正しい情報は邪魔? 8年経っても「福島の風評払拭」が難しい背景

「危険と不安」に偏る報道は消えない
林 智裕 プロフィール

「放射線が気になる」人は、まだ多い

実際に、原発事故後の福島における放射性物質のリスクについて、どのような誤解が広がっているのでしょうか。

たとえば、2017年に三菱総合研究所が行った東京都での調査(http://www.mri.co.jp/opinion/column/trend/trend_20171114.html)を参照してみると、

(1)「全体的に震災の情報に接する機会や関心が低下している→情報のアップデートがすすみにくい」状態、風化が進んでいる。

(2)福島の食品を食べることや福島への旅行に対しては、35%前後の回答者が、別の地域で生産された食品や、他地域の旅行先に比べて何らかのネガティブな印象を抱いている。

(3)多くの人が「福島では、被曝による何らかの健康被害が今後発生する可能性が残っている」と考え続けている。また、その確率を「低くない」あるいは「高い」と考えている割合は、回答者の半数前後にも及ぶ。

という3つの事実が判ります。

 

具体的にみてみましょう。まず「震災に対する意識や関心が薄れていると思う」と回答した人は、59%と過半数を超えています(下図右のグラフ)。この調査が実施されたのは2017年夏ですので、1年半が経過した現在は、なおさら関心が低下していると考えてよいでしょう。

三菱総研調査資料より
三菱総研調査資料より

続いて、福島県産の食品について。これはケースによりばらつきがあるものの、自分が食べる場合には「福島県産かどうかは気にしない」と答えた人が過半数を超える58.6%でした。一方で「放射線が気になるのでためらう」として忌避する人の割合は、最大で約35%(自分以外の家族や子供、外国人観光客が食べる場合)。自分が食べる場合でも26.3%にのぼっています。

三菱総研調査資料より

福島県への旅行についての意識では、12.8~15.8%の方が「積極的に旅行する、あるいは勧める」という意欲がある一方で、「放射線が気になるのでためらう」と考える方の割合は28.0%~36.9%となっており、特に家族や子供が訪問することに対する抵抗が強いとの結果が得られました。

三菱総研調査資料より

これらの設問でネガティブな回答をした方の多くは、総合するとおそらく、「福島にはまだ、放射線被曝による健康リスクが残っている」と考えているといえるでしょう。そのうえで、

・「長期的に福島との関わりを持った場合に、放射線による健康へのリスクが高まる(≒福島では放射線の影響とリスクが多少は残っている)」

・「福島産食品の摂取や短期間の滞在など、福島との限定的な関わりであっても、放射線による健康へのリスクが高まる(≒福島では放射線の影響とリスクが非常に強く残っている)」

など、想定しているリスクの大きさにグラデーションがあると考えられます。

関連記事