柚希礼音「20周年の幕開けは、自分の理解の範疇を超えた舞台への挑戦でした(笑)」

“アングラ演劇” などという言葉を耳にしたところで、それがどんなものか、イメージできる人はもう少ないかもしれない。今から50年以上前。1960年代中期から、1970年代にかけて生まれた、見世物小屋的要素の取り込まれた舞台表現。

当時、“アングラ演劇の旗手” と呼ばれた唐十郎さんが、34歳の時に書いた戯曲が、『唐版 風の又三郎』である。1974年には、唐さんの率いる劇団状況劇場が初演し、現代劇の公演をテントで行うという新たな発想で、60年代から演劇界にニューウェーブを起こした。宮沢賢治の童話『風の又三郎』をモチーフにしながら、ファンタジックでスペクタクルな世界が展開していくこの舞台は、当時、圧倒的な熱狂の元に迎えられたという。

昭和の紅テントから、平成のシアターコクーンへ。アンダーグラウンドではない場所で上演される2019年度版の『唐版 風の又三郎』で、柚希さんは、窪田正孝さん演じる青年「織部」を、自分の恋人を探し出すために利用しようとする、ホステスの「エリカ」を演じる。

カラッとしているように
見られがちだけれど、
私の奥底にも、
情念はあるかもしれない

――45年前に生まれた、いわゆる “アングラ演劇” と、宝塚出身の柚希さんの組み合わせは、とても新鮮です。今回は、どういった経緯で出演することになったんでしょうか?

柚希:私、今年が芸歴20周年なんです。宝塚で初舞台を踏んで20年、様々な役柄を演じてきましたが、芸歴20周年を迎える年には、ぜひ、新たに挑戦できる作品に出演したいと思っていました。

お話をいただいたのは、ちょうど、自分にとってのメモリアルになる作品は何だろうかと、いろいろ探していた時期でした。ただ正直、出演を決めるまでには、葛藤もありました。台本を読んでも、「これはどうやって演じるんだろう?」「この世界観をどうやって表現するんだろう?」といくつも頭の中に “?” が浮かんでしまって(苦笑)。とにかく私の理解の範疇を超えていたんです。

でも、だからこそ、未知なる領域に足を踏み入れることができるかもしれない。見たこともない景色に出会えるかもしれないと思って、“やってみよう” と決意しました。今は、これまで共演したことのないような方々に囲まれて、右も左も分からない、手も足も出ないような状態ですが、いろんな方に助けていただきながら、お稽古をしています。

 
――あらすじを読んだだけでも、自然と超自然、生と死、過去と未来……、世の中にある様々な概念を超越したような、不思議な印象を受けます。柚希さんは最初、『唐版 風の又三郎』の内容については、どんな説明を受けたんですか?

柚希:顔合わせの時、演出の金守珍さんからは、「ファンタジックホラーです」と説明されました。お稽古をしながら、アングラ演劇に関するレクチャーも受けているんですが、戦後の反体制主義、反商業主義などが根底にあって生まれた演劇だと伺って、当時の演劇のエネルギーは相当のものだったんだな、と。

『唐版 風の又三郎』には、ギリシャ神話や、シェイクスピアの『リア王』のモチーフなども盛り込まれているけれど、その一方で、当時の流行歌もそのまま流れたりして。混沌としたイメージなんですが、その全てが、私にとっては新鮮です(笑)。あとは、すごく日本的な情緒を感じますね。情念というか。 

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――柚希さん演じるエリカも、情念の人ですか?

柚希:そうですね。まさに情念の人です。自分でもコントロールできない、激しい狂気のようなものを持っている一方で、すごく計算高く、ずる賢く、男性を利用しようとする。

窪田くん演じる織部の耳が切られれば、「わーすごい!」と無邪気に面白がるけれど、そこから死の世界に入りたいと思うようになる。発想が飛躍しているんです。実際にいたら、とても手に負えない人でしょうけど(笑)。目的のためには手段を選ばないところが、ある意味人間臭くて、強烈で、面白いなと思います。

 
――でも、柚希さんご自身は、カラッとされてますよね?

柚希:いや、もしかしたら奥底には情念もあるかもしれない(笑)。今回はそこを使いたいと思っています。金さんからは、最初は、きちんと女性的な表現を作って、その後に、私が宝塚の男役で学んだカッコよさのような表現を足していってほしい、と言われています(笑)。

2015年に宝塚を退団して以来、ずっと女性らしい役を演じてきましたが、今回に限っては、宝塚で学んだことを大いに生かして欲しいということでした。まだ探っている最中ですが。この、振り切れた世界に、とことんまで没入できたらと思っています。

 
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PROFILE

柚希礼音 Reon Yuzuki
6月11日生まれ。大阪府出身。1999年宝塚歌劇団に入団。2009年星組トップスターに。主な主演舞台に『ロミオとジュリエット』『オーシャンズ11』『眠らない男・ナポレオン−愛と栄光の涯に−』など。第30回松尾芸能新人賞、第65回文化庁芸術祭賞演劇部門新人賞、第37回菊田一夫演劇賞など、受賞歴多数。また、2014年には、日本武道館での単独コンサートも実現。2015年宝塚歌劇団を退団後は、ミュージカルを中心に活躍。5月には、one-man show Musical『LEMONADE』、9月には『FACTORY GIRLS~私が描く物語~』の上演も控える。

INFOMATION

舞台
Bunkamura30周年記念 シアターコクーン・オンレパートリー2019『唐版 風の又三郎』

 

アングラ演劇界の雄・唐十郎の戯曲。宮沢賢治の童話『風の又三郎』をモチーフに、シェイクスピアの『ヴェニスの商人』や、自衛隊員による待機乗り逃げ事件などを織り交ぜた、ロマン溢れる神話的恋愛劇。

作:唐十郎
演出:金守珍(『ビニールの城』他)
出演:窪田正孝、柚希礼音、北村有起哉、丸山智己、江口のりこ、石井恒一、山崎銀之条丞、金守珍、六平直政、風間杜夫ほか
主催/企画・製作:Bunkamura
公演スケジュール:
東京公演 2月8日〜3月3日 Bunkamuraシアターコクーン
大阪公演 3月8日〜3月13日 森ノ宮ピロティホール
☎03-3477-3244(Bunkamura)
https://www.bunkamura.co.jp/cocoon/lineup/19_kazemata/

 
Photo:Aya Kishimoto Hair&Make-up:CHIHARU Styling:YOSHI MIYAMASU(SIGNO)Interview&Text:Yoko Kikuchi

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