在りし日の東京にタイムトリップするモダン建築探訪vol.4/山内マリコが旅する東京

高層ビルの間に静かに佇むプチホテル。深い緑に守られた古き良き文化サロン。小説家の山内マリコさんが目指したのは、東京に残る、大正や昭和のモダン建築。

そこには、歳月の分だけ物語があり、建物を愛した人たちの思いが刻まれていました。積み重ねられた歴史に触れたとき、大都市の知らない顔が見えてきます。

 
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視点を変えること。
それが都市を旅先にする

国際文化会館のレストラン〈SAKURA〉は日本庭園に面したガラス張り。丁寧に保存された窓枠越しに風景が楽しめる。/東京都港区六本木5-11-16国際文化会館B1F ☎03-3470-4611

国際文化会館の喫茶室〈ザ・ガーデン〉ではオムライスなどの洋食から、アレンジの効いたパスタ料理まで味わえる。/東京都港区六本木5-11-16国際文化会館 1F ☎03-3470-4611

旅をする理由が非日常を味わうためだとすれば、モダン建築は十分にその役割を果たしてくれる。そして、建築巡礼の合間に立ち寄った街にも、小さな旅はあった。国際文化会館で昼食を食べた後、鳥居坂を下って向かったのは麻布十番。山内さんは来た道を振り返り、ふむふむと頷く。

「私、この位置関係が今まで分かっていなかったみたいです。六本木と麻布十番はこんなに近いんですね。しかも、こんなに和やかな商店街があることも知らなかった」
 

山内さんお気に入りの〈古書往来座〉。文芸だけでなく、映画や舞台、アートなど芸術系の古書も充実。/東京都豊島区南池袋3-8-1 1F ☎03-5951-3939

自由学園明日館の後に歩いた西池袋の街では、「親しくしている本屋さんがあるんです」と〈古書往来座〉に立ち寄った。山内さんが愛読しているフリーペーパー『名画座かんぺ』を作っている書店員さんがいるという。山内さんが見せてくれた最新版の『名画座かんぺ』には、行ったことのない映画館の名が連なっていた。上京したての山内さんもきっとこれを見て心躍らせたのだろう。

「東京に暮らすようになってもう10年以上経ちますが、知らないところは山程ある。上京したての頃、この街にいたら旅なんてしなくていいと思ったことを思い出しました。今は温泉行きたいなぁなんて思いますけど、でも、電車に乗るだけで知らない世界に行けるのが東京なんですよね」

暮らしていても、働いていても、視点をずらせば、そこは旅先になる。知らない街に見えてきたこの大都市を新たな興味で歩いてみたくなった。

国際文化会館
東京都港区六本木5-11-16
☎03-3470-4611
 
自由学園明日館
東京都豊島区西池袋2-31-3
☎03-3971-7535

「山内マリコが旅する東京」おわり

The Local Favorites
Tokyo Address

麻布十番の〈豆源〉で見つけたユニークな名前の豆菓子。/東京都港区麻布十番1-8-12 ☎03-3583-0962
 

麻布十番には洒落た店が次々オープンしている。ベイクショップ〈ハドソンマーケットベーカーズ〉もそのひとつ。/東京都港区麻布十番1-8-6 ☎03-5545-5458
 

麻布十番〈浪花家総本店〉のたい焼き。『およげ!たいやきくん』のモデルはここ。/東京都港区麻布十番1-8-14 ☎03-3583-4975
 

自由学園明日館に併設されたショップ。ライトのスケッチのポストカードなどが手に入る。
 

自由学園明日館の手作りクッキー。「これを楽しみにしていたんです!」と山内さん。
 

自由学園明日館の後に立ち寄った、目白の老舗和菓子店〈志むら〉。名物は求肥に虎豆を練り込んだ九十九餅。/東京都豊島区目白3-13-3 ☎03-3953-3388

PROFILE

山内マリコ Mariko Yamauchi
1980年富山県生まれ。女性のリアルな感覚を小説、エッセイで発表。代表作に『アズミ・ハルコは行方不明』など。新刊は男性の生き辛さを描き、新境地を開いた『選んだ孤独はよい孤独』。

 
●情報は、2018年10月現在のものです。
Photo:Norio Kidera Text:Yuka Uchida

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