
2019年4月20日〜21日 穂の国とよはし芸術劇場 PLAT
・長崎公演 
2019年4月25日 長崎市民会館 文化ホール
 
http://www.parco-play.com/web/play/hahawaku2019/

Photo:Noriko Yamamoto Stylist:Daisuke Fujumoto Hair&Make-up:Kotomi Harada Interview&Text:Yoko Kikuchi

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