笠間の森に息づく、自由闊達な陶の世界vol.3/香菜子が旅する茨城

陶芸で知られる、茨城県笠間市。江戸時代中期から続く、歴史ある陶の地にして、伝統や製法にとらわれることなく、外からも作家を招き入れ、柔軟に発展してきました。

豊かな自然の中で生まれる自由闊達な作陶は、森で土と戯れ生きる原始の楽しさを、私たちに伝えるようでもあります。今、概念に縛られない、新しい陶の世界へ。

 
▼最初から読む!

陶芸の枠にとらわれない、
自由な創作の現場を訪ねる。

笠間芸術の森公園から、いよいよ、伊藤公象さんのアトリエへ向かう。くねくねとした山道を車を走らせたどり着いた先は、唐桶山の山裾。ここは、伊藤さんのほか、奥様の知香さん、息子さんで陶を使った表現や絵画で知られる伊藤遠平さん、そして遠平さんの妻で香菜子さんの同級生の高見沢美穂さんと、陶芸一家4人の制作拠点。

香菜子さんが訪れるのは、学生時代に陶板制作の手伝いで1週間ほど泊まり込んで以来、実に22年ぶりという。
 

訪れたアトリエに「わー、懐かしい! 当時と変わらないですね」と、感慨にふける香菜子さんを、笑顔で迎え入れてくれた恩師・伊藤さんと奥様。

「香菜子さん、あの頃よりスリムになった!?」「当時、先生によくお酒を飲まされた記憶がありますよ(笑)」なんて、長い時の空白を埋めるように会話を懐かしむうちに、話題は自然と陶芸のことへ。
 

 

香菜子さんの恩師、伊藤公象さんと奥様で陶芸家の知香さん。「せっかくだから、土に触ってみる?」と、提案してくれた。

「陶芸というと、まだやはり、焼き物のイメージが強いと思います。陶芸は絵画や彫刻のような表現ではなく、未だ、工芸というカテゴリーなんです。僕はそんな垣根を取っ払いたくて、香菜子さんもいた大学の指導に参加して、学生にも陶芸が持つ殻を破って自由に表現しようと伝えてきました」(伊藤公象さん)
 

 

アトリエの棚には、伊藤さんの作品も一緒に飾られている。

「我々もそうですが、笠間は地元の人よりも、外から移住して作陶している人が多い場所です。益子は民藝運動のおかげで有名になって国際的に広がったけれど、笠間焼はそういった運動と無縁で知名度も低く、売れなかった。その対策として、全国から陶芸をやる若い人を外から集めたんです。だから、伊万里焼や九谷焼というようなものとも違い、笠間焼という定義も失われて、いろんな焼き物を勉強した人の寄せ集めになった。でも、だからこそ、ここには若い陶芸家が自由に創作できる面白さがありますね」(伊藤公象さん)
 

笠間のアトリエで「今は陶芸から離れてしまって……」と言いつつも、久しぶりに土に触れた香菜子さんに、「どの世界であろうと、とにかく教え子たちがセンスの良い仕事を選んで、その道を進んでいるのが嬉しくて」と伊藤さんが加える。
 

「学生の頃は、花を逆さに生けるコンセプチュアルな花器を作ったり、とにかく尖っているのがカッコいいと思っていました。けれど、今ならもっと力の抜けた自分らしい作品ができるような気がします。一時期、陶芸を再開しようと思って買った小さな電気窯が実家に置いてあるので、それを持ってきて、東京の小さなマンションで、また作り始めたいですね」(香菜子さん)

つづく……
次回更新は、2月9日(土)です! お楽しみに!!

伊藤アトリエ
茨城県笠間市本戸6097-1
☎0296-74-4035

PROFILE

香菜子 Kanako
1975年、栃木県足利市生まれ。女子美術大学工芸科陶芸専攻卒業。在学中からモデルを始め、ライフスタイル誌やCMなどで活躍。執筆、イラスト、プロダクトの制作も手がける。著書にコーディネートブック『普段着BOOK』など。

 
●情報は、2018年11月現在のものです。
Photo:Norio Kidera Text:Asuka Ochi

▼こちらの記事もチェック!