暴力団離脱者はいま、就職先でこんな「イジメ」に遭っている

暴力団構成員は毎年減少しているが…
廣末 登 プロフィール

「北風と太陽の施策」の両輪が必要

平成28年12月、「再犯の防止等の推進に関する法律」が公布・施行された。翌29年12月には再犯防止推進計画が閣議決定された。

それは「刑法犯により検挙された再犯者については、平成18年をピークとして、その後は漸減状態にあるものの、それを上回るペースで初犯者の人員も減少し続けているため、検挙人員に占める再犯者の人員の比率(再犯者率)は一貫して上昇し続け、平成28年には現在と同様の統計を取り始めた昭和47年以降最も高い48.7パーセントとなった」からであるとしている(法務省HPより)。

そうであるなら、元暴の社会復帰政策も当然ながら視野に入れなければならない。

しかし、その最大の障碍となるのが、前回の記事で紹介した「元暴5年条項」であり、暴力団を離脱しても、5年間は暴力団員等とみなされ、銀行口座の開設や不動産の賃貸などの諸契約が結べず社会権が制約されるというものである。

筆者は、この点につき、2015年以降、学会や行政、マスコミにおいて「排除政策と包摂政策は一体であり、北風と太陽の施策の両輪が必要である。とりわけ、社会権を著しく制約する『元暴5年条項』に関しては、一定の条件を満たした者、すなわち、継続的に就労して、更生の意思が固いと客観的に認められる者に対しては、早期に解除するなどの緩和措置が、彼らをアウトロー化させないためにも不可欠である」と主張してきた。

〔PHOTO〕iStock

昨今、こうした主張に共感して行動する団体が現れたことは、嬉しい限りである。

たとえば、東京三弁護士会では、離脱した元組員の社会復帰を支援すべく、2018年4月から、元組員を受け入れる「協賛企業」で一定期間働いていることを条件に、暴力追放運動推進センターに証明書を発行してもらい、弁護士が金融機関に口座開設を働き掛ける仕組みを作った。

このプロジェクトチームの座長を務める齋藤理英弁護士(東京弁護士会)は、「まじめに働いている元組員については“お墨付き”を与える仕組み作りが必要だ」と話している。

ちなみに、齋藤弁護士やチームの方々は、福岡まで足を伸ばし、『ヤクザの幹部やめて、うどん店はじめました』の主人公から、元暴の直面する「生きづらさ」について熱心に耳を傾けてくれた。

さらに、東京三弁護士会とマスコミ懇談会会場に『ヤクザと介護』の主人公を招いて、生の声を会場の皆さんに聴いてもらう機会を設けて頂いた。この談話内容は、稿を改めてご紹介したい。

 

2010年に暴排条例を最初に作った福岡県は、2016年、14都府県との間で広域連携協定を締結し(2018年9月時点で29都府県に拡大)、離脱者を雇用した企業に助成金を支払うなど、社会復帰を支援する施策を開始した。

さらに、2018年4月から、暴力団離脱を希望する組員に避難先の宿泊費や、県外での就職面接を受ける際の交通費などを支給する制度が新設された。

福岡県は、2017年度に全国で暴力団を離脱した者37名のうち、17名を就労につなげている。福岡県暴力追放運動推進センターでは、まじめに働いている組員については、金融機関に口座開設を働きかける仕組みを作っているという。

このように、近年、官民それぞれが、暴力団離脱者の社会復帰に向け、目に見える具体的な一歩を踏み出したことは、社会的包摂のための大きな進歩と評価できる。これらを、より実効的なものとするためには、一般社会の意識改革をも、同時並行的に行う必要がある。

社会的包摂の主体は、行政に加え、企業や地域社会に生きる我々である。暴力団離脱者に限らず、更生したいという者を受け入れる健全な社会無くして、真の安心・安全な社会の実現、「健全な社会」の確立は難しいと考える。社会が人間を、如何なる形であれ「排除」することは、健全とはいえないからである。

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