田中あずささん&園健さんセレクトの “眺めのいい本”【旅好きが選ぶ名著vol.8】

旅好きセレクターによる、旅へと誘う本をご紹介! 今回は、アンドシノワーズ主宰の田中あずささん&園健さんに選書してもらいました。

かつては確かにあったけれど、
今は消えゆく世界への旅

悲しき南回帰線(上)(下)
レヴィ=ストロース 著 
室淳介 訳/講談社(1985年)
カドゥヴェオ族など4つの部族調査を行ってまとめた作品。世界の文化人類学界に一大転機をもたらした不朽の名著である。(園選)

今年の夏、食文化の調査旅行のためにインドシナ半島をゆっくりと縦断した。ラオス領内のメコン河をカヌーで下り、カンボジアのトンレサップ湖までメコン河沿いを移動するのは、田舎のご飯とおかずを食べるのが目的だ。山岳部では、乗り物はオートバイになる。

田舎では、今でも煮炊きに薪をつかう家庭が多く、台所のしつらえや食事の作法も、僕たちがイメージしていた昔のアジアが色濃く残っている。こうした20世紀の名残が色濃い暮らしに接するときの心の道しるべが、レヴィ=ストロースの文化人類学の作法や、ベトナム戦争が激化する前のインドシナが美しくまとめられた本である。(園)
 

料理名作選(スペイン)
カンディド・ロペス 著
丹羽千賀子、渡辺和雄 訳/柴田書店(1977年)
スペインの伝統料理から、地方ごとの田舎料理までを紹介するレシピ本。食卓の写真を使い、現地の食事風景を垣間見られる。(田中選)

今からおよそ40年前、私の実家に本の行商さんがみえた。目黒区の小さなレストランをたたみ、田舎で開いたやはりささやかな洋食屋に、世界の「料理名作選」を売りに。それは、スペインやイタリア、フランスを主としたヨーロッパ各地と中国大陸を中心に、1930年代くらいまでが舞台と思われる古典料理が編纂されたもので、日本を出たことのない両親に、料理を通じて異国を教えてくれた。子どもの私はそれらを押し入れから出しては眺め、今日はこれとこれ、といった具合でフルコースを組み立てて遊ぶのが好きだった。

大人になり、初めて外国を訪れた時のドキドキも懐かしいが、当時、その名作選が連れて行ってくれた旅はまた妄想的で、自分勝手で、ロマンチックだったように思う。(田中)
 

東南アジアの旅
石井 出雄 著/保育社(1966年)
東南アジアの旅をエッセイ風の文章でまとめた一冊。昔懐かしい東南アジアの姿はアンドシノワーズの原点となった本。(田中・園選)

PROFILE

アンドシノワーズ(Indochinoise)
旧仏領インドシナの食文化を紹介する料理教室を開催。園は写真家、冒険家、田中はコピーライター、フードスタイリストとしても活動。

 
●情報は、2018年12月現在のものです。
Photo:Toru Oshima

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