20代で渡仏し、20年住んだのちに家族で帰国、現在は日本在住のエッセイスト、吉村葉子さん。吉村さんのエッセイは多くベストセラーとなっているが、中でも2007年に刊行した『お金がなくても平気フランス人、お金があっても不安な日本人』は、文庫だけで37万部を超えている。普遍的な「フランス人」の価値観は私たちの生活へのヒントが満載だ。そこで数回にわたり、講談社文庫『お金がなくても平気なフランス人、お金があっても不安な日本人』から特別抜粋掲載のエッセイをオンラインで初めてご紹介していこう。

買えないモノは欲しがらない

女こそ、諦めが肝心だ。遊びにいきたいのにいけないとか、欲しいモノがあるのに買えない、お金が欲しいのに入ってこないなんて思わないことにしよう。マロニエの木々のあいまに、キラキラ水しぶきをたてて流れるセーヌ川の河岸に寝そべるパリジェンヌやパリジャンを見ていると、だれ一人として欲求不満な顔をしていない。C’est la vie(セ・ラ・ヴイ)それが人生なんだと諦める。諦めというと、志なかばで挫折するようなニュアンスにとれるが、そうではない。むしろ納得するといったほうがいいかもしれない。

セーヌ川のほとりで身を寄せ合うカップル。お金がなくても「それが人生さ」! Photo by iStock

遊びにいけないと思わないで、遊びにいかないと思えばいい。買えないと思わないで、手にとったモノをもう一度ながめて、やっぱり買わないことにする。気に入ったけれども買わないのは、プライス・カードにある値段が不本意なほど高いから。お金がなかったらないで、ないのだから仕方がないと諦める。ないからとだれかにいったところで、その人が無条件にお金をくれるわけはない。なければないでフランス人のようにC’est la vie(セ・ラ・ヴイ)それが人生さと思う。そのうちにいつの間にか、私たちの身辺から物質的な欠乏感から生まれるストレスは霧散していく

今、こうしている間も、パリにいるなん人もの女友達の顔を思い出している。こんなとき、彼女たちだったらなんというだろうかと。

ダニエルにしてもマリオンにしても、ジュリーも、付き合いは長いけれども、私は彼女たちの愚痴を一度として聞いた覚えがない。女の愚痴といえばお姑さんのこと、子供の学校の成績がよくないこと、夫の収入が少ないことなど、定番はいくつかある。ところが、わがままでむら気、確かに協調性にとぼしいのは認めるけれども、フランス女性は文句はいっても愚痴はいわない