3000人にもおよぶ指名手配犯の顔を覚え、その顔だけを頼りに犯人を追う刑事 “見当たり捜査員”。想像するだけで気が遠くなりそうな捜査に挑む男の役に、玉木宏さんが挑むことになった。

原作は、芥川賞作家・羽田圭介の唯一の警察小説で、羽田作品の連続ドラマ化は初めて。監督に武正晴、脚本には足立紳と、映画『百円の恋』で日本アカデミー賞を沸かせたコンビが手掛ける。見当たり捜査という、従来の刑事ドラマとは一線を画す濃密な物語をどのように描いていくのだろうか。

枠は連続ドラマですが、
長編映画のつもりで撮りました

ジャケット ¥314000、パンツ ¥113000、タートルニット ¥114000/すべてゼニア カスタマーサービス(Ermenegildo Zegna) ☎03-5114-5300

――今回の作品に出演するにあたり、最初の印象はいかがでしたか?

玉木:原作を読ませていただいて、見当たり捜査というものを初めて知りました。そこから脚本を読んだのですが……本当に大変な仕事だと思います。

ドラマはフィクションとノンフィクションのちょうど間にあるような作品になっていて、白戸崇正という役も実像を見ているのか虚像を見ているのかわからなくなっているような人物。派手さはないけれど、刑事でありながら葛藤している一人の男の話だと思いました。その主軸を大事に演じられたら、と思って臨みましたね。

 
――WOWOW連続ドラマWの主演は初めてとなるそうですが、意気込みはいかがですか?

玉木:WOWOWのドラマだからこうしよう、という考えがあったわけではないですが、映画的なものを撮るドラマの枠という意識はありました。なので、ある意味、すごくチャレンジングな部分もある。監督も映画監督の武(正晴)さんですし、新しいものになるのではないかという予感はありましたね。

 
――実際に撮影に入られてみて、これまでのドラマとの違いは体感されましたか?

玉木:カット割りをはじめ、武監督の撮り進め方が全然違っていて、枠はドラマですが、長編映画のつもりで撮ります、と最初からおっしゃられていたので、そのつもりで臨みました。

 
――ストーリーや世界観の魅力はどんなところにあると感じましたか?

玉木:見当たり捜査というものは認知されていないですが、実際にこうやって活動して逮捕されている例もたくさんあるんです。単純にそこを知って、楽しんでもらいたいということもあるし、これほどきつい職業なんだ、ということも知ってほしい。

一見、正義として強い権力を持っているように見えるけど、蓋を開ければ一人の人間で、男で、女で……ほかの職業と同じように、悩みながらやっている。本当に地に足のついた作品だと思います。

刑事ドラマと言われるとどうしても、“一件落着” 的なイメージがありますが、この作品はサスペンス要素もありながらそうではない。そこがリアリティだと思います。

 
――役へのアプローチはどのようにされましたか?

玉木:読んで解釈したことは、いつでも孤独。当然、仲間が居たり、恋人が居たりするのですが、仕事で感じた悩みやストレスをうまく吐き出せない人間だと思ったんです。後輩もいるから、仕事的なことでやり方は教えるのですが、自分の悩みを打ち明ける人はいないんです。

人付き合いも上手か下手かで言うと、下手。刑事としては中堅どころかも知れないけれど、彼の不器用さがベースになってくる。そこは大切にしました。刑事という仕事はしているけれど、普通の成人男性の話だと僕は思っています。
 

――白戸は職業に没頭するあまり “顔の海に溺れてしまう” ような描写がありましたね。

玉木:理解はできます。仕事とプライベートの境目がなくなって、人の顔を見ると「指名手配犯じゃないか」と考えてしまう。仕事が終わっても、外に居れば人の顔は当然、見てしまうわけで。結局、顔を見てしまって、顔の海に溺れてしまうんですよね。

 
――実際に “顔を覚える” 作業はしてみましたか?

玉木:撮影シーンでもカルタ取りのように顔を覚える場面があったので、少しやってみましたが……すぐには覚えられないですね(笑)。

 
――役作りのために実践したことはありあますか?

玉木:役作りといえるような役作りはあまり事前にしないタイプなんです。現場によって、監督さんが違ったり、スタッフさんや周りの人が違えば、自然と違うものが出てくるだろう、と。最近、特にそういうことが起きている感覚があるので、現場に身を任せています。

監督から、「ああしたい」「こうしたい」という言葉があれば、できるかどうかはわからないけれど「わかりました」とすぐに言える状態に自分をしておきたいと常に思っていました。

NEXT≫「“食べること” は、生きること」

平成が終わる前の
“今の東京” を切り取っている

――今回の作品では、人相を見るという部分で、視線や目の演技が重要に感じました。

玉木:台本のト書きには目や視線について細かく書かれていたのですが、ちょっと超能力っぽく取られる感じがして少し嫌だと思ったんです。毎回、何かを見つけようとするときに、目をググっと印象付けてしまうのは違うのではないかと。

冒頭では見ていただく方に印象付けるために必要だと思いましたが、後半は自然な感じにするようにしました。特殊能力ではなくて、葛藤しながら生きている人物なので、そぎ落とすような作業もしました。
 

――武監督の演出で印象に残っていることはありますか?

玉木:撮影に入る前の本読みのときに「この作品を通して今の日本、今の東京を切り取りたいと思っている」とお話をされていて。もうすぐ平成も終わりますし、その先にはオリンピックが開催されて、東京の街もどんどん変わっていく。これから様変わりしてしまう前の街並みというか、そういうロケ地が多かったので、5年後10年後に観たときに「あの時、そうだったよね」と話せるような感じだと思います。そういう場所に立っている、生活している刑事たちの話、という気持ちでやるようにしていました。

新宿や横浜などに行きましたが “キレイすぎない場所” が多かったですね。今にも崩れてしまいそうなビルもあったのですが、これからどんどんそういうものがキレイに、無機質になっていくのではないかと思います。

 
――武監督は撮影の印象として「喜怒哀楽でははかれない、さまざまな感情や孤独、哀愁を見事体現された」とコメントしていました。ご自身ではどういう部分でそれを出すことができたと考えていますか?

玉木:計算するというか、こうしたらどうだろうという想像はしますが、相手の言葉を受けて返すまでの間合いや、いろいろなところで微妙なニュアンスが出ると思うんです。あとは姿勢ですね。猫背だったり、背筋を伸ばしたりするだけでも、見え方は全然変わってくる。そこは細かく設定していかないと、なかなか瞬時にできないことはあるとは思います。

 
――共演された方の印象はいかがですか?

玉木:恋人の千春を演じた(伊藤)歩ちゃんは、何度も何度も一緒にやらせてもらっていて、メンタルがいい状態のまま何も変わらず。お互いにいい年齢になってきました(笑)。

KEEさん(渋川清彦)は、『ラプラスの魔女』で同じ作品には出演していたんですが、共演ではなかったんです。すごく味のある方で、ファッション誌に出られている頃から拝見していたので、こういう形でご一緒できてうれしかったです。役の上でも、直属の先輩で白戸に大きな影響を与えた人物なので、そういう部分は面白いですね。

 
――内田理央さんや町田啓太さん演じる部下とのチームワーク感にも期待しています。

玉木:独特な関係性なんです。みんな完全に素直になれるわけじゃないし、仲間なんだけど孤独を感じている3人。でも、内田理央ちゃんが演じる安藤には、やっぱり女性だから、町田啓太くんが演じる谷とは接し方が違ってくる。

今回の作品でもう一つ大切にしている部分があって、それは食べるところ。生きた心地がしないような環境で働いている人たちでも、おなかは減るし、ご飯は食べる。だから、食べるシーンを大切にしたい、と監督が話していたんです。「食べるときはガッツリ食べてください」と言われていたので、この3人はみんな、ガッツリ食べています(笑)。そこが、彼らがちゃんと生きている証拠なんです。

 
▼次ページはこちら!

PROFILE

玉木 宏 Hiroshi Tamaki
1980年生まれ。愛知県出身。1998年に俳優デビュー。映画『ウォーターボーイズ』(01年)で注目を集め、数々のドラマやCMに出演。WOWOWドラマW「恋愛小説」(04年)にてドラマ初主演。以降「のだめカンタービレ」(06年)、「鹿男あをによし」(08年)、「あなたには帰る家がある」(18年)、『探偵ミタライの事件簿 星籠の海』(16年)、『悪と仮面のルール』(18年)など、話題作に続々と出演する。2019年2月3日から放送のNHK BSプレミアム「盤上のアルファ〜約束の将棋〜」でも主演を務める。公開待機作には映画『空母いぶき』がある。

INFORMATION

WOWOW「連続ドラマW 盗まれた顔 ~ミアタリ捜査班~」

警視庁捜査共助課の白戸崇正(玉木宏)は、顔だけを頼りに指名手配犯を捕まえる“見当たり捜査員”。部下の安藤香苗(内田理央)、谷遼平(町田啓太)とともに雑踏の中からホシを探し出す日々を送っていた。だがある日、群衆の中に「見つかるはずのない顔」を見つけてしまう。4年前、謎の死を遂げた見当たり捜査の先輩刑事・須波通(渋川清彦)の顔だった。その後、須波の死に関して調べ始めた白戸を、公安や中国マフィアが狙い始める。

2019年 1月5日(土)、WOWOWプライムにて放送スタート。
毎週土曜22時(全5話・第1話無料放送)
https://www.wowow.co.jp/dramaw/kao/

 
Photo:Yuji Nomura Styling:Kentaro Ueno Hair&Make-up:Yukiya Watabe Interview&Text:Yoshiyuki Miyazaki Composition:Aiko Hayashi

▼こちらの記事もチェック!