SDGs への取り組みが遅れていると言われる日本。しかし全国各地を見渡すと、草の根的に新しい動きがはじまっていました。ここでは、一歩先を行く国内の取り組みをご紹介します。

美しい気仙沼の海を見渡せる高台に、手編み商品の会社、気仙沼ニッティングの本店があります。この会社は、2011年の東日本大震災の後、再びみんなが明るく楽しく、誇りを持って取り組める仕事を作りたいという思いから始まりました。

地域の人と共につくる、
誇りを持って働く喜び

一着につき一人の編み手さんが作る、特別なニット。お客さんからは「気仙沼に親戚ができたみたい」と言われることも。

気仙沼の編み物の会社として、地元の方の力を借りながら、世界中のお客さんの元へニットを届けている。この会社で働く菅原三知代さんは、地域の方と編み手さんの協力で成り立っている会社だと話す。

「最初は4名だった編み手さんが、現在は70名にまで増えました。もともと漁師町ということもあり、編み物をされていた方がとても多かったんです」
 

週に一度行われる「編み会」には、地元の編み手さんが集まり検品、納品作業が行われる。

編み物の会社を作るにあたり、編み手さんと出会うことがなにより重要だった。そこで、“編み物ワークショップ” を開催し、みんなで編み物をしませんか? と呼びかけた。

「ワークショップは、震災後、生活にまだ緊張感がある中で、少しでも楽しみながら編み物をしていただけたらという思いで開催しました。その中で、上手な人に会えたらいいなと思っていたんです」
 

ニッティングマスターは現在12名。編み手の中でもひときわ高い技術力を持つこの12名が、ファーストモデルの「MM01」を編んでいる。

その後、編み物の会社を作るので編み手さんになりませんか? と声をかけていったという。現在先生として活躍する田村純子さんも、このワークショップから参加した一人。

「編み手さんが一着の『MM01』(アラン調のカーディガン)を編むのにかかるのはだいたい1、2ヵ月。週に一度の編み会で、純子先生と私たちの検品があり、厳しいチェックを受けます。基本的な長さなどはもちろん、糸の取りこぼしなど、細かいところまでしっかり見て、少しでも不備があったものは糸をほどき、編み直してもらいます。厳しいですが、クオリティの高いニットのお店であるという誇りを全員が持っているんです」
 

長さや糸の取りこぼしなど、細かいチェックを合格した商品は、タグをつけ、編み手さんの手紙を添えて送られる。

気仙沼ニッティングの商品は、手編みのニットとはいえ、その料金設定は一張羅と言えるほどの金額だ。

「これまでたくさん支援や援助をいただいてきた中で、これからは自分たちの力でも何かができるという思いで仕事をすること。気仙沼の稼げる会社になること。100年続く会社になること。仕事として編み手さんにきちんとしたお給料を払うためにも、いいものを作らないといけません。ここで、先生の指導をしっかり受けていただき、プロの職人として商品を編んでいただいています」
 

実際に編み会で話を聞いてみると、皆さん昔から編み物が大好きだったと口を揃える。ある女性は、長年気仙沼で美容師をしていたが、震災で店も道具もすべて流されてしまったと話してくれた。何か手を動かしたいと思っていたところ、この会社のことを知り参加したという。
 

自分にぴったりの一着という意味を込めたセーター「Me」。

他にも子育てしながら、介護をしながら家でできる仕事を、ということで参加している人がたくさんいた。仕事をする人も、買う人も幸せになれる会社であり続けるために、気仙沼ニッティングは地域の方と協力しながら、ともに前進している。
 

気仙沼ニッティング
本店〈メモリーズ〉
宮城県気仙沼市柏崎1-12
☎0226-25-7326
営業日:土
営業時間:11:00〜18:00
 
〈気仙沼ニッティング東京〉
東京都渋谷区千駄ヶ谷3-41-8
営業日:金・土・日
営業時間:12:00〜19:00
https://www.knitting.co.jp/

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Photo:Koichi Tanoue Text:Saki Miyahara Edit:Emi Fukushima

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